は出ないけれど、のどがかゆくて乾いた咳が止まらない。そんな症状でお困りの方はいませんか?

もしかしたら、アトピー咳嗽(がいそう)かもしれません。実はアトピー咳嗽は1989年に日本で定義された疾患です。今回は、あまり知られていないこの症状の特徴について紹介したいと思います。

目次

症状で変わる2種類の咳嗽

そもそも咳嗽(がいそう)という言葉が聞きなれないため、どのような症状なのか全く分からない方が多いと思います。咳嗽とは、一般的に咳(せき)といわれる症状のことを指しています。

咳嗽には、痰が出てゴホゴホという咳が出る湿性咳嗽と、痰が出ずコンコンという乾性咳嗽の2種類があります。アトピー咳嗽は、痰の出ないタイプの乾性咳嗽に分類されます。

咳の出ている期間で変わる3つの咳嗽

咳をする男性-写真

風邪で咳が出るという症状はよく聞きますね。こうした呼吸器感染症が原因で、咳の続く期間が3週間以内の場合は、急性咳嗽と呼ばれます3週間から8週間続く場合は遷延性咳嗽といい、8週間以上続いている場合は慢性咳嗽といいます。

慢性咳嗽の原因として挙げられるものは、感染が原因ではありません。咳喘息、間質性肺炎、そしてアトピー咳嗽もこの慢性咳嗽に分類されます。風邪で咳が出るだけだと思って放っておかずに、3週間以上咳が続くようでしたら病院に行くようにしましょう。

アトピー咳嗽の症状

以上のことをまとめると、アトピー咳嗽では、痰が出ない乾いた咳が8週間以上続きます。またその他の症状として、のどがイガイガしてかゆくなることもあります。

症状が出やすい時間帯は順に、寝るとき、深夜から早朝、起床時、早朝が多いと言われています。患者さんは様々な年齢の人がいますが、中年女性にやや多いといわれています。

アトピー咳嗽の原因

アトピー咳嗽の原因として考えられるのは、エアコンの冷気やたばこの煙、運動、会話、香水など様々です。

また、アトピー素因という生まれつきアレルギー反応を起こしやすい体質もアトピー咳嗽を発症する原因になります。咳だけでなく、アトピー性皮膚炎などを発症したことがあったり、本人だけでなく家族の誰かが同じような症状にあったりした経験のある場合が多いです。

咳喘息との違いは?

カルテを持つ医師-写真

咳喘息とアトピー咳嗽は気管の中の炎症を起こす場所が少し違うのですが、痰の出ない咳が続くといった症状がよく似ています。そのため、この2つの病気を診察によって見分けることはとても困難であるといわれています。

唯一の違いは、咳喘息に効く気管支拡張薬という薬がアトピー咳嗽では効かないという点です。そのため、気管支拡張薬を処方し、効かなかった場合にアトピー性咳嗽と診断するという、治療的診断という方法を使って特定します。

アトピー咳嗽は治療すればよくなる!

アトピー咳嗽は、悪化したのち喘息を発症させるようなことはありません。

半分以上の患者さんはヒスタミンH1受容体拮抗薬という薬を飲むことによって症状が軽くなります。この薬を飲んでも良くならない人は、吸入ステロイド薬を追加しますが、重症例では、経口ステロイド薬を1~2週間程度使用して治療します。

しかし、治療を終了させて4年経つと50%の人が再発してしまうというデータがあります(咳嗽に関するガイドライン)。

万が一再発してしまっても再び投薬治療を行なえば改善しますので、諦めないことが大事です。

治療方法は主治医とよく相談しよう

咳喘息とアトピー咳嗽を区別するために、気管支拡張薬やヒスタミンH1受容体拮抗薬の有効性を確認するかという問題が残ります。

実際の診療の現場では、患者さんの苦しい咳を改善するために、咳喘息とアトピー咳嗽のどちらにも有効な吸入ステロイドで最初から治療することがほとんどです。一方で、咳喘息の30%の患者さんが気管支喘息に移行してしまうため、吸入ステロイドの治療が長引く可能性があります。

そのため、咳喘息とアトピー咳嗽を区別する、つまり、気管支拡張薬やヒスタミンH1受容体拮抗薬を試みるかは、主治医と相談する必要があります。

まとめ

咳が止まらないと体力が無駄に奪われてしまって日々の生活がつらいですよね。ただの咳だから大丈夫と思わずに3週間以上続いている場合は早めに医療機関に行って検査し、治療をしてもらうことをおすすめします。