漢方といえば「効果は緩やかだけれども、副作用がないため服用しやすい」と考えている方は多いと思います。
しかし漢方も薬の1種であり、もちろん副作用が存在します。とはいえ西洋の薬に比べると遥かに少ないので、鼻炎などで西洋のお薬を使うと副作用で眠気・口の渇きが気になってお薬を飲めないといった方に漢方を処方することがあります。最近では漢方を含んだ市販薬がたくさん販売されていますが、医師の診断なしに気軽に選んで使用できるため漢方による副作用が増えてきて問題になっています。
そこで今回は「漢方と副作用」について詳しく知っていただき、漢方と上手に付き合っていくための方法をお伝えしたいと思います。
漢方の副作用とはどのようなものがあるか?
それでは漢方の副作用にはどのようなものがあるかについて見ていきましょう。
有名なものとしては
- 肝機能障害
- 間質性肺炎
- 偽アルドステロン症
- 薬疹・過敏症
- 動悸・排尿障害
などがあげられます。
それではそれぞれの副作用について、どの漢方を服用した際に出やすいのか、また副作用自体の症状などについて詳しく見ていきましょう。
肝機能障害
■原因とされる生薬
- 桂枝(ケイシ)
- 決明子(ケツメイシ)
- 柴胡(サイコ)
- 沢瀉(タクシャ)
- 猪苓(チョレイ)
- 白朮(ビャクジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ) など
■上記の生薬が含まれている漢方製剤
- 葛根湯(カッコントウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 八味地黄丸(ハチミジオウガン)
- 防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)
- 防風通聖散(ボウフウツウショウサン) など
肝機能に異常をきたした結果、黄疸やだるさなどがあらわれる恐れがあります。最近では市販のダイエット用のお薬として「防風通聖散」(商品名:ナイシトール、コッコアポA錠など)が注目され、多くの人が服用するようになり、副作用も増加しています。上記のような症状があらわれた場合は病院で受診してください。
間質性肺炎
■原因とされる生薬
- 黄芩(オウゴン)
■上記の生薬が含まれている漢方製剤
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 麦門冬湯(バクモンドウトウ)
- 黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ) など
間質性肺炎とは、普段聞くような感染性の肺炎とは違い呼吸困難を感じる難病です。肺にはガス交換を行っている肺胞というものが存在します。この肺胞の壁に炎症などがおこることで、壁が厚く固くなり、ガス交換がうまく行われなくなり、呼吸困難感を感じるようになります。症状としては空咳や、動いたときに息苦しさを感じる、発熱などがあげられます。このような症状があらわれた場合は服用を中止してすぐに病院に行って受診してください。
偽アルドステロン症
■原因とされる生薬
- 甘草(カンゾウ)
■上記の生薬が含まれている漢方製剤
アルドステロンという血圧を上昇させるホルモンが実際に増加していないにも関わらず、血圧上昇やむくみ、低カリウム血症などが生じる症状のことをいいます。手足の力が抜けた感じ、いつもより血圧が高い、またむくみやこむら返り、体のだるさなどを感じたら、医師に相談してください。薬を中止することで、数週間以内に改善することが多いです。
薬疹過敏症
■原因とされる生薬
- 桂皮(ケイヒ)
- 胡麻(ゴマ)
- 人参(ニンジン)
- 大黄(ダイオウ)
- 当帰(トウキ)
- 防風(ボウフウ) など
■上記の生薬が含まれている漢方製剤
- 葛根湯(カッコントウ)
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)
- 補中益気湯(ホチュウエッキトウ) など
薬疹は薬が体に合わず湿疹などが生じることをいいます。赤くなったり、かゆくなったりしたら使用をやめて医師に相談してください。
動悸排尿障害
■原因とされる生薬
- 麻黄(マオウ)
■上記の生薬が含まれている漢方製剤
麻黄の主成分は「エフェドリン」というものであり、これは交感神経を刺激して血圧上昇、頻脈、排尿障害(尿が出にくくなったり、残尿感を感じたり)などが生じる恐れがあります。また西洋の薬の中でも交感神経を刺激するようなものとの併用は注意が必要です。より副作用が出易くなります。持病がある方は麻黄を服用する前に医師・薬剤師に相談してください。
漢方と上手に付き合っていく方法

漢方とはいえ副作用があることは理解いただけたと思います。しかし使い方次第で、漢方は副作用を抑えながら有効的に摂取することができるのです。その際に注意してほしいことがいくつかあります。
1.自分の体質にあった漢方を選ぶこと
例えば体力のある方向けの漢方を体力のない方が服用すると副作用が出やすくなります。胃腸が弱い方が、胃腸の強い方用の漢方を服用すると胃腸障害という副作用が出やすくなります。
漢方は体質などによって使用する種類が違ってきます。自分に合った漢方を選ぶことで、副作用はほとんどでないとまでいわれています。自分に合ったものがわからない場合は専門医に相談してみましょう。
2.複数の漢方を併用しない
上記でもあげられた生薬の「甘草」などは漢方に良く含まれている生薬で、複数の漢方を服用することで「甘草」を重複して摂取することになる恐れがあり、副作用が起きやすくなってしまいます。専門医の判断以外での漢方の併用は極力避けた方が良いでしょう。
3.改善されたのに服用を続けない
症状が改善されたのに、漢方の服用を続けて副作用が生じることも多々あります。辞め時はご自身で判断するのは難しいかもしれませんので、専門医に相談してください。
まとめ
漢方といえども命にかかわるような副作用も存在します。しかし西洋のお薬に比べると、やはり副作用は少なめですし、自分に合ったものを選ぶなど、いくつかの注意点を考慮して選別・服用すればとてもよいお薬になるのです。今回ご紹介したような副作用も存在するのだということを知っておき、「あの人が効いたというから飲んでみる」ということは避け、自分に合った漢方を探してみてください。