むずむず脚症候群という病気をご存知ですか?
別名レストレスレッグス症候群と呼ばれるこの病気は、脚に不快感を覚えてじっとしていられない病気です。あまり知られていない病名ですが、日本人における有病率は2~4%と、稀な病気ではありません。
脚の深部からの不快感は眠る時など、安静にしているとひどくなる傾向にあるため、充分に眠れなくなってしまう方もいらっしゃいます。
この記事では、むずむず脚症候群について、症状や原因などを解説します。
むずむず脚症候群の症状
むずむず脚症候群は、レストレスレッグス症候群または下肢静止不能症候群とも呼ばれています。
脚の、特にふくらはぎ付近に虫が這っているような感覚やチクチクとした痛み、ほてりやかゆみなどの不快な症状があり、必ずしもむずむずとした感覚だけではありません。
また、進行すると症状は脚だけにとどまらず、腕、腹、肩、顔、胸など、全身にも広がっていくことがあります。
これらの不快感は、歩きまわるなど患部を動かすと良くなり、じっとしているとまた症状が出るという特徴があります。映画館、飛行機などの長い間座っていなくてはいけない状態の時や、入眠前の安静にしている時に症状が強くなるため、睡眠がたびたび中断され、不眠が大きな問題となる病気です。
診断には睡眠外来や、睡眠障害を取り扱う神経内科、精神科で診てもらう必要があり、以下のような診断基準があります。
- 脚を動かしたいという強い欲求が存在し、また通常その欲求が下肢の異常感覚に伴って生じる
- 静かに横になったり座ったりしている状態で出現、悪化する
- 歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する
- 日中より夕方・夜間に増強する
(日本神経治療学会 標準的神経治療 Restless legs症候群より)
むずむず脚症候群の原因
むずむず脚症候群の原因は、まだはっきりとは分かっていません。
ただ、脚ではなくて神経の病気とされており、以下のようなものが原因となっていると考えられています。
- 神経の障害
- 鉄不足・鉄代謝の異常
- 遺伝的なもの
- ほかの病気
- 常用している薬
神経の障害
ドパミン(ドーパミン)という神経伝達物質の一種が関係していると考えられています。
ドパミンは運動や感覚の調節、感情や意欲に関与しており、脳内のドパミン神経機能が障害されることでドパミンが減少すると、意欲や関心が薄らいだり、運動機能の低下が起こったりします。
鉄不足・鉄代謝の異常
上記のドパミンを作るには、鉄が必要とされています。
遺伝的なもの
同じ家系でむずむず脚症候群の方が複数みられることが多く、遺伝も関係あるのではないかと言われています。
現在、遺伝子の研究も進んでいる状況です。
ほかの病気や薬
ほかの病気が原因となって、二次的にむずむず脚症候群になることがあります。鉄欠乏性貧血、慢性腎不全(とくに透析中)、パーキンソン病のほか、関節リウマチ、線維筋痛症などのリウマチ性疾患などが挙げられます。
女性の場合には、月経過多や妊娠による鉄分不足が原因となることもあります。
常用している薬
ドパミン拮抗薬、抗精神病薬、抗うつ薬(SSRI)、抗ヒスタミン薬などの神経伝達をコントロールする薬が誘因となって、むずむず脚症候群を引き起こすことがあります。
どんな人がむずむず脚症候群になりやすい?

むずむず脚症候群は、国内の調査によると人口の約2~4%に存在すると推定されています。欧米に比べると少ないのですが、それでも多くの患者さんがいらっしゃることになります。
小児から高齢者までどの年代にも発症しますが、患者さんは年齢が上がると共に増加しているという統計もあります。高齢者は、むずむず脚症候群を併発する病気になる確率が高いことが理由ではないかと言われています。
また、女性の方が男性よりも1.5倍ほど多く発症することが知られています。
まとめ
むずむず脚症候群は、脚の不快感とともに、脚を動かしたいという強い欲求が生じる病気です。夕方から夜間に症状が強くなる傾向にあり、不眠を引き起こすという問題があります。
病気の原因ははっきりしていませんが、ドパミン神経機能障害や鉄欠乏、遺伝が関与していると考えられています。また、多くの病気の合併症として二次的に発症することも多く、むずむず脚症候群と診断されていない潜在的な患者さんが多くいると推測されています。
むずむず脚症候群の治療法・予防法については「むずむず脚症候群を疑ったら。検査・治療と自分でできる対策4つ」をごらんください。