アレルギー疾患を持つ患者は国民の約3人に1人にのぼり、増加しているといわれています。アレルギー疾患は、アレルゲン(アレルギーの原因と考えられる物質)を見つけ出して、対策をすることが重要です。
しかし、くしゃみや鼻水などの症状からアレルギー疾患か否かを判断することは、極めて難しいです。そこで、今回はアレルギー検査の基本的知識と検査から分かる5つの項目についてご紹介します。

目次

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アレルギー検査から何が分かる?

アレルギー検査をすると、次の5つのことが分かります。

  1. アレルギー体質かどうか
  2. 特異的IgE抗体を持っているか
  3. アレルゲンはなにか
  4. 身体の機能(運動の限界や肺活量)はどれくらいか
  5. 血中IgE濃度はどれくらいか

くしゃみや鼻水が慢性的に続くと呼吸が苦しく、症状を抱える人にとってはとてもストレスになります。アレルギー検査によりこうした症状の原因を詳しく調べることができるのです。

しかし、問題となるアレルゲンが自動的に分かる検査方法は現在のところはありません。アレルギー検査の際には、症状の状況を細かく医師に伝え、適切な検査を選ぶことが大切になります。

では、問診で医師に伝えるべき項目、数あるアレルギー検査の内容について見ていきましょう。

日常生活でチェックすること

日常
どのようなときに、どのような症状が現れたかをチェックして、アレルゲンを見つけ出しましょう。

観察結果をメモにしておけば、医師からの問診のときに経過を正確に伝えることができ、症状が現れたときに関連性も見えてくる可能性があります。

また、患者が子どもである場合は、親が毎日の生活を細かく観察しておきましょう。チェックのポイントは「いつ?」「どうなった?」という2点です。

<いつ?>

  • どこに行ったとき
  • 何をしたとき
  • 何に触ったとき
  • 何を食べたとき
  • どのような天気のとき

時と状況、行動などをメモに残しましょう。

<どうなった?>

  • 皮膚に現れた異常
  • 吐き気、下痢などの消化器系の異常
  • くしゃみ、咳込みなどの呼吸器系の異常
  • 涙やしょぼしょぼする目の異常

身体に現れた異常のすべてを経過と共に書いておきましょう。

アレルギー検査の内容とは?

血液検査

アレルギー症状がひどい場合や急性症状を経験した場合など、医療機関でアレルゲンを診断することができます。

あなたはアレルギー体質?~血液検査~

まずは、アレルギー体質であるかどうかを調べるため、血液検査を行います。IgE抗体と好酸球の数値を測定するものです。両方の数値が高く出ると、アレルギー体質と判断されます。

アレルギーの原因は?~アレルゲンを特定する検査~

アレルゲンを特定するための検査をしましょう。アレルゲンを特定する検査には、次の5種類があります。

特異的IgE抗体検査法

血清中に特定のアレルゲンに対するIgE抗体があるかどうかを採血して検査します。

この検査は、特異的IgE抗体の存在を確認することはできますが、原因アレルゲンを最終的に決定するものではありません。

皮膚テスト

皮膚テストにはいくつかの種類があります。

皮膚を出血しない程度にひっかき、そこからアレルゲンを吸収させて反応を見るスクラッチテスト、あるいはプリックテストといいます。

また、アレルゲンのエキスを皮膚に貼りつけて反応を見るものはパッチテストと呼ばれ、アルコールへの適正などを測る際にも行わるものです。

さらに、アレルゲン液を皮内にほんの少し注射する皮内テストという方法もありますが、全身に強い反応が起こる場合もあるので注意が必要です。

食物除去テスト、負荷(誘発)テスト

食事から疑わしいアレルゲンを除去する方法です。1~2週間程度除去した食生活を続けた後に、今度は逆にその食物を食べて負荷テストを行い症状の経過を見ます。

吸入誘発テスト

特異的IgE抗体検査と皮膚テストの結果に応じて行います。皮内テストの場合より10倍薄めたアレルゲン液を3分間吸入して、その反応を見ます。

運動負荷テスト

気管支ぜん息の人は、走ったときに激しく咳き込んだり発作を起こすことがあります。運動負荷テストでは、強い運動を行うことによってその限界を調べます。

いずれも反応が激しく現れる場合があるので、医師の指導を十分に守って行うことが大切です。

健康保険で受けられる検査もある?

健康保険で受けられる検査についても紹介します。

X線検査

胸部X線検査副鼻腔X線検査があります。

胸部X線検査は、気管支ぜん息が疑われる場合に、呼吸器と循環器の異常の有無を調べるために行います。

また、膿性鼻汁が続くときには、アレルギー性鼻炎の他に副鼻腔炎を合併している可能性があるため、これを確かめる副鼻腔X線検査を行います。

抗原誘発テスト

血液検査や皮膚テストで推定されるアレルゲンを使い、アレルギー症状が出る部分で反応が起こるかを確認します。

アレルゲンを眼瞼結膜に貼る眼瞼結膜誘発テスト、鼻粘膜に貼る鼻粘膜誘発テスト、アレルゲンを吸入する吸入誘発テスト、アレルゲンと思われる食物や薬を実際に摂取する経口負荷試験があります。

アレルゲンを直接的に投与する方法なので、実際の症状が強く出ることもあり、必要性が認められる場合のみ行います。

肺機能検査

肺機能を判定します。5~6歳以上に限りますが、自分が自宅で検査することができます。

テオフィリン血中濃度測定

気管支ぜんそくの治療薬ひとつであるテオフィリンが、副作用なく有効に作用するか、テオフィリンの血中濃度を調べます。

検査からなにが分かるの?

先にも述べたように、アレルゲンが自動的に分かる検査方法はありません。

例えば、「卵、牛乳、ダニについて調べる」というようなオーダーを出して、この3つのアレルゲンと反応する抗体の血液の量を調べるというような、症状別の検査が行われています。

何について調べるかは、

  1. 一般的に問題になりやすいもの
  2. それまでの症状から怪しいもの

を選んで自分で指定します。 表で見ていきましょう。

検査 疑われる病気 分かること
血液検査 アレルギー体質か調べる
特異的IgE抗体検査法 食物アレルギー
皮膚アレルギー
特異的IgE抗体の存在を
確認する
皮膚テスト 皮膚アレルギー 疑わしい皮膚のアレルゲンを調べる
食物除去テスト 食物アレルギー 疑わしい食物のアレルゲンを調べる
負荷(誘発)テスト 食物アレルギー 疑わしい食物のアレルゲンを調べる
運動負荷テスト 気管支ぜん息 運動の限界を調べ、咳こまないか、
発作が起きないか確認する
吸入誘発テスト 気管支ぜん息
アレルギー性鼻炎
気管支ぜん息とアレルギー性鼻炎の
疑わしいアレルゲンを調べる
胸部X線検査 気管支ぜん息 気管支ぜん息以外の肺炎、無気肺、
気胸などの疾患があるかを確認する
副鼻腔X線検査 副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎か
区別をする
抗原誘発テスト アレルギー性結膜炎
アレルギー性鼻炎
気管支ぜん息
食物アレルギー
薬剤アレルギー
アレルギーを再現することによって
アレルゲンを確定する
肺機能検査 気管支ぜん息 肺活量を測定する
テオフィリン
血中濃度測定
気管支ぜん息 血中濃度を調べる

まとめ

アレルギーのテストは症状別に分かれているので、日常生活で何が原因となる可能性があるのかをよく観察をしましょう。そして早めに病院へ行って困っている症状をきちんと伝えましょう。

早期診断と早期治療が重要と考えられています。 アレルゲンが分かれば、自分のアレルゲンに合ったセルフケアも可能になります。アレルギーとのお付き合いは長くなるので、症状が良くなってきても自己判断をしないで、医師と相談を続けていきましょう。