日本では3~5年周期で流行るおたふく風邪(国立感染症研究所より)のワクチン接種は任意です。おたふく風邪には合併症による後遺症があることを知っていますか?なかには難聴など一生残ってしまうものもあります。

ワクチン接種は効果が認められている一方で、副作用のリスクもあります。今回はおたふく風邪とその合併症、さらに予防するワクチンについて説明していきます。ワクチンの助成についても触れますので、ぜひチェックしてみましょう。

目次

おたふく風邪とは

ムンプス、流行性耳下腺炎とも呼ばれ、片方、または両方のほほ(唾液腺)が腫れる病気です。腫れているほほを押すと痛みがあり(圧痛)、さらに唾や食事を飲みこむときにも痛みがあります(嚥下痛)。多くの人は発熱も伴いますが、30~35%の人は感染しても無症状(不顕性感染)とされています。

原因となるムンプスウイルスの感染力はかなり強く、接触、または飛沫感染で広がります。感染後2~3週間の潜伏期間を経て発症し、唾液腺や耳下腺、まれに顎下腺、舌下腺が腫れ、その腫れは48時間以内にピークを迎えます。その後は通常1~2週間で自然に良くなっていきます。

過去の感染報告から4歳が最も多く、次に5歳、3歳と続きます。3~6歳で患者の約60%を占めています(文中内のデータは全て国立感染症研究所より)。

おたふく風邪の合併症

耳が遠い人-写真

最も多い合併症は無菌性髄膜炎です。発熱、頭痛、嘔吐の症状がみられますが、無症状のことが多いです。男の子は女の子よりもかかる確率が3~5倍になります。また思春期以降に感染した場合、男性では20~30%に精巣炎、女性では約7%に卵巣炎がみられます(国立感染症研究所より)。ただしおたふく風邪による精巣炎、卵巣炎で不妊になることはまれです。

最も警戒しなければならないのが、一生残る障害を招くムンプス難聴です。ムンプスウイルスが内耳に侵入し、内耳有毛細胞が障害を受けた場合、ほほの腫れが消えてから 1 カ月以内に難聴が現れます。難聴を合併する割合は以前は2万人に1人と珍しかったのが、最近では最大100人に1人の割合で発症している報告もあります(国立感染症研究所より)。乳幼児がムンプス難聴になってしまうと、本人からの訴えがないため気づくのに遅れる場合があります。

他にはムンプス脳炎も重篤な合併症です。1%未満と頻度は低いですが、39℃以上の発熱と脳障害の症状でいきなり発症し後遺症や死亡につながることがあります。また、まれにムンプスウイルスは脳症を引き起こすこともあり、日本では9人の報告中、2人が死亡、4人が四肢麻痺やてんかんなどの後遺症を残しています(日本小児感染症学会より)。

おたふく風邪の対処

おたふく風邪には有効な抗ウイルスはなく、症状をやわらげる対症療法のみです。痛みや発熱には解熱鎮痛剤、脱水には輸液の点滴、無菌性髄膜炎があれば安静など症状を和らげながら自然に治癒するのを待ちます。ただムンプス難聴は治らないので、感染や合併症を予防するにはおたふく風邪ワクチンが唯一の方法ではあります。

おたふく風邪ワクチンとそのリスク

おたふく風邪ワクチンはムンプスウイルスを弱毒化した生ワクチンです。接種して免疫ができるまでには4週間かかります。日本では生後12カ月~15ヶ月の間に1回目のワクチンを接種できます。さらに日本小児科学会では2回目の接種を5歳以上7歳未満で受けることを推奨しています(日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの変更点より)。しかし、いずれも任意接種(希望者のみ接種する)です。

海外では多くの国でおたふく風邪ワクチンを定期接種(接種が義務付けられている)化し、発症減の効果も出ています。にもかかわらず日本でおたふく風邪ワクチンが任意接種なのは、ワクチンの副反応(副作用)をリスクとして考えているからです。

軽度のものでは接種から24時間以内に接種部位の痛みが現れたり、接種から10~14日後の微熱、ほほがやや腫れるなどの症状があります。重いものでは無菌性髄膜炎があり、0.03~0.06%の確率で起きます(日本小児感染症学会より)。海外よりも確率が高く、日本で使われているワクチンが関係しています。ただ重症度はおたふく風邪の自然発症と同程度で予後は良好です。

またおたふく風邪ワクチンが任意接種であるもう一つの理由にワクチン接種者の1割は抗体がつかない点が挙げられます(国立感染症研究所より)。しかし多くの子供がワクチンを接種しておたふく風邪の発症率が減れば、抗体を持たない子が感染する確率も減ります。たとえワクチン接種して1割の人に抗体がつかないとしても、ワクチン接種の意義は大きいです。

自治体によっては助成金あり

自治体によってはワクチン接種に助成金を出しています。その状況は「know-vpd!|小児ワクチンの全国助成情報」に掲載されています。情報が古い場合があるので、実際に助成金を利用したい場合はお住まいの自治体に電話したりホームページで確認しましょう。

まとめ

おたふく風邪は治りが良い病気として知られていますが、合併症を引き起こす可能性もあります。ワクチンには効果とリスクがあるので、しっかりと検討してみてください。もしワクチンを接種する場合は助成金を積極的に利用してみるといいでしょう。