予防接種というと一般的には、「子供の頃に受ける注射」というイメージがあるかもしれません。
ですが、感染症は環境や自身の健康状態、年齢などによってかかりやすくなる病原体(細菌やウイルスなど)が変わるため、状況に応じてその都度適切な予防接種を受けることが理想的であるとされています。
ここでは、大人になってから受けた方が良い予防接種について説明します。
効果が落ちやすいもの
ワクチンの効果の持続力には、種類によって差がみられます。
ワクチンは大きく、生ワクチンと不活化ワクチンとに分けることができます。
- 生ワクチン:毒性を弱めた病原体を生きたままワクチンにしたもの
- 不活化ワクチン:病原体自体は殺して毒性をなくし、免疫をつけるのに必要な成分のみを抽出したもの
免疫の持続力には個人差がありますが、一般的に不活化ワクチンのほうが生ワクチンよりも効果が低下しやすいとされています。
不活化ワクチンにはインフルエンザワクチンなどがあります。
そのほか麻疹、風疹、日本脳炎、百日咳は、子供の頃に予防接種を受けていても免疫が弱まっている可能性があります。任意接種にはなりますが、大人になってから追加で受けても良いでしょう。
該当の予防接種
- 不活化ワクチン
- MRワクチン(麻疹、風疹)
- 日本脳炎ワクチン
- DPT-IPV,IPVワクチン(百日咳)
大人になってからかかると重症になるもの
水ぼうそうやおたふく風邪は、子供の頃より、大人になってからかかることで重症になりやすいです。
今までにかかったことがなく、予防接種も受けたことがない場合には大人になってからでも予防接種を受けると良いでしょう。
また、肺炎球菌は高齢者が日常生活で発症する肺炎の原因菌として最も多いとされている細菌です。
体力が落ちている高齢者が肺炎になると状況によっては死に至る危険性もあり、高齢者にとって肺炎球菌は、非常にやっかいな病原体だとみなされています。
このため、肺炎球菌ワクチンは平成26年(2014年)10月より定期接種の一つに追加され、多くの自治体で接種に対して経済的な補助が受けられるようになりました。
なお、60歳以上の方は定期接種の対象者である可能性があります。病歴やこれまでのワクチン接種歴が考慮されますので、自分が対象者に含まれるかどうかを自治体などに確認するようにしましょう。
該当の予防接種
受けていない可能性のあるもの
子供の頃に受けていない可能性があるワクチンがある方は、確認の上で医師に相談してください。
風疹ワクチンには特に注意
風疹ワクチンは世代によっては一度のみ、また全く接種していない人が一定数存在します。
これらの人たちは、風疹への免疫が不十分になっている恐れがあります。
風疹で最も恐ろしいのは、妊娠初期に感染することで生じる先天性風疹症候群(CRS)です。
これは胎児に心臓病、難聴、白内障などの疾患をもたらします。
妊娠を考える女性、またその家族は風疹に対する免疫をチェックし、必要に応じてしっかり予防接種を受けるとよいでしょう。
なお、妊娠期間中は風疹ワクチンを接種することはできませんので注意してください。
海外に行く時
上記以外に大人で予防接種が必要になるときとして、海外渡航があります。
日本では発生が稀な感染症でも、発展途上国に行くと当たり前のように流行しているケースは多々あります。
また、渡航先によっては定められた予防接種を受けた証明なしにはビザが発給されない国もあります。
特に東南アジアやアフリカ、南米諸国を渡航する際は、短期間の滞在でもワクチン接種を検討しなければならない場合もあります。
自身で安易に判断せず、渡航先の伝染病流行状況やビザの制度などを十分に確認するようにしましょう。
東京や大阪などの都市部には海外渡航時の予防接種に明るいトラベラーズクリニックも数多くあります。そちらに相談するのもよいでしょう。
まとめ
大人になっても予防接種を受けるケースはたくさんあります。
予防接種には自身の感染を予防するという目的だけではなく、社会に感染症を蔓延させないという意味もあります。
必要な予防接種を適切なタイミングで受けられるように意識できていると良いでしょう。