ループス腎炎は、全身性エリテマトーデス(SLE)の初発症状の一つで予後を決定する重要な腎臓の合併症です。
SLEの患者さんは日本全国に約10万人いると考えられています(難病情報センター)。比較的珍しい病気のため、「ループス腎炎」という名前もあまり馴染みがないかもしれません。
しかし、ループス腎炎はこの全身性エリテマトーデスにおいては、生命に関わるとても重要な症状のひとつです。どのような症状なのでしょうか?詳しく解説していきます。

目次

ループス腎炎の症状

進行の程度によりさまざまな症状が起こります。初期のうちは、検診でしかわからないような血尿蛋白尿が起こることが多いですが、浮腫(むくみ)などの自覚症状を伴わないのが特徴です。進行するとネフローゼ症候群腎不全などの重い症状が現れることもあります。

無症候期

初期の段階では自覚症状がほとんどなく気が付きにくいことがあります。早めに適切な処置を施すためにも、定期検診が重要になってきます。

もし腎臓の機能に異常があるときは、目に見える変化はなくとも尿に血や蛋白が混ざってくることがあり、それによって病気の存在に気が付くことができるのです。

尿蛋白が出ていたりや尿潜血が陽性となったり、尿沈渣(にょうちんさ)が陽性などの場合は、体に不調がないからといって放置せず、さらに詳しい検査を受けるようにします。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、尿の中に大量のタンパク質が漏れ出してしまう状態で、主な症状は全身のむくみです。

自覚症状はそれほど重くありませんが、放置してしまうと、最終的には腎不全となってしまうので気をつけなければなりません。

腎不全

腎不全とはその名の通り腎臓が機能不全に陥ってしまった状態です。最初は疲れやすさ息切れむくみなどの症状から始まりますが、進行すると自力で毒素を体の外に出せなくなってしまい、人工透析腎移植が必要となります。

ループス腎炎の6分類

ループス腎炎が疑われる場合は腎生検(じんせいけん)といって、背中から針を刺して腎臓を少しとり、それを顕微鏡でチェックする検査を行います。

その結果によってループス腎炎を6つの分類に分けることができます。この分類により、病気の予後治療法に違いが出てくるのです。

クラス Ⅰ:微小メサンギウムループス腎炎

組織はほぼ正常ですが、メサンギウム細胞という細胞に免疫沈着物という炎症の原因物質がたまっているのがみられます。

クラス Ⅱ:メサンギウム増殖性ループス腎炎

メサンギウム細胞増殖拡大がみられ、免疫沈着物もみられます。

クラス Ⅲ:巣状ループス腎炎

腎臓全体に点々と存在する糸球体という部分の50%未満に病変が存在します。

クラス Ⅳ:びまん性ループス腎炎

糸球体50%以上の部分に病変が存在します。約半数にネフローゼがみられ腎不全に移行しやすいです。

クラス Ⅴ:膜性ループス腎炎

腎臓の上皮下(じょうひか)という部分に免疫沈着物がみられます。多くはネフローゼを呈しますが腎機能は比較的保たれます。

クラス Ⅵ:進行した硬化性ループス腎炎

糸球体90%以上が硬化してしまい、腎臓が機能しなくなります。

ループス腎炎の治療

治療

ループス腎炎の治療は、おもにステロイド及び免疫抑制剤の投与が行われます。病気の重症度によって薬剤量が違います。そのほかに血圧の管理などの合併症の治療も行われます。

ステロイドと免疫抑制剤は体の免疫異常を抑えて整えることで体がこれ以上腎臓を攻撃しないようにし、病気の進行を遅らせます

血圧の管理なども、腎臓に負荷がかからないように調整することで、病気が進まないようにすることが目的となっています。

先ほどの6分類に当てはめて行われる治療をまとめると、以下のようになります。

  • クラス Ⅰ:ステロイド及び免疫抑制剤の使用はされず、合併症の治療がメインとなります。
  • クラス Ⅱ:ステロイド及び免疫抑制剤の使用はされず、合併症の治療がメインとなります。
  • クラス Ⅲ:大量のステロイドと免疫抑制剤の投与が必要になります。
  • クラス Ⅳ:大量のステロイドと免疫抑制剤の投与が必要になります。
  • クラス Ⅴ:中程度のステロイド及び免疫抑制剤の使用が行われます。
  • クラス Ⅵ:有効な免疫抑制剤が少なく、腎移植を行うことも検討されます。

まとめ

ループス腎炎というのは全身性エリテマトーデス(SLE)に伴って起こる腎障害です。SLEにおいて特に重要な合併症とされ、腎不全の恐れなどがあるため早めに適切な処置が必要となります。

早期発見のため、定期的な検査で尿蛋白や尿潜血などの徴候を見逃さないこと、皮疹、発熱、疲れ・むくみ・だるさなどの気になる症状があればすぐに医師に相談することが重要です。