みなさんは高尿酸血症という病気をご存知ですか。一般的には痛風という名前のほうが馴染みがあるかもしれません。一般名があることからもわかる通り、痛風は比較的身近な病気ですが、その合併症である痛風腎については知らない方も多いでしょう。今回はそんな痛風腎という病気について、解説していきます。
痛風腎とは?その症状
痛風腎とは高尿酸血症(痛風)によってひきおこされる合併症の一つで、痛風により腎機能が低下してしまっている状態のことをいいます。尿酸は普段尿として体の外に排出されていますが、腎機能が低下すると尿酸を排泄する機能も落ち、さらに尿酸が溜まって腎機能も落ち続ける、という悪循環に陥ります。
腎機能の低下自体は緩やかで、タンパク尿や血尿といった症状が出ることも少なく、多くの場合は無症状のまま進行していきます。そのせいで病気に気がつかず、完全に腎臓の機能が失われてしまう慢性腎不全に移行してしまうこともあります。
慢性腎不全に移行してしまった場合もあります。慢性人工透析になると、むくみや疲れやすさ、息切れ、皮膚の痒みなどの尿毒症と呼ばれる症状があらわれ、最終的には十分に尿を作ることができなくなり、人工透析が必要となります。
痛風腎の起こるメカニズム
高尿酸血症は尿酸が多く作られすぎてしまう、もしくは尿酸をうまく体の外に排出できないことが原因で、血液中の尿酸の値が正常よりも高くなってしまう病気です。血液には尿酸がほとんど溶けられず、血液の尿酸の濃度が高くなると、その多くが結晶となって体のあちこちに溜まってしまいます。
これが関節に溜まると関節が激しく痛み、痛風としての代表的な症状である痛風発作を引き起こします。痛風腎の場合では腎臓に尿酸の結晶が溜まってしまうことで、腎機能を低下させていきます。
腎臓は、血液をろ過して実際に尿を作る部分(実質)と、尿を作る部分を支える組織がつまっている部分(間質)とに分かれるのですが、痛風腎の場合は間質の方に尿酸の結晶が溜まってしまうことで、腎臓に炎症を引き起こします(慢性間質性腎炎)。
痛風腎の治療
痛風腎の治療では、元となっている高尿酸血症のコントロールを行います。高尿酸血症のコントロールは主に生活習慣の改善と薬物療法によって行われます。
生活習慣の改善
尿酸の元となるプリン体を多く含む食物やアルコール類の摂取を控え、水分を多めにとって尿が多く作られるようにし、尿酸の排泄を促すことなどが指導されます。また、肥満も高尿酸血症のリスクを上げるため、なるべく油を控え、低カロリーな食事をとることも促されます。
薬物療法
体の中で原料となるプリン体から尿酸が作られるのを抑える薬や、尿酸を尿によって排泄しやすくする薬が用いられ、血中の尿酸を減らすことが治療の目的となります。
痛風腎を予防する
予防についても治療と同様で、高尿酸血症にならないために、原因となるプリン体を摂取しすぎないことが大切です。プリン体を特に多く含んでいるのは、アンキモ、イサキの白子、レバーなどの臓物系の食材です。これらの食品は、食べすぎには十分注意しましょう。
まとめ
痛風腎とは、痛風によって引き起こされ、腎臓の機能低下によって尿がうまく作れなくなってしまう病気のことです。
症状はほとんど現れないことが多く、何らかの異常を感じたときにはすでに人工透析が必要なほど病状が進んでいることも珍しくありません。
治療・予防のためには、規則正しくバランスのよい食事が重要です。特に、プリン体の摂取には注意しましょう。