ネフローゼ症候群は、腎臓にある糸球体(血液をろ過する組織)の障害によって、血液に必要な「アルブミン」というタンパク質が、大量に尿のなかに漏れ出ることです。全身のむくみ・だるさ・尿の減少などが起こります。
原因不明の「一次性」と、糖尿病や膠原病など難しい病気を原因とする「二次性」があり、症状によっては腎不全に発展する危険性があります。病院では、診察のほかに血液と尿の検査によって診断が行われます。
初期症状を自覚する人は少ない
ネフローゼ症候群は、初期には体がだるい、まぶたが重い、尿が泡立つなどの症状が起こります。しかし症状を自覚できず、健康診断で異常がわかる場合が多いようです。
思いあたる症状があれば腎臓内科を受診しましょう。病院では診察のほかに尿検査と血液検査を行います。尿のなかにタンパク質がどれほど漏れ出ているか、漏れ出たことによって血液のなかのアルブミンがどれほど減少しているかを調べます。
尿検査は、丸一日分をすべて検査
尿検査では、24時間蓄尿検査といって、丸一日排出したすべての尿を搾取し検査するのが望ましいとされています。24時間の蓄尿が難しい場合は、無作為に搾取した尿によって検査が行われます。
血液検査では、ネフローゼ症候群の特徴である血清総蛋白の低下、アルブミンの低下、コレステロールの増加を調べます。
ネフローゼ症候群では、血液のアルブミンが減少すると、肝臓がアルブミンを生成します。そのとき「リポタンパク」と呼ばれる物質も生成されます。リポタンパクは、脂質とタンパク質が結合した物質で、コレステロールを多く含みます。そのため、血液のコレステロール値が上昇します。
厚労省が定める「ネフローゼ症候群」の診断基準
ネフローゼ症候群であるかどうかは、厚生労働省が定める次の基準によって判断されます。
成人の場合
- タンパク尿:3.5 g/日以上
随時尿(病院においてその場で採取した尿)において、尿蛋白/尿クレアチニン比が3.5 g/gCr 以上の場合もこれに準じます。 - 低アルブミン血症:血清中のアルブミン値が3.0g/dL以下
1と2を同時に満たし、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群と診断します。
小児の場合
- 高度タンパク尿(夜間蓄尿(夜間に排出された尿を溜めたもの)で 40mg/hr/m2 以上)
または早朝尿(朝起きて最初に採取した尿)で尿タンパク/クレアチニン比 2.0g/gCr 以上 - 低アルブミン血症:血清中のアルブミン値が2.5g/dL以下
1と2を同時に満たし、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群と診断します。
「生活改善」と「薬」を合わせた治療
子供に多いタイプでは、稀に自然治癒する場合がありますが、ほとんどの症状で専門医による継続的な治療が必要です。治療は、専門医の指導のもと対症療法と原因治療が行われます。
対症療法
対症療法は、おもに日常生活の改善によってむくみをコントロールする治療です。運動はタンパク尿を増加させるため控え、できるだけ安静にして次の2つを実施します。
塩分制限
全身のむくみは、塩分が細胞の外に溜まって起こります。塩分を控えてむくみを抑える治療です。
利尿薬
フロセミドなど尿を増やす薬を服用し、体に溜まった水分を排出するようにします。むくみの軽減に有効です。
原因治療
糸球体を改善するための治療です。副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を使うのが一般的です。長期間にわたる治療では、副作用に対する配慮が必要です。
ステロイド
ステロイドを使うことで、タンパク尿が改善し、特に微小変化型ネフローゼ症候群で大きな効果を発揮します。症状が改善した場合でも、いきなり投薬を中止せず徐々に量を減らします。
一方、先天性ネフローゼ症候群という遺伝性の特殊なネフローゼ症候群では、ステロイド薬の効果があまり見られません。血中のアルブミン濃度が極端に低下し、腎臓の切除手術が検討されます。腎移植の準備が整うまで、透析などの支持療法(副作用の予防対策)が行われます。
免疫抑制薬
ステロイド薬だけでは効果が乏しい場合に、補助的な薬として免疫抑制薬を合わせて使います。または、ステロイドを減量したり、中止したりするときに使うことがあります。ステロイドや免疫抑制薬を減量すると再発することが多く、薬剤を使った治療は2年以上かけて行うことがあります(難病情報センターより)。
まとめ
ネフローゼ症候群は、血液と尿の分析によって診断が決まります。治療には食事制限などによる「対症療法」と、薬剤を使った「原因治療」が進められます。いずれも、全身のむくみを抑え、タンパク尿を減少させる治療です。
ネフローゼ症候群は、多くのタイプがあるため、決定的な治療法は少なく2年以上にわたり長期化することがあります。また、再発率が高いため、定期的に腎機能検査を行いましょう。