炎症性腸疾患という病名を知っている人は少ないと思いますが、若い人に多く、現在増加中の難病です。炎症性腸疾患に含まれる3つの病気について、症状や病気になりやすい人を説明します。

目次

炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)とクローン病(Crohn’s disease; CD) 、腸管ベーチェット病など、原因不明で、なおかつ慢性に腸の炎症状態が続く病気のことを指します。いずれも免疫が過剰に活発になり、自分の腸を攻撃してしまうために腸の炎症が長く続く病気です。

ほとんどの炎症性腸疾患は国の難病に指定されていますが、現在増加傾向にあり、稀な病気ではなくなってきています。

潰瘍性大腸炎

腹痛や便に血が混じる血便、油のような分泌物が混じってねっとりした粘液便が初期症状です。進行すると夜間の下痢腹痛、発熱、食欲不振の症状が出ます。

大腸のうち直腸(大腸の中で肛門に近い部分)から炎症が広がり、大腸の大部分を占める結腸と呼ばれる部分まで炎症が到達する場合があります。

一方で、直腸のみの炎症だと血便だけの症状で止まるので痔と勘違いする人もいます。

発病率のピークは20代ですが、若年者から高齢者まで発病の可能性があります(難病情報センターより)。

クローン病

腹痛、下痢、発熱、体がだるい感じ、食欲がない、体重減少といった風邪のような症状が出ます。また人によっては下痢などがなく、慢性的な発熱や繰り返す痔に悩まされる場合もあります。

重度の場合、腸が狭くなったり詰まったりし、嘔吐や腹痛、さらに腸の壁に穴があいて手術が必要になる人もいます。

10代~20代の若年者に好発し、特に男性は女性より2倍多くみられます(難病情報センターより)。また動物性脂肪や蛋白質摂取の多い人、清潔すぎる環境、生活水準の高い人にクローン病の発症が多くみられます。

腸管ベーチェット病

ベーチェット病は、下記の4つを主症状とする病気です。

  1. 口の中に浅めの潰瘍ができる
  2. 性器に潰瘍ができる
  3. 赤い凸状の発疹が出る
  4. 眼の痛みや充血、光に対する不快感

副症状として腸で潰瘍ができたときに腸管ベーチェット病、腸管型ベーチェット病、消化管ベーチェット病といいます(潰瘍とは、粘膜の一部が深く傷ついている、えぐられている状態をさします)。

腸管ベーチェット病では腹痛、下痢、下血の症状がみられます。またベーチェット病もクローン病と同様に回盲部(右下腹部)に痛みがあらわれ、しばしばクローン病との鑑別が難しいときもあり、全身症状をみて総合的に判断されます。

男女差はなく、30代前半をピークに20~40代で多い病気です(難病情報センターより)。男性の方が重症化しやすい傾向にあります。

日本では北海道や東北、世界的にはトルコに多い病気ですが、トルコからドイツへの移民では発症率が下がることから、遺伝と環境の両方に原因があると考えられています。また、ベーチェット病を発症しやすい遺伝子を持った人が虫歯や感染病に罹患するとベーチェット病を発症するといわれています。

まとめ

炎症性腸疾患は未解明な部分が多く、症状が良くなったり悪くなったり消失したりを繰り返します。定期的な検査、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスの発散で病態の悪化を防ぐことが生活の質(QOL)の向上につながります。

炎症性腸疾患は、診断と定期的な治療が必須となる疾患です。未だに原因は不明ですが、治療は劇的に変化してきています。専門とする医師に、しっかりと診てもらうようにしましょう。