みぞおち(上腹部)が痛いとき、どのような病気が考えられるでしょうか。今回は上腹部に痛みが生じる病気について、特に左側(左季肋部)、もしくは中央(心窩部)に痛みが生じる病気に焦点を当てて原因から症状まで詳しく紹介していきます。

目次

上腹部の左側に痛みが生じる病気

狭心症

心臓の筋肉に栄養や酸素を送るための血管である冠動脈(かんどうみゃく)に病変が生じるものです。食生活や肥満、喫煙、ストレスなどを原因に冠動脈が狭くなって血の巡りが悪化したものが狭心症です。

症状は一時的に前胸部が痛み、その痛みがみぞおちや左上腕・肩などに広がります。また圧迫感や動悸、歯痛もあります。命に関わる病気を見落とさないよう注意が必要です。狭心症が心筋梗塞まで進行してしまうと意識を失うほどの激しい痛みに襲われ、最悪死にいたってしまいます。

このほか、下記の病気のこともあります。

急性膵炎

膵臓は非常に強力な消化液「膵液」を作ります。膵液は食べ物の消化や吸収で活躍します。膵管を通って消化管に送り出されますが、このとき胆嚢から胆汁が送り出される胆管と出口を共有しています。

胆嚢あるいは胆管に石が形成されてしまう胆石症によって出口が塞がれてしまうと、逃げ場を失った膵液が膵臓自身を消化してしまうことがあります。この流れによって膵炎が引き起こされます。この他、暴飲暴食、特にアルコールの多飲によって膵液の産生が促進されることで同じように膵炎が起こります。

無症状のこともありますが、上腹部の左側から背中にかけて痛みが出ることもあります。痛みは前かがみになると軽減するのが特徴です。吐き気や嘔吐、発熱に加え、膵臓を超えて周囲の臓器まで障害が及ぶと、呼吸困難黄疸(おうだん)ショック状態(急激な血圧低下による意識障害)などが生じることもあります。

脾腫の腫大

上腹部の左側には脾臓という臓器があります。脾臓では免疫力を担う白血球を作ったり、血液をろ過して不要な物質を取り除く働きがあります。感染症やがんなど、脾臓の働きがより求められるようになると、脾臓が腫大(腫れあがってしまう)することがあります。

腫大した脾臓は正確な働きが行えなくなり、正常な血球を不必要に貯蔵あるいは破壊します。その結果白血球の減少による免疫力の低下や、赤血球の減少による貧血などの症状を招きます。

この他の症状としては、脾腫によって胃が圧迫されることで食事の早期に満腹感が生じたり、周囲の臓器を圧迫することで呼吸困難や嘔吐、便秘などを示すことがあります。また、脾臓の位置に一致して上腹部や背中の左側に痛みが出ることもあります。

上腹部の中央に痛みが生じる病気

悩む男-写真

急性胃炎

胃がピロリ菌に感染したり、薬の副作用高濃度のアルコールを摂取するなどして粘膜に炎症を起こします。このほか魚介類に寄生するアニサキスという回虫がきっかけになることもあります。心窩部痛や嘔吐、悪心(おしん)などがみられます。

胃、十二指腸潰瘍

急性胃炎と同様にピロリ菌感染薬の副作用ストレスなどをきっかけに、胃に傷が付き、その傷が深まった結果潰瘍になります。十二指腸潰瘍は弱った箇所に胃酸や自身の分泌液に攻撃されて起きます。

胃、十二指腸ともに悪化していくとついにはが開いてしまうことがあり、この状態を穿孔(せんこう)といいます。胃と比べ、十二指腸の方が壁が薄いため、穿孔の頻度は十二指腸が多いです。激しい心窩部痛や吐血、嘔吐に加え、黒色の便が見られます。穿孔が起きていると腹部の激痛もあります。

胃がん

刺激物や塩分、アルコールの過剰摂取、喫煙などによって起きた胃の炎症がきっかけです。炎症が起きた粘膜にがん(悪性腫瘍)ができます。早期の胃がんは無症状が多いですが、胸焼けやお腹の不快感、みぞおちの中央部や左側が痛くなることがあります。

まとめ

みぞおちの左側や中央部には消化器官があります。その器官から消化液が分泌され、複雑な過程を経て体内に取り入れた食物は消化されていきます。これらの消化液は決して身体にとって無害なものではなく、本来の働きから外れてしまえば自分自身を傷つけてしまいます。

原因は生活習慣の乱れなど多岐に渡ります。食生活の見直しは今すぐできることなので、油っこい食事や暴飲暴食など消化管に負担のかかる食事は避けてみましょう。