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患者さんとご家族ができることについて

――患者さん自身が情報を次の歯科医に伝えることはできそうでしょうか?

もちろん、そういうこともできると思います。
ただ脳卒中は意識障害がある人も多いので、自分でうまく言えないといった問題がしばしばあります。その場合にはご家族が代わりに伝えられれば良いと思います。

自分の口の状態を知っておいて、それを転院先でも伝えられるのであれば一番いいのではないでしょうか。

口のことに関して言うと、知っておくべきなのは歯科の専門職(歯科医、歯科衛生士)による継続的な管理が必要かどうかだけで良いと思います。急性期で行う治療は、応急処置であることも多いので、回復期に行っても歯の治療などの歯科との関わりが必要かどうかは、急性期病院に入院中に聞いておくと良いかもしれません。

脳卒中に関して言うと必ず口の機能が障害されるので、口のリハビリが必要になることが多いです。
その時に自分の歯の状態や口のことを患者さん自身、もしくはご家族が知っておくことも、すごく大事だと思います。必要に応じて、転院先の歯科への紹介状を書いてもらうこともできると思います。

――自宅に戻った後の対応としては、どのようにすれば良いでしょうか。

脳卒中に関して言うと、決められた入院期間中にうまくリハビリできなかったけれど、本当はまだ口から食べれるようになる人もいるわけです。

家に帰った後も、そこから良くなる可能性もあるし、年齢とともに悪くなることもあるので、定期的な評価はした方が良いと思います。

食事は毎日のことですから、口から食べる力と実際の食事とのバランスがとれているか、まずご家族が注意してみてあげることも大事だと思います。その上で、必要があれば専門家に依頼するのが良いでしょう。

――ご家族が、食事方法があっていないことに気付くためには、どのようなことに気を付けるべきですか?

患者さんが食べているところを見てあげて、食べるのが大変そうだなとか、逆にもっと食べられそうだなとか、時間がかかりすぎているなとか、そういう時は、きちんとした評価を受けることが大事だと思います。

たとえば頻回にむせるのであれば、食べているものと食べる力のバランスが合ってないと思います。
バランスが悪いと、食事に1時間くらいかかることもありますが、食事というのは長くても30分~40分で普通の人は食べられるものです。1時間以上かかると介護の時間も2倍になるので、介護もすごく大変になります。

そこを、評価を受けることによって「こういう風に食事の介護した方がいいよ」というアドバイスを受けることもできますし、介護そのものも楽になるのではと思います。

一番大切なことは その人の食べる力に適した食事をしてあげることだと思います。
食事方法があっていないと、患者さんにとっても負担だし、介護する側にとっても負担になってしまうので。
食べることは本当は楽しいことのはずなのに、それがストレスになってしまうんですよ。

治療が終わっても、療養生活はずっと続いていきます。
口の機能は生活にすごく密着しているので、ストレスをなくすためにも、食べる力がどのくらいあるのかの評価が忘れられないことが大事です。

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