充血は、多くの方が経験したことのある症状かと思います。珍しくもなく、多くは無治療でも治ることが多いです。しかし、充血は重大な疾患のサインとなる場合もあります。今回は充血について紹介します。

目次

充血の種類

充血は白目を通る血管が何らかの原因によって拡張しているために起こります。

一口に充血と言っても、充血している場所によって「結膜充血」と「毛様充血」の2種類に分けられます。

結膜充血

瞼(まぶた)の裏側から白目を覆っている透明の膜を結膜と言い、瞼と眼球をつなぐ役割を果たしています。白目を覆う部分を眼球結膜、瞼の裏を覆う部分を眼瞼(がんけん)結膜と呼び、結膜が充血する部分は白目のうち、角膜の周りよりも遠い部分と眼瞼結膜に見られます。

毛様充血

眼球の一番外側に白目の部分である強膜と透明の部分(黒眼)の角膜があり、これらが眼球を守っています。毛様充血はこの強膜の表層の血管の拡張で起こり、充血は角膜の周囲に見られます。結膜が眼球自体ではなく、眼球を覆う部分であるのに対して、強膜は眼球の一部分であり、眼球のうち強膜と接触する虹彩、毛様体、角膜の炎症が原因で起こります。

充血と間違えやすい“結膜下出血”

充血と間違えやすいものに、白目が真っ赤になる結膜下出血があります。結膜の血管が破れて結膜の下に出血が溜まった状態で、充血とは異なります。目立った自覚症状はないことが多いです。咳やくしゃみなどふとしたことで起こるときは特に問題なく、自然と出血が吸収されるのを待ちましょう。

ただ、高血圧糖尿病、血液の病気など疾患が原因で起こるケースもあります。結膜下出血を繰り返すようであれば病院を受診しましょう。

充血の原因

充血である白目の血管が拡張する原因として、以下で述べる結膜炎、上強膜炎、強膜炎といった白目の血管自体が主要疾患である場合と、他の部位の疾患が主要原因で、それが白目の血管に波及されて起こる場合があります。

結膜炎

結膜炎はその名の通り、結膜に炎症が起きた状態です。充血の原因として最も多く見られるものです。大きくアレルギー性結膜炎などの非感染性結膜炎細菌性結膜炎やウイルス性結膜炎などの感染性結膜炎の2つに分けられます。

結膜炎のうち、ウイルス性結膜炎は注意が必要です。ウイルス性結膜炎として、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルスが有名です。アデノウイルス結膜炎は「流行性角結膜炎」、「はやり目」、「プール熱」とも呼ばれ、流行する可能性が高く、日本では学校への登校は禁止されています。

また、子供に比べて、成人は治りにくく、結膜だけではなく角膜(黒目)にも侵入して角膜が混濁し、完治までに数か月かかることがあります。ヘルペスウイルスと帯状疱疹ウイルスによる結膜炎も角膜に侵入することがあります。

上強膜炎、強膜炎

強膜に炎症が起きている状態です。症状は充血や異物感、眼の奥の痛みなどです。

上強膜炎が強膜の表層のみの炎症であるのに対して、強膜炎ではさらに深部まで炎症が起こり、従って、強膜炎の方が、痛みなどの症状が強く、治療も困難になりがちです。特に強膜炎では強膜の炎症が長期化すると強膜が菲薄化(薄くなって衰えること)し、失明に至ることがあります。従って、早期治療が必要です。

原因はぶどう膜炎と同様、自己免疫疾患や感染症などが考えられます。

詳しくは「目が充血する上強膜炎・強膜炎とは?」をご覧ください。

ぶどう膜炎

虹彩と毛様体、脈絡膜(網膜と強膜の間にある膜)を総じてぶどう膜といい、そこに炎症が起こるものがぶどう膜炎です。

ぶどう膜のうち炎症部位が眼球の前方の虹彩、毛様体のみの場合は、前部ぶどう膜炎、あるいは虹彩毛様体炎(虹彩炎)とも呼び、毛様充血が起こります。症状は、充血以外に、眩しさ、視力低下、眼痛などがあります。

虹彩毛様体炎は再発することがしばしばあり、慢性状態になると、続発性の白内障が起こることがあります。また、発作時には眼圧上昇が起こっていることがあります。従って、発作時にはすぐに眼科を受診して治療を行い、治療後も経過観察を行うことが大切です。

白内障は手術によって治すことはできますが、ぶどう膜炎による続発性白内障では通常の白内障に比べて、手術が困難になります。

ぶどう膜炎は感染症や自己免疫疾患などによって引き起こされます。詳しくは「この症状は目の疲れではない?失明の恐れもある、ぶどう膜炎の原因と症状」をご覧ください。

内頚動脈海綿上脈洞廔(ないけいどうみゃくかいめんじょうみゃくどうろう)

海綿静脈廔とは眼球からの静脈が流れゆく部分で、この海綿静脈廔の中を内頚動脈が通っています。内頚動脈海綿静脈洞廔では内頚動脈が海綿静脈洞内で出血し、静脈圧が上昇し、うっ血し、さらには逆流します。

典型的に現れる症状として、眼球突出、拍動性雑音、結膜充血の三つがあります。失明や、脳出血による重篤な後遺症を引き起こすことがあります。

緑内障発作

緑内障は眼底の視神経が障害され、視野障害が起こる疾患です。

緑内障発作では急激に眼圧が上昇し、視野障害が急激に進行する可能性があります。眼圧は目の中の水(房水)の量を変えることによって、制御されています。房水は毛様体から入り、黒目(角膜)の周囲の虹彩の根本から出るようになっているのですが、緑内障発作では、もともと房水の出口が狭く、完全に閉塞することによって眼圧が上昇します。

症状として、頭痛、吐き気、霧視などがありますが、毛様充血も見られます。緑内障発作時にはその症状から必ずしも眼科ではなく、脳神経外科など他科を受診して、転科で眼科を受診することがあります。緑内障発作は早期治療が大切です。

角膜感染症

角膜(黒目)は強膜(白目)に隣接し、角膜の炎症が充血を引き起こします。角膜感染症は、特に、コンタクト装用者で正しくケアがなされていないことに起こります。急激に進行し、角膜穿孔を引き起こし、失明に至ることがあり、早期治療が大切です。

症状として、充血、眼痛、視力低下がありますが、充血は発症早期から起こります。

詳しくは「角膜の傷をきっかけに発症する角膜感染症。どんな種類があるの?」をご覧ください。

まとめ

充血の原因として、最も多いのは結膜炎ですが、それ以外にも頻度は高くはありませんが、失明や脳梗塞などを引き起こす疾患があり、多くは早期治療が大切です。充血の程度がそれまでとは異なったり、充血に霧視、眼痛など他の症状が出現したりする場合には早期に眼科を受診して下さい。