頭痛を感じたら市販の薬で済ませてしまうことも多いかもしれませんが、病院で行う片頭痛の基本的な治療方法も薬物療法です。病院でもらう薬と、市販薬はどう違うのでしょうか?
市販の鎮痛剤は効果がない?

市販の鎮痛剤を飲んでいれば片頭痛は治るでしょうか?
残念ながら、市販の鎮痛剤では、片頭痛を「治療」する効果はありません。市販の鎮痛薬はすでに起きてしまった痛みを抑える作用を示すので、原因を取り除いたことにはならないのです。頭痛発作のごく早期、軽い痛みを感じたとき、予兆期や前兆期に服用すると効果が得られることもありますが、拡張した血管を収縮することは出来ないため、実は根本的な治療とはいえません。
また、痛みを緩和させるための薬の成分によっても違いがでてきます。例えば、ロキソプロフェンで痛みが治まったとしてもイブプロフェンは効かなかったなど、効き方には個人差があります。
市販薬では効果を感じられない方、今までは市販薬で効いていたけれど最近効かなくなってきたと感じる方は、早めに病院で受診した方がよいでしょう。
病院で処方される薬はどんなものが?
それでは、病院で処方される薬にはどのような効果があるのでしょうか。病院でよく処方される薬剤は「トリプタン系薬剤」と「エルゴタミン製剤」の2種類です。これらの薬について、説明していきます。
トリプタン系薬剤
病院では血管の拡張を抑える薬を処方してもらえます。中でも、片頭痛を引き起こしている原因にピンポイントで効果を発揮するといわれているのがトリプタン系薬剤です。炎症を抑制するだけでなく直接的な痛みの原因を抑える働きがあるため、頭痛の発作が起きてからでも痛みを抑えることのできる薬剤として片頭痛患者に重宝されています。
トリプタン系薬剤の働き
片頭痛は、血管の周囲を取り巻く三叉神経が脳血管の拡張により刺激をうけると、神経ペプチドと呼ばれる痛み物質が放出されることにより起こります。痛み物質が放出された結果、血管の周りに炎症が起こり、それがさらに血管拡張を促し、その刺激が大脳に伝わることで片頭痛の症状が現れます。
その中で、トリプタン系薬剤は、以下の3つの作用により効果を発揮します。
- 脳の血管に作用して、広がりすぎた血管を元に戻す
- 三叉神経からの神経ペプチドの放出を抑える
- 三叉神経が受けた刺激の情報が大脳へ伝達されるのをブロックする
これにより、片頭痛だけでなく、吐き気や嘔吐、光過敏などの症状も抑えることができます。
トリプタン系薬剤の種類
日本で承認されているトリプタン系薬剤は5種類あります。
タイプは錠剤が最も有名ですが、吐き気があって水で飲めない患者さんには点鼻薬や注射液のほか、口腔内速溶、口腔内速溶崩壊錠という水なしでも服用できるタイプがあります。
口で溶けるタイプは苦みがあり、崩れやすいので保管や持ち運びには注意が必要です。また、口の中で溶けても吸収は腸でされるので、即効性があるわけではなく効果の発現は錠剤と変わりません。
服用のタイミング
トリプタン系薬剤は、痛みが出始めてから使える薬として非常に重宝されていますが、逆に言えば痛みが出る前の前兆期に服用しても効果は期待できません。発作が起きてからでなければ使えませんので、注意が必要です。
エルゴタミン製剤
エルゴタミン製剤は、古くから片頭痛の治療薬として使われてきた薬剤です。現在はトリプタン系薬剤を服用できない患者さん、トリプタン系薬剤では頭痛が良くならない患者さんに限定的に使われることが多くなっています。
エルゴタミン製剤の働き
エルゴタミン製剤は、血管を収縮させる作用があり、脳の血管の拡張を防ぐことによって痛みを抑えます。そのため、特に前兆のある患者さんには、痛みが起きる前に予防的に服用すると効果的です。ただし、エルゴタミン製剤を服用してから24時間以内にトリプタン系薬剤を服用することができないので注意しましょう。
また、副作用には注意が必要です。人によって吐き気やめまい、手足のしびれなども現れることがあります。このような症状が現れた時は、速やかに医師に相談しましょう。なお、血管収縮作用、子宮収縮作用があるため妊娠中、授乳中の女性は服用できません。
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)について

片頭痛のときはつい薬に頼りたくなりますが、飲みすぎにも注意が必要です。なぜなら、薬剤の使用過多により頭痛が起きる場合もあるからです。頭痛を治すための薬で頭痛が起こっては、本末転倒になってしまいますよね。
市販鎮痛剤の飲みすぎによるものが多いですが、医師から処方された薬によっても起こることもあります。
薬物の使用過多による頭痛の症状は?
次の症状が当てはまる人は、「薬剤の使用過多による頭痛」の可能性があります。
- 月に15日以上頭痛がある
- 頭痛薬を月に10回以上飲んでいる
- 朝起きたときから頭痛がする
- 以前は効いていた頭痛薬が効かなくなってきた
- 薬をいくら飲んでも以前より頭痛がひどくなったと感じる
- 頭痛の程度、性質、痛みの場所が変化することがある。
薬物の使用過多による頭痛-その原因とは
頭痛がひどくなると、頭痛発作への不安から、痛みが起きる前から鎮痛薬を服用するようになり、必要以上に鎮痛薬を服用してしまいます。すると次第に脳が痛みに敏感になり、その結果頭痛の回数が増え、薬も効きにくくなってくるという悪循環に陥ってしまうのです。
どのような治療が適切か
薬剤の使用過多による頭痛を治療するには、まず現在飲んでいる薬を思い切って全部中止します。薬を急に中止すると、激しい頭痛や吐き気、嘔吐などの症状が見られることがありますので、予防薬などで対応します。中止して1~2週間はつらいですが、薬剤の使用過多による頭痛であれば、頭痛の回数が減り、元々の頭痛の症状に戻ります。そこから元々の頭痛に応じた適切な治療を行いましょう。
まとめ
片頭痛の治療薬にはそれぞれ特性があります。治療の目的に応じて服用の頻度とタイミングが指示されますので、それを守ってください。予防薬を片頭痛発作が起こってから服用しても効果はありません。わからないことがないように、きちんと説明を受けましょう。
また、治療を行うことで片頭痛をある程度改善することはできますが、生活習慣も一緒に改善していくことが大切なポイントになります。規則正しく生活しながら上手に薬と付き合っていきましょう。