橋本病(慢性甲状腺炎)は、成人女性の10人に1人が発症するといわれている病気です(長崎医療センターより)。見逃すことも多い発症のサインに気付き、悪化する前に診断を受けることが大切です。誰もがかかる可能性のある病気だからこそ、正しい知識を身に付けて対処しましょう。

この記事では、「橋本病かも?」と疑ったらどうすれば良いか、橋本病の検査・治療や、予防について説明します。橋本病の症状については「橋本病ってどんな病気?自覚症状がなくても要注意」をご覧になってください。

目次

「橋本病かも?」と疑ったら内科を受診しよう

ほとんどの橋本病の患者さんは、あまり自覚症状がありません。自覚症状がない場合は、甲状腺の機能も正常なことが多く、特別な治療の必要はありません。しかし、橋本病は急に悪化したり、甲状腺の機能異常を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

橋本病を疑う症状を見逃さずに、悪化する前に受診しましょう。橋本病は、既に診断されている場合には甲状腺専門医が治療します。しかし、「もしかして橋本病かも?」と疑う症状があったら、まずは内科を受診しましょう。

橋本病と似た症状を引き起こす病気はたくさんあります。そのため、まずは内科で総合的に診てもらうことが大切です。橋本病の可能性が高い場合は、甲状腺専門医を紹介してもらい、詳しい検査や治療を受けるのが一般的な流れです。

橋本病の検査は?

血液検査

橋本病の疑いがある場合、まずは血液検査を行います。血液中の甲状腺ホルモンの量を調べることで、甲状腺の機能低下などの異常に気付くことができます。自覚症状があまりなくても、血液検査で甲状腺の機能が低下していることもあります。橋本病を診断するために必ず行う検査です。

甲状腺超音波検査(甲状腺エコー検査)

甲状腺に超音波をあて、映像で確認する検査です。甲状腺の大きさ、腫瘍の有無・性状が分かります。橋本病で甲状腺に炎症がある場合、甲状腺の腫れがみられることがあります。これをびまん性甲状腺腫大」と呼びます。首が太く見えたり、喉の辺りを触ることで腫れに気付くこともありますが、より詳しく調べるために甲状腺超音波検査を行います。

甲状腺が腫れる病気には、他にも悪性腫瘍(甲状腺がん)・バセドウ病・甲状腺のう胞などがあります。超音波検査により、他の甲状腺疾患の可能性も分かります。

細胞検査(甲状腺細胞診)

細胞検査は、甲状腺の部位に細い針を刺して細胞を採取する検査です。痛みを伴うため、必ず行う検査ではありません。他の検査で診断がはっきりしない場合や、甲状腺悪性腫瘍(がん)との判別をするときに行う検査です。細胞の組織を調べることで、甲状腺の腫れの原因を特定することができます。

橋本病の治療は?

血圧計と薬-写真

橋本病は、必ずしも治療が必要な病気ではありません。甲状腺の機能に問題がない場合は、経過観察を行います。しかし、橋本病により甲状腺機能低下症を引き起こすことが多くあり、その場合には治療の対象となります。

橋本病により甲状腺機能低下症になった場合は、薬物療法により不足した甲状腺ホルモンを補う治療を行います。主な甲状腺ホルモン製剤としてレボチロキシン(商品名:チラージンS)という薬が使用されます。

橋本病の悪化を防ぐ!日常生活の注意点は?

医師の聴診器と胸ポケット-写真

橋本病は治療の必要がない場合もありますが、加齢や妊娠で悪化することも多い病気です。橋本病と診断をされた場合、悪化を防ぐために、以下のことに注意しましょう。

ヨード(ヨウ素)を含む食事を摂り過ぎない

ヨードの過剰摂取は、甲状腺の機能を悪化させやすいといわれています。ヨードを多く含む食品には以下のようなものがあります

  • コンブ
  • ひじき
  • 海苔
  • 魚介類
  • ヨード卵

また、イソジンガーグルなどの医薬品にもヨードが使用されているため注意しましょう。ヨードの制限が必要かどうかは、病状によるため、医師と相談ください。

計画的な妊娠をする

妊娠は必ずしも禁忌ではありませんが、リスクを伴うため、計画的に行う必要があります。橋本病の患者さんが妊娠した場合、以下のようなリスクがあります。

  • 流産しやすい
  • 妊娠高血圧症になりやすい
  • 子どもの成長障害や知的障害
  • 橋本病の急性増悪(急激な悪化)

甲状腺機能の状態や、治療経過を考えながら計画的に妊娠を行うことが大事です。妊娠を希望している場合は、事前に医師と相談しましょう。

定期検診を受ける

橋本病は加齢により悪化することがあります。治療の必要がない場合でも、医師の指示を基に定期的な検診を受け、しっかりと経過観察を行いましょう。

まとめ

橋本病では、早期に病気に気付くことで、悪化を防ぐことができます。しかし、橋本病は悪化しなければ気付きにくい病気です。もしかして?と疑う症状があれば、放って置くのは危険です。橋本病に早く気付くことで、悪化を予防することができます。身近な病気だからこそ、正しい知識を身に付けて対処することが大切です。早めの受診をして、早期診断につなげましょう。