エキノコックスという寄生虫の名前を聞いたことがあるでしょうか?普段の生活ではあまり耳にすることはないかもしれませんが、一度人間に感染すると重い症状を引き起こすことがあります。これからの夏休みシーズンで、エキノコックスに感染しやすいとされる地域へ出掛ける方も多いはずですので、ここでエキノコックス症について正確な知識を身につけましょう。
エキノコックス症ってなに?
エキノコックス症とは、エキノコックスに寄生されることで生じる感染症です。
上でも説明したように、エキノコックスは寄生虫の一種です。別名は包虫といい、全世界に広く分布しています。
感染者は、北海道を中心に分布しています。
また、近年は青森県を始めとした本州各地でも発生が確認されています。
エキノコックスにはどうやって寄生されるの?
エキノコックスはその一生で、様々な動物に寄生します。
ヒツジ、ウシ、ヤギ、ウマなどの草食動物や、それらの動物の肉を捕食したイヌやキツネなどの肉食動物にも寄生することがあります。
人間は、イヌやキツネの糞に含まれているエキノコックスの卵を誤って経口摂取することで感染します。
エキノコックスの卵の大きさはおおよそ0.03mmとされており、肉眼で確認することはできないため、気が付かないうちに口に入ってしまうことがあるのです。
一般的には、イヌを放牧に用いている牧場への訪問や野生のキツネとの接触があった後に感染することが多いとされています。
エキノコックス症になるとどうなるの?
エキノコックスの卵が人間の体に侵入すると、孵化して少しずつ成長していきます。虫
体が小さいうちは特に症状が出ることはありませんが、大きく成長してしまうと身体の様々な場所で症状を引き起こします。
ここではいくつかの代表的なものについて触れておきましょう。
肝症状
肝臓に寄生したエキノコックスが大きくなり肝臓の表面まで押してくるようになると、腹部の右上側に痛みとしこりが生じることがあります。
また、肝臓に寄生したエキノコックスが胆汁を輸送する胆管を圧迫すると黄疸(全身の皮ふが黄色く変色すること)を引き起こします。
重篤化すると、発熱やショック症状をきたして死に至ることもあるので油断はできません。
肺症状
肺もエキノコックスが寄生しやすい臓器の一つです。肺にエキノコックスが寄生すると胸痛をともなった咳や痰などの症状があらわれます。
またこちらも重症化すると喀血や呼吸困難を引き起こして命に関わることがあるので注意が必要です。
脳症状
まれにですが、エキノコックスが脳に入り込んでしまうことがあります。
脳に入ったエキノコックスは正常な脳の組織を圧迫して頭痛や意識障害などを引き起こします。
繰り返しになりますが、感染初期にはこれらの症状は出現しません。一般的には、虫卵の摂取から数年後に症状が出ます。
エキノコックス症の検査法は?

上でも説明したように、エキノコックス症の症状は長い経過の後に出現します。
そのため上記の症状が出現したからといってすぐにエキノコックスが原因であると診断できるケースはまれです。
一般的には上記の症状が出現した際に、CTや超音波などの検査を実行してはじめてエキノコックスが原因として浮上することも多いとされています。
エキノコックス症の治療法は?
エキノコックス症が疑われた場合、患者さんは比較的大きな病院の総合内科や感染症科などで診察されます。
最も一般的で確実な治療は、手術でエキノコックスを取り除く方法です。
手術が行えない患者さんに対しては、抗包虫薬による薬物療法などを行う場合もあります。
まとめ
普段、北海道以外の都市部で生活している人にとってはエキノコックスはあまり接触することのない寄生虫でしょう。
ですが、夏休みなどで北海道などの生息域に出掛ける人も少なくないと思います。
エキノコックスについて少し意識し、不用意に野生動物に触れないようにしてくださいね。