首が腫れてしまうという症状には様々な原因があり、その原因は腫れる部分によっても異なります。ここでは、首が腫れたときの原因として考えられる疾患について解説します。

目次

耳の下から首にかけて腫れている場合

リンパ節炎

リンパ節が炎症を起こして腫れてしまうことをいい、頸部のリンパ節の疾患の代表的なものともいえます。リンパ節の大きさは正常であれば1cm以下であり、触知することは難しいのですが、リンパ節炎となるとリンパ節を触ることができます。

一般的に数日のうちに腫れて痛みを伴うものを急性リンパ節炎といいます。主に細菌やウイルスの感染が原因となるため、抗菌薬や消炎鎮痛薬で治療を行うと1~2週間で快方に向かいます。

一方で、数週間から数か月かけて腫れていて痛みがないもの、腫脹の大きさが3cmを超えているものでは悪性リンパ腫も疑われるため、生検などの精密検査が行われます。

耳下腺腫瘍

耳の下にある唾液腺が腫れることによって起こる病気で、唾液腺腫瘍ともいわれます。悪性である場合は顔面神経が麻痺したり強い痛みを伴ったりすることもあります。良性の場合には多形腺腫(たけいせんしゅ)という腫瘍が多いです。

悪性・良性いずれの場合も、手術により摘出します。悪性の場合には、放射線治療・化学療法を組み合わせることもあります。

耳下腺の炎症

耳下腺の炎症によって耳から首にかけての部位が腫れてしまうもので、細菌性とウイルス性に分類されます。

代表的なものにはムンプスウイルスに感染することで発症する流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)が挙げられます。

抗菌薬の使用や安静、局所冷却によって治療をします。

頸部膿疱(けいぶのうほう)

頸部に袋状の組織ができ、その中に液体成分が溜ってしまった状態です。首から耳にかけての部分だけでなく、首の前側にできることもあります。通常は腫れるのみでやわらかい腫瘍ですが、炎症を起こすと痛みが出ることがあります。

ほとんどが先天性で、生まれつき袋がありそこに液体成分が溜るものと考えられていますが、風邪などによる上気道感染によって液体成分が溜り、膿疱となることもあります。

痛みを伴う場合、膿疱が大きい場合は手術をして摘出しますが、部位や袋が薄い場合には薬剤を注入して治療をすることもあります。

放置すると稀にですが癌化することもあります。悪性腫瘍によるものではないかを判別するために手術を行うことが多いようです。

首の前側が腫れている場合

キリン

甲状腺腫瘍

のどぼとけ(甲状軟骨)のすぐ下にある甲状腺の腫瘍です。通常、甲状腺は皮膚の上から触ることはできませんが、甲状腺腫瘍は首の前側に比較的硬い腫瘍を触れることができます。腫瘍が大きくなると目で見ただけでも腫瘍の位置を確認することができます。腫れ以外の自覚症状は見られません

甲状腺腫瘍は悪性と良性があります。どちらの場合も治療法は手術による摘出ですが、良性の甲状腺腫瘍の場合、腫瘍が小さく、痛みなどの症状が無ければ経過観察とすることもあります。

唾石症

唾液腺の中などに石ができることによって起こる病気です。石は砂粒程度のこともあれば、数cmにまで及ぶものもあります。唾石ができる原因は唾液の性状変化や、導管の炎症、唾液が停滞していることなどが考えられます。

食べ物を食べようとしたり、食べたりすると顎の下が腫れ、痛みを伴います。小さなものは自然に唾石が出てくることがありますが、大きなものの場合は切開等により唾石を取り出します。

甲状腺機能亢進症

別名バセドウ病とも呼ばれ、女性に多く診られる疾患です。TSH受容体抗体、甲状腺刺激抗体が甲状腺を刺激することで甲状腺の機能が活発となり、甲状腺ホルモンの分泌が盛んになっている状態です。

甲状腺のある首の前面が腫れる他、食べても痩せる、疲れやすい、眠れない、下痢が続くなどの症状があります。

治療は薬物療法、手術療法の他に、ラジオアイソトープ療法といってラジオアイソトープと呼ばれる放射性物質をつめたカプセルを内服するという方法があります。

まとめ

首に腫れものができる疾患は様々ありますが、ほぼすべてに共通しているのが普段は触れない部分が触れるようになるということです。

良性のものが多いものの、悪性の可能性もゼロではないため、首を触ってみて腫れものに触れるというときには医療機関に相談してみることがお勧めです。