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「遊び」を通じて感情を表出する

―CLSのお仕事の一つに「遊び」があるといいますが、お子さんたちとは、どういった遊びをされるのですか?

CLSの遊びは、発達段階に合わせて感情やストレスの表出や発散を促し、浄化することを大切にしています。

子どもたちの体調やストレスの具合、治療の進み具合に合わせて、その日提示する素材を選んでいます。また、子どもたちが主体的に選ぶことができるよう、遊びをいくつか提示します。そして、純粋に遊ぶことを楽しめるような声かけやかかわりを心がけています。

例えば、子どもがいらいらしていると判断したときは粘土や水・お湯遊び、シェービングフォームや絵の具を使ったりします。シェービングフォームと絵の具を混ぜて画用紙にぴゅっと出すと、乾いたときにモコモコするんですよ。絵を描くというよりは、ぐちゃぐちゃした感触を感じたりバッとぶちまけたりもします。そういった感覚を刺激する遊びも多いですね。子どもたちの好きなようにやってもらっています。

年長の子たちの場合は、ただそばにいることも多いです。ずっと世間話をしたり、漫画や映画を一緒に観たりすることもあります。医師や看護師に許可を得て、一緒に少し病棟の外に出て気分転換をすることもあります。

CLSの遊びには「このときはこの遊び」と確立したものはあまりありません。そのため、CLSによって遊び方に特徴が出るかもしれませんね。私はどちらかというと感覚系の遊びが多いですし、パペットが得意なCLSもいればボードゲームをよく使うCLSもいます。その子の好みや性格などに加えて、診療科や入院期間、手術後などの状況によっても発散の方法が変わってくるので、日常的なもので遊ぶこともあれば、医療物品で遊ぶこともあるというわけです。

 

―話を聞く、というところでは、世間話以外にお子さんたちの相談に答えることも役割の一つになるのでしょうか。

そうですね。子どもたちからは治療のことから進路のことまで、いろいろな相談を受けることもあります。

ただ、答えるというよりは、聴くことが最初の役割かなと思います。医療的なことは私が答えるべきではないので、「先生に確認しようか」と促した上で医師に情報共有をします。また、私に「先生に聞いておいて」という子の場合は、確実に聞いて確実に返すようにしています。どちらが良いのか、個別に見極めて対応をしています。

 

言葉を選びながら、絵本で説明

―治療や病気への理解は、どの程度までわかってもらうようにしているのでしょうか?

それぞれの子どもの年齢や理解度に合わせて、入院の理由や処置・薬の理由などを正しく分かってもらうように心がけています。それからみんなが味方で、一緒にやっているんだと思えるような言葉選びを大切にしています。

説明をするときは、間違った理解や混乱を予防する、もし間違った理解や混乱がある場合には修正することが重要です。2~3歳の子に「白血病細胞」と言っても分かりませんよね。なので、「体/血の中にばい菌がいるのが分かったんだ。それを一つ残らずやっつけなくちゃいけないから、お薬をするよ。お薬が強いから、髪の毛が抜けるよ。でもお薬が終わったら必ずはえてきます」などと情報を噛み砕き、分かりやすくします。「ばい菌」がいいのか「かたちがちがう細胞」がいいのかなどは、親御さんと相談しながら決めています。

ご家族がどうしても使いたくない言葉(病名など)があるのであれば、なぜその言葉を使いたくないのか先に確認します。その上で、できる限りご家族の意向を尊重しながら、子どもの年齢を考えて「こう言いましょうか」という提案をするんです。「がん」「白血病」という言葉を最初から使う必要はないかもしれませんが、「頑張る相手」が分からないと、子ども本人もどこでどう頑張ればいいのか分からないですよね。その辺りを親御さんと相談し、医療者とも合わせます。病気そのもののことだけでなく「みんなが味方だよ」と伝えませんか、と提案することもあります。

説明時には、絵本を作ることが多いです。お子さんが好きなイラストを表紙に使ったり、言い方もその都度変えたりして、名前を入れて作っています。ご本人の分と、希望があればごきょうだいの分を作ります。

 

―患者さんのごきょうだいに対するフォローもされているのですね。どのようなケアをしているのですか?

ごきょうだいも、患者さんや親御さんと同様にみんなとっても頑張っています。病気のきょうだいへの心配や自分が健康なことへの罪悪感、家族の生活スタイルや役割の変化への適応、疎外感や不安、などたくさんの想いを抱えて、それでも日々に適応しています。

いろいろなケースがありますが、例えば、病気や生活についての絵本を作成して、できるだけ明るい窓がある部屋で絵本を読み合わせます。大切なお話の前後に遊びを使ってリラックスしてもらったり、気持ちの発散を促したりしています。1回の子もいれば何回も通ってくれる子もいます。

また、患者さんが一時退院中や外来移行後の外来できょうだいも一緒にきてみんなで一緒に遊ぶこともありますね。遊びを通して、ストレスや感情を表出・発散する機会になればと思っています。

また、終末期を過ごしている患者さんのきょうだいへ、「お別れの日がくるかもしれない」ということを絵本やかかわりの中でお話しすることもあります。そういったときは、どこまでどう話すか、絵本にどう描くか、親御さんと細部までしっかりとお話して決めていきます。

かかわりを行ったあとの気持ちのフォローはとても大切です。ただ、普段おうちにいることの多いきょうだいの子たちを医療スタッフがメインでフォローしていくことはとても難しいですよね。だからこそ、ごきょうだいへのフォローでは、親御さん・保護者の方、家族の方との協力が必要不可欠なのです。

 

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