2014年3月、西アフリカ(ギニア)での集団感染から始まり、2015年12月末の終息宣言まで猛威を振るったエボラ出血熱(エボラウイルス病)。感染は西アフリカに留まらずヨーロッパ(スペイン、イギリス、イタリア)やアメリカまで計10カ国まで及び、死者は11291名(2015年9月13日時点)報告されました。

特にアメリカは今回初めてエボラ症例が確認され(計4名)、そのうち1名が死亡しています(厚生労働省より)。日本では症例は確認されませんでしたが、流行国から帰国した人に疑いがかかるとテレビなどで大きく取り上げられていました。

これまで20回以上流行してきたエボラ出血熱を人類はコントロールしていけるのか―。歴史や治療薬の現状を踏まえ、その可能性について紹介していきます。

目次

 エボラ出血熱とは

エボラ出血熱はエボラウイルスによる感染症です。感染・発症したサルやオオコウモリなどの動物や人間に触れ、体液・血液に含まれるウイルスが触れた人の傷口や粘膜を通して体内に侵入してうつっていきます。また直接でなくても、ウイルスに汚染された環境にいると感染してしまいます。1976年にアフリカ大陸のコンゴ、スーダンで集団感染して以来数年ごとに流行してきました。

 エボラウイルスはなぜ流行するのか

空気感染しないエボラウイルスがどうして大流行するのか。アフリカ大陸では地域によって葬式のとき遺体に触れる風習があり、これが感染拡大に大きく影響したと指摘されています。

また感染者が出た場合に、医療現場が整備されていないため適切な感染拡大への対処や予防ができないことも大きく関係します。実際に今回の流行中にアフリカ大陸以外で感染した7名のうち3名は現地で活動していた医師などの医療従事者でした。

致死率は20~90%まで達しますが、その原因は根本的な治療法が確立されていないからです。エボラ出血熱に対して今のところ治療薬はなく、対症療法に限られています。ウイルスに負けないよう患者の体力を保つために輸液を行い、ほかの感染症にかからないよう抗菌薬を服用するぐらいしかありません。一旦抗体が付けば回復していきますが、その抗体もいつまで持つか分かっていません。

 エボラ出血熱をコントロールするために

感染拡大を防ぐ対策

世界的な流行を防ぐには、現地では医療環境の整備エボラ出血熱への啓発活動が欠かせません。また流行した国は極力訪れないことも重要です。患者に触れない・近づかない、どうしても触れるときは手袋を必ず使う、石鹸などでの手洗いを徹底させます。

そのほか感染者を入国させないよう空港でしっかり検査する水際対策や、流行国を訪れた人の追跡調査も必要となっていきます。

感染させないためのワクチン

現在エボラウイルスの増殖を押さえるために数多くのワクチンが開発されてきました。日本の企業が開発したファビピラビル(商品名:アビガン)はもともと抗インフルエンザ薬でしたが、エボラウイルスにも有効性が期待できると考えられています。ほかのワクチンも副作用や有効性というハードルを乗り越え、流行させないための研究が進んでいます。

まとめ

エボラ出血熱は致死率の高い感染症で、治療薬もなくコントロールすることは簡単ではありません。それでも効果的で副作用の少ないワクチンの開発や医療環境の整備ができれば、爆発的な流行を阻止し、死者を少しでも少なくすることは可能です。

また自身が感染しないことも重要ですので、海外に渡航する際はしっかりと情報収集を行い、自分でできる予防はしっかりと行ってください。