視神経は目から得た情報を脳に伝える役割を果たしています。「視神経炎」はこの視神経に炎症が起こる病気で、突然視力が落ちる・視野が狭くなるなどの症状がみられます。目の情報を脳に伝える大事な部分ですから、出来る限り早く治療を開始したい病気です。

今回は視神経炎について症状や原因、治療法などを説明します。

目次

視神経炎の症状は

「視神経炎」とは、視神経に炎症が起こる病気です。症状としては、次のようなものがみられます。

  • 数日~1週間程度で急に目が見えづらくなる(急な視力悪化)
  • 視野が欠ける(視野異常)
  • 周囲の人と色が異なって見える(色覚異常)
  • 異常に眩しさを感じる(羞明)

その他に、目を動かしたときに目の痛みを感じることがあります。ただし、痛み方は患者さんによりさまざまで、他の症状があらわれる頃には痛みがひいていることもあります。目の痛みは7割程度の患者さんにみられます(Medical Tribuneより)。

視神経炎3つの原因

診察

特発性視神経炎

特発性視神経炎は、視神経の周りを取り囲む組織(髄鞘)に対する炎症により「髄鞘」が障害される病気です。原因として、自己免疫の関与(免疫系が自分の正常細胞にまで過剰に反応し攻撃してしまう)やウイルス感染の関与などが考えられていますが、(原因は)不明です。

多発性硬化症の視神経炎

多発性硬化症の症状のひとつとして起こる視神経炎です。

多発性硬化症は、大脳、小脳、脊髄、視神経といった中枢神経に炎症が起こる病気です。炎症の起こる場所によって症状はさまざまです。目以外にも、痛み・温度などの感覚異常、歩行時のふらつき、排尿障害などの症状があります。

視神経脊髄炎

視神経脊髄炎の症状のひとつとして起こる視神経炎です。

視神経脊髄炎は、炎症は視神経と脊髄を中心に起こります。症状は多発性硬化症によるものと似ており、発症初期の区別は困難な場合もあります。視神経脊髄炎のうち、抗アクアポリン4(AQP4)に対する自己抗体が陽性な場合は抗AQP4抗体陽性視神経炎と呼びますが、視神経に対する予後が不良であることが分かってきています。

治療はまずステロイドバルス治療を行います。AQP4抗体が陽性の患者さんに対しては、ステロイドの治療に改善が見られない場合に血漿交換法を行うことがあります。これは、抗AQP抗体を含む血漿(血液の成分)を、新しい血漿と交換する治療です。また、血漿交換を行った後は、新たな抗AQP抗体が作られるのを防ぐためにステロイドや免疫抑制剤による治療を行います。

治療について

症状が重症な特発性視神経炎や多発性硬化症・視神経脊髄炎の視神経炎では、ステロイドで治療します。特に、全身に症状がでている場合などには速やかに治療を開始します。ステロイドパルス療法といって、投薬期間と休薬期間をインターバルで繰り返す方法でステロイドを投薬します。特発性視神経炎では薬物治療を行わくても改善する場合もあります。また、高齢者などステロイド治療の副作用に特に注意が必要な患者さんでは、ステロイドによる治療を慎重に判断することもあります。

なお、多発性硬化症・視神経脊髄炎の治療については、次の記事もご覧ください。

まとめ

視神経が炎症を起こし障害されると、見え方に異常がみられたり、視力が低下したりします。原因は様々ですが、早めに治療が必要な場合もあります。まずは目に症状が出たら何が原因か把握するためにも早めに眼科を受診しましょう。