みなさんは膵胆管合流異常症(すいたんかんごうりゅういじょうしょう)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。先天性の形成異常のひとつで、胆道がん・膵臓がんの大きなリスクとなる病気です。
今回はそんな膵胆管合流異常症にいち早く気づくため、病気の内容について詳しくみていきましょう。

目次

膵胆管合流異常症とは

膵胆管合流異常症について説明する前に、正常な臓器の構造について説明しましょう。

正常な構造では、膵臓(すいぞう)からの管である膵管(すいかん)と、肝臓から出ている管である胆管(たんかん)が、十二指腸(胃に繋がる小腸の一部分)へ開口する部分で合流しています。

その開口部から、肝臓、膵臓それぞれの作り出す消化液、つまり胆汁(たんじゅう)と膵液(すいえき)が流れ出して消化を助けているわけです。

ところが膵胆管合流異常症ではその名前の通り、膵管と胆管が合流する場所に先天的な異常があるため、消化液の逆流など様々な問題が生じやすい状態となっています。

膵胆管合流異常症の症状

膵胆管合流異常症自体には症状が伴わないことがほとんどです。

多くの場合は胆道拡張症という病気を合併しています。胆道拡張症とは、先天的に胆道(肝臓から小腸につながる胆汁の通り道)が拡張している状態です。

症状としては、

といったものがみられる場合があります。しかし、これらの症状は膵胆管合流異常症、胆道拡張症に特有の症状というわけではありません。症状が出たとしても、病気に気が付きにくい、発見する機会がなかなか得られない病気であるといえます。

膵胆管合流異常症の合併症

膵胆管合流異常症では、先天的に合併する胆道拡張症に加えて、胆汁や膵液の逆流によって、後から引き起こされる合併症もいくつか存在します。

胆管炎・膵管炎

まず起こり得るのが胆管炎膵炎です。胆汁や膵液は本来消化液なので、逆流した場合その先の管や臓器に影響を与えて、炎症を引き起こしてしまうことがあります。

そうなってしまうと、腹痛嘔吐発熱などが起こります。多くはないものの、悪化してしまった場合には死亡することも考えられるため注意が必要です。

胆道がん

もうひとつ考えるべきなのが、胆道がんです。上記のように消化液の逆流によって何度も炎症を繰り返していると、がん化の原因となることが知られており、通常よりも若年から発がんするリスクが増大していくことになります。

胆道がんは発症してもなかなか症状が現れず、気づいたときには手遅れという場合も少なくないので、かなり恐ろしい状態といえるでしょう。

膵胆管合流異常症の治療法、予後

膵臓
では、膵胆管合流異常症はどのように治療していくのでしょうか。

基本的に外科的手術によって治療されます。分流手術と呼ばれる方法で、合流に異常がある場所を、人工的に分け隔てることで逆流を起こらないようにするのです。

また、胆道拡張症を合併している場合は、拡張している部分からがんができてしまう例も報告されているため、あらかじめこういった部分を切除する手術も同時に行われます。

早いうちに治療が行われれば比較的予後は良いため早期発見早期治療が大切な病気といえるでしょう。

まとめ

膵胆管合流異常症とは、膵管と胆管の先天的な合流異常により、消化液の逆流が起こり、胆管炎膵炎、あるいは胆道がんなどを引き起こす病気で、適切な治療をしなければ死に至ることもあります。

それ自体に症状はないものの、合併症によっては腹痛黄疸嘔吐発熱が見られることもあり、外科的手術によって治療されることで比較的よい予後を迎えることができるのです。

一方で、現在はまだ早期発見のための検査などが普及しているわけではありません。早期発見・治療ができるような環境の整備が課題となっています。