PE(premature ejaculation)は早漏症のことです。その治療法は内科的治療、外科的治療、カウンセリングなどが多岐にわたります。
それぞれの治療法については前回の記事「早漏症(PE)は治療で治る?本当に有効な方法とは」で説明しました。
結論から言えば現状においてはカウンセリングをベースに薬による治療が最もバランスが取れていると思います。

その中でPE治療薬として唯一認可(注:海外のみで日本では未承認)されているプリリジー(一般名:ダポキセチン)という薬について説明していこうと思います。

目次

プリリジーはどんな薬?

プリリジー-写真

プリリジーは世界初の飲むPE治療薬です。
大規模な臨床治験によって早漏改善効果が証明されています。世界の60か国以上で認可されていて、安全性は確立されている薬です。

2009年にJansen Pharmaceuticalという製薬会社に開発されましたが、現在はイタリアの製薬会社であるMenariniグループが販売を行っています。

ちなみに実際に販売されている国は30か国程度のようですがスウェーデン、フィンランド、スペイン、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、イタリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国なども含まれています。

プリリジーの効果

早漏の診断にはIELTという項目で評価することがあります。IELTとはIntravaginal Ejaculation Latency Timeで膣内挿入後から休まず性行為を続けた場合の射精までの時間を指します。

結論から言いますとプリリジーは60mg錠を使用すると有効率が70%程度で、効果が出た場合は射精までにかかる時間を3倍程度まで延長します。
短時間作用の薬なので効果の持続は6時間程度です。24時間後には95%以上は体外に排出されます。

ED治療薬がEDを根治させるわけではないのと同じく、プリリジーは早漏症を根治させる薬ではありません。PEが完全に治るのかという質問を受けますが、そのような薬ではないのです。

偽薬(プラセボ)との比較をまとめた表が下記のものです。

プリリジーの有効性(プラセボ群と比較)

プリリジー
30mg服用
プリリジー
60mg服用
プラセボ服用
プリリジー初回服用時のIELT 2.1分 2.5分 1.4分
プリリジーを12週間、性行為のたびに使用したときのIELT 3.5分 3.8分 2.0分
プリリジーを24週間、性行為のたびに使用したときのIELT 3.3分 3.9分 2.2分
早漏症状の軽度改善(24週間使用後) 27.0% 33.2% 16.4%
早漏症状の中程度改善(24週間適宜使用後) 20.6% 27.3% 11.8%
早漏症状の著明な改善(24週間適宜使用後) 10.0% 11.9% 3.7%
24週間使用後の全改善率 57.6% 72.4% 31.9%

プリリジーはどうして効くの?

プリリジーは短時間作用型SSRIという薬になります。SSRIとはセロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれ、神経伝達物質であるセロトニンの量を増やします

セロトニンは不足することで交感神経が強く働き、その結果としてPEを引き起こします。

SSRIによりセロトニン不足が解消されればPEの改善が期待できるというわけです。

抗うつ薬として有名なパキシル(一般名:パロキセチン)やジェイゾロフト(一般名:フルオキセチン)などは長時間作用型のSSRIに分類されます。

これらの薬にも早漏改善効果が期待できるのですが、性行為の5時間以上前に内服しないと効果が出ない、そもそも有効率が1割程度と非常に低いなどの問題がありPE治療薬としては使いにくいのが実情です。

プリリジーの飲み方

プリリジーは性行為の1時間前程度に内服します。食前・食後などのタイミングはあまり気にしなくて大丈夫です

プリリジーは30mg錠と60mg錠がありますが、通常は30mg錠から使用することが多いです。
しかし、データ上でも60mg錠の方がしっかりした効果が出るため、30mgで無効もしくは効果不十分な場合は速やかに60mg錠に増量してもいいでしょう。

プリリジー内服を開始して4週間もしくは6回の内服で効果が出なかった場合は無効例なので内服を中止する必要があります

 プリリジーの副作用

頭痛、不眠、めまい、吐き気、下痢などが出ることがありますが1~10%程度です。

その他、起立性低血圧(立ち上がったりした際に急に血圧が下がりめまいや失神をおこす)が起こることがあり、頻回の立ちくらみや失神歴がある方には使用できません

プリリジーを服用できない方

禁忌:以下に該当される方は、プリリジーの内服はできません。

  1. NYHAⅡ~Ⅳの心不全(心当たりのある方はかかりつけの循環器科医にご相談ください)
  2. 恒久的ペースメーカー治療を受けていない2~3度の房室ブロック、洞不全症候群
  3. 重度の虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
  4. 重度の心臓弁膜症
  5. MAO阻害薬(抗うつ薬の一種)を内服中の方。MAO阻害薬を中断後14日以内も含む。MAO阻害薬はプリリジー内服後、7日間は再開してはいけない。
  6. チオリダジン(フェノチアジン誘導体)を内服中の方(チオリダジン内服中断から1日以内も含む)。チオリダジンはプリリジー内服後、7日間は再開してはいけない。
  7. SSRI、SNRI、3環系抗うつ薬、その他の医薬品でセロトニン作動性をもつもの(例:Lトリプトファン、トリプタン、トラマドール、リネゾリド、リチウム、セイヨウオトギリソウ)を使用中の方。中断後14日以内も禁忌。プリリジーを内服したら、これらの医薬品は7日間は休薬しなければならない。
  8. 抗真菌薬や抗HIV薬など強力なCYP3A4阻害薬であるケトコナゾール、イトラコナゾール、リトナビル、サキナビル、テリスロマイシン、ネファンドゾン、ネルフィナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)アタザナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)なども併用禁忌です。
  9. 中等度~高度の肝障害をお持ちの方。
  10. 高度の腎障害をお持ちの方。
  11. 起立性低血圧失神などの病歴がある方。
  12. 躁病、両極型うつ病をお持ちの方。
  13. てんかんの発作を起こす方。
  14. ガラクトース不耐、ラクターゼ欠損、グルコース‐ガラクトース吸収異常症の方。
  15. 20歳未満および65歳以上の方。

まとめ

最初に書きましたがプリリジーは海外ではPE治療薬として認可されていますが残念ながら日本では未承認であるため使用するには海外から輸入する必要があります。
そのため輸入薬品に強い限られた医療機関のみで処方可能です。
個人輸入代行業者などから買うとかなりの確率で偽造品であると言われているため医療機関を受診した方がいいでしょう。

ED(Erectile dysfunction:勃起不全)も合併している場合はED治療薬との併用も可能ですが副作用を増強することがあるため医師と相談して用量を調節したほうがいいでしょう。
ちなみにED患者の3割は早漏になるといわれています
このような2次的なPEはEDを治療することで症状が改善することもあります。
EDが原因でPEになったと疑われる場合にはまずED治療薬だけで治療を開始するというのも選択肢の一つだと思います。

このようにED、PEが同時に存在している場合はどのような形で治療を始めるか判断に迷うことも多いと思います。
まずは処方実績の多い病院で相談してみるといいでしょう