「橋本病」という病気を知っていますか?この病気は、女性に多くみられ、40歳以後では人口の10%前後に達します(東京女子医科大学より)。

しかし自覚症状がないことも多く、気付かれにくい病気です。そのため、診断されたときには既に悪化していることがあります。

橋本病の正しい知識を理解して、病気の悪化のサインに気付きましょう。この記事では、橋本病の症状や、病気の特徴を分かりやすく説明していきます。

目次

橋本病とは?

橋本病は、別名を「慢性甲状腺炎」といいます。
甲状腺という部位が炎症を起こす病気です。

甲状腺は、首の真ん中よりやや下に位置しています。4cmほどの大きさで、気管の前側にあります。腫れなどの異常がなければ、外から触っても分からないくらいの大きさです。

甲状腺は、血液中に甲状腺ホルモン(体の代謝に関するホルモン)を出す働きがあります。
小さな臓器ですが、体の活動を正常に保つという重要な役割をしています。

甲状腺が炎症を起こすことで、甲状腺の機能が低下することがあります。これにより全身に様々な症状が現れます。

橋本病の特徴

中年女性の10人に1人が橋本病!

橋本病は、珍しい病気であると思っていませんか?
実は、成人女性の10人に1人にみられる病気です。また、男性に比べて女性が発症しやすく、9割以上が女性です。加齢とともに、発症のリスクが高くなります(長崎医療センターより)。

自覚症状がないことが多い

橋本病は、発症していても自覚症状がないことがあります。
軽い炎症や、甲状腺が腫れているだけなら、病気であることを気付かない人もたくさんいます。

しかし、加齢とともに病気が進行した場合、甲状腺の機能に異常が出る可能性があります。

自己免疫の異常

橋本病の原因ははっきりと分かっていません。
自己免疫(細菌など異物を排除する体のはたらき)の異常により、自分自身の正常な細胞を攻撃してしまうことで、炎症が起こるといわれています。

要注意!橋本病を放置するとどうなるの?

白いワンピースの女性-写真

橋本病では、甲状腺が少し腫れているだけなら、自覚症状はないこともあります。
しかし、橋本病が悪化することで他の病気を引き起こすことがあります。橋本病によって引き起こされる病気と、現れる症状を紹介します。

甲状腺腫

甲状腺が炎症を起こすことで、腫れることがしばしばみられます(甲状腺腫)。
正常な大きさの甲状腺は、外からでは触れません。

しかし甲状腺が腫れることで、首が太くみえたり、皮膚の上から触れるようになります。この甲状腺腫がきっかけで、橋本病の診断に至ることが多くあります。

甲状腺機能低下症

甲状腺の機能が低下し、血液中の甲状腺ホルモンが不足する病気です。甲状腺機能低下症では、以下のような症状がみられます。

このような症状は、加齢による老化や、他の病気と間違われやすいため注意が必要です。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

非常に稀ですが、橋本病からバセドウ病(甲状腺機能亢進症)に変化することがあります。バセドウ病では、甲状腺機能低下症とは逆の症状があらわれます。

バセドウ病については「バセドウ病を疑ったら。受診・検査から治療の流れ」の記事も参考にしてください。

流産

橋本病は成人女性に多くみられる病気ですが、妊娠をすると流産を引き起こすことがあります。
これは甲状腺の機能の低下が原因です。

月経の異常も起こしやすいため、毎月の体の変化に注意しましょう。

急性増悪

橋本病は自覚症状がなくても、いきなり炎症が悪化することがあります。
これを橋本病の「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」といいます。

急性増悪により、甲状腺の痛みや発熱、動悸息切れなどがみられます。すぐに治まることもありますが、繰り返す場合は薬や手術による治療が必要となります。

無痛性甲状腺炎

甲状腺の機能が亢進するため、バセドウ病に似た症状が現れる病気です。
甲状腺の痛みがないことが特徴です。数ヶ月で完治し、長くても半年で自然と治ります。

しかし、バセドウ病の可能性もあるため注意しましょう。

まとめ

橋本病はあまり知られていない病気ですが、日本人女性に大変多く発症します。悪化するまで気付きにくい病気です。

甲状腺の機能が低下する症状は、加齢によるものと誤解されやすく、発見が遅れることがあります。

「もしかして?」と思う症状があれば、放置せずに早めの受診で検査を受けましょう。

橋本病の検査・診断・治療については、「橋本病に気づいたらどうする?検査と治療、悪化の予防」の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてください。