私たち人間の身体の中でとても重要な働きをしている心臓。一言で「心臓病」といっても、多くの病気があり、なかには命に関わる重篤なものもあります。

そのような心臓病について、代表的なものをご紹介します。

目次

心臓の働き

心臓の構造-図解

心臓は全身に酸素を多く含んだ血液を送り出すポンプ機能があります。心臓は筋肉(心筋)でできており、心臓自体も冠動脈によって栄養を運ばれています。

心臓は、左右それぞれの心房・心室に分かれています。心房と心室の間や心室に繋がる血管の間にはがあり、一方向に血液が流れる仕組みになっています。

また心臓から全身に血液が送り出されるときの拍動を心拍といい、動脈が体表に近い場所にある、手首や頸部、そけい部などで触知するものを脈拍といいます。

心臓の病気の種類

1.心筋や冠動脈に起こる病気

心臓に栄養を供給する冠動脈が動脈硬化などの原因により狭くなり、血流が阻害される病気を虚血性心疾患といいます。

虚血性心疾患

狭心症

狭心症は冠動脈が動脈硬化によって固くなり、血流が一時的に阻害された状態です。強い胸の痛みや圧迫感などの症状を起こします。運動など激しく身体を動かしたときに症状がみられる労作性狭心症と、運動に関係なく、安静時に症状が起こる安静時狭心症があります。

心筋梗塞

心筋梗塞は、冠動脈の血流が長時間にわたって阻害され、血栓(血の塊)が詰まることで血液が流れなくなり、栄養を得られなくなった心臓が壊死してしまう病気です。

壊死の範囲が広くなると、生命維持に必要な血液循環を保つことができず、死に至ることもあります。

虚血性心疾患心電図、心臓エコー、冠動脈CTのほか、心臓カテーテル検査によって診断し、カテーテルを用いた治療が多く行われています。

心筋症

肥大型心筋症拡張型心筋症

心筋症は、何らかの原因で心筋が分厚くなって正常な拡張能が低下する肥大型心筋症と、心臓の内腔(ないくう)が拡張し、心筋が薄くなってポンプ機能が低下する拡張型心筋症に大別されます。一部の原因として遺伝子の異常が関与しているとされていましたが、近年これに加え免疫の異常感染症環境などの関与も明らかになってきました。

心臓からの血流が慢性的に不足し、それを補うために心臓が過剰に働かなければならず、心不全の状態となり、息切れや呼吸困難、全身倦怠感、尿量の減少むくみなどの症状が起こります。

薬剤による心不全の治療がメインとなりますが、拡張型心筋症の重症例では心臓移植が行われる場合もあります。

心筋炎

ウイルスや細菌などによって心筋が炎症を起こし、心臓の機能が低下する病気が心筋炎です。

風邪のウイルスが原因となることもあり、健康な人が急激な悪化から突然死に至るケースもあります。

原因となる感染症の治療と並行して、心不全の治療が行われます。

2.心臓の弁膜に起こる病気

子供の後ろ姿-写真

心臓弁膜症

心臓には4つの弁があり、血液を送り出すときに開き、送り出し終わると閉じます。血液が逆流しないように、一方弁の構造になっています。心臓の弁膜に起こる病気には、弁の開きが悪くなる狭窄症と、きちんと閉じなくなる閉鎖不全症があり、この状態になると、血液の逆流や停滞が起こります。また、この2つの病気はしばしば同時に生じることがあります。

おもに、左心室と大動脈の間にある大動脈弁と、左心房と左心室の間にある僧帽弁が障害されやすく、心不全の原因となります。

薬剤による心不全の治療の他、弁の一部を修復する弁形成術や、人工弁に取り換える弁置換術などの外科的治療、カテーテルによる治療が行われます。

3.心臓の拍動の異常

不整脈

心臓は刺激伝導系という経路により、電気的な興奮を伝達することで心臓を拍動させています。

この刺激伝導系の働きの異常が不整脈ですが、不整脈はあらゆる心臓の病気の症状としてみられるほか、刺激伝導系そのものの異常や身体のミネラルバランスの異常によっても起こります。

治療の必要のないものから、致死性不整脈まで種類も様々ですが、一般的には薬剤による治療が行われ、必要に応じてカテーテルによるアブレーション治療(足の付根などから太い血管にカテーテルを入れ、心臓内の原因部位を焼き切る治療)や恒久的ペースメーカーの植え込み手術が行われます。

4.先天性心疾患

生まれつきの心臓の病気である先天性心疾患には、治療の必要のないものから手術が必要なもの、難治性のものまで様々な種類の病気があります。

心室中隔欠損症

先天性心疾患の中で最も頻度が高いのは心室中隔欠損症です。

心室は左右が心室中隔という壁で区切られていますが、心室中隔欠損症はこの壁に先天的に穴が開いており、血流の異常を来す病気です。小さな穴の場合は成長とともに自然に閉鎖しますが、大きな穴の場合は、血流が逆流しないよう穴を塞ぐ手術が行われます。

まとめ

心臓には様々な病気がありますが、自然には治癒しないものも多く、適切な診断と治療を必要とします。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

また心臓の病気には動脈硬化やストレスが強く関与しており、発症や悪化を防止するために日常生活においても注意すべきことが沢山あります。