視力低下などの目の症状だけでなく、難聴や発熱、だるさといった様々な症状が全身に出る病気に原田病があります。原田病は一般に眼科疾患として取り扱われますが、実際は全身に及ぶ自己免疫性疾患です。今回は原田病について、原因や症状、治療法を詳しく紹介していきます。

目次

原田病ってどんな病気?

原田病は、メラニン色素を形成する細胞(メラノサイト)が免疫反応によって攻撃される自己免疫性疾患とされています。

本来、免疫細胞は外界から侵入してきた細菌やウイルスなどの異物に対して攻撃を行います。しかし自己免疫性疾患では、免疫細胞が誤って体の中の問題ない細胞を攻撃してしまいます。その結果体に様々な障害が生じます。

自己免疫が生じる原因は明らかになっていません。ただ原田病は日本人を含む東洋人に多く、また白血球の血液型であるHLAとの関わりが報告されています。

メラノサイトは全身の組織に分布していて、特に多い部位として髄膜皮膚毛髪が挙げられます。原田病ではこれらの部位に障害が現れます。

患者さんは女性に多く、好発年齢は30代がピークとなっています。フォークト―小柳―原田病とも呼ばれます。

全身に症状が出る原田病

だるさに悩まされる女性

原田病は目に最も症状が出現しますが、それ以外に、全身に様々な症状が出る病気です。段階や部位などに分けて詳しく紹介します。

原田病の前触れ(前駆症状)

頭痛やめまい、耳鳴り、微熱などの風邪に似た、髄膜炎(脳と脊髄を覆う膜に起きる炎症)の症状が出ます。そして頭皮がピリピリする感覚も出てきます。

初期症状

目では充血、かすみ、ゆがみ、視力低下、耳では難聴めまいが特徴的です。

眼の症状

目の中にメラニンが豊富である、ぶどう膜と呼ばれる部分があり、このぶどう膜の炎症(ぶどう膜炎)によって症状が出現します。ぶどう膜は虹彩毛様体脈絡膜に分けられ、虹彩は水晶体の前に、毛様体は水晶体の周りに、脈絡膜は眼球の後方(眼底)にあり、脈絡膜は網膜を覆っています。

虹彩、毛様体の炎症(虹彩毛様体炎)によって、充血、かすみ、脈絡膜の炎症(脈絡膜炎)によって物がゆがんで見えるようになります。これらの症状の程度は様々で、虹彩毛様体炎による充血、かすみが主で、脈絡膜炎によるゆがみがない場合から、脈絡膜炎によるゆがみが主で、充血はみられないこともあります。初期症状では炎症が強く日ごとに悪化します。

耳の症状

内耳の炎症による感音性難聴耳鳴り、めまいを訴えることがあります。

後から出てくる症状

初期症状は治療によって回復しますが、再発を繰り返したり、炎症がじわじわと持続したりする(遅延型)があります。

眼の症状

初期症状とは異なり、再発や、遅延型では脈絡膜炎によるゆがみがみられることは稀で、ほとんどは虹彩毛様体炎によるかすみと充血です。虹彩と毛様体は水晶体の近くに存在するため、年単位に炎症が起こると、水晶体が混濁する白内障や、視神経が障害される緑内障を合併することがあります。緑内障は虹彩周囲の隅角と毛様体が眼圧を調節しているため、虹彩毛様体炎によって眼圧が上昇することで起きます。

皮膚の症状

皮膚、髪、まつ毛のメラノサイトの炎症が遅延される場合、皮膚の白斑(皮膚の色が白く脱色する)、頭髪やまゆ毛、まつ毛を中心に毛の色素が脱色することがあります。場合によっては脱色より進んで脱毛することもあります。

原田病の治療は

原田病は初期状態では炎症が強く、全身疾患であるため、強力に免疫を抑え、炎症を抑えるために、ステロイドを全身に大量投与(点滴)します。

ステロイドは副作用の多い薬です。起こりうる副作用を予防し、副作用が出現した場合はそれぞれに対処しながら、治療を進めていくため、入院治療が必要です。

再発、遅延がみられる場合は、全身症状は出現せず、多くは虹彩、毛様体で起こるため、治療はステロイド点眼やステロイドの眼球周囲への注射(結膜下注射やテノン下注射)であり、外来治療となります。

まとめ

原田病は前駆症状として頭痛や嘔吐など風邪に似たような症状がみられます。初期症状では炎症が強く、症状は日ごとに悪化し、入院による強力なステロイド点滴治療が必要です。

強力なステロイド治療が行われ、回復されたにも関わらず、3割程度で再発、遅延がみられることがあり、また、白内障、緑内障などの合併症が出現することもあるため、経過観察が必要です。