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退院後の生活のための準備も、大事な役割

―退院するときは、どのような支援をされているのでしょうか。

病気が治ってもとの生活に戻れるお子さんがいる一方、中には、病気の影響で身体の不自由さが残るお子さんもいます。その場合、学校に戻る時にもフォローが必要なのですが、他にも在宅医療サービスや障害福祉サービスが必要になることがあります。

この辺りは退院前から主治医や看護師、リハビリのスタッフが先に「この子は退院するにあたって車椅子が必要」「家でも看護師にみてもらうことが必要」「リハビリを続けた方がいい」などと依頼がきます。それにあわせてサービスを調整し、退院するときにその準備ができているようにしています。

 

―退院したお子さんが学校に戻るためのサポートでは、具体的にどんなことをしていますか?

学校の先生方と、医師をはじめとする当センターの診療チームが話す機会を設けています。

その際にソーシャルワーカーとして大切なのは、治療後のお子さんを受け入れる学校側の先生方の立場になって考えることです。長期入院したお子さんが学校に戻ってくる、しかも抗がん剤の副作用で髪の毛はないし、マスクをしている。最初に「学校に来て本当に大丈夫ですか?」という学校の先生の質問から始まることもあります。

ですから、主治医から「他の子と同じように授業を受けられます」と説明することで、学校側の不安を減らしていきます。ただ、長期入院を経て体力が落ちているので、いきなり登校して1時間目から5、6時間目まで出るのは難しいです。そこで、医師が「最初のうちは登校の時間を短くし、だんだん延ばしていってください」ということを説明します。

その説明を聞くと学校側も、どう対応すればよいかが分かっていきます。変に差別を受けたり、できることを学校側が心配だからやらせなかったり、ということがあるとお子さんにとって不利益なので、他の子と同じ対応でいいところと、少し気を使ってほしいところとを主治医らが説明しています。

また、車椅子での登校など配慮が必要になったお子さんについては、より細かい打ち合わせを行います。例えば、エレベーターがない学校の場合、どういう風にご本人が3階の教室に行くのか、送り迎えは親御さんがするのか。そういう細かい調整をしていくと、やはりそれを周りの子にどう話すかということが出てくるので、それも話し合っていきます。

その子に合わせて、「こういうことが問題になりそうだ」と思った点を取り上げて話していく。説明をするのは主治医の先生ですが、安心して学校に戻れるように話し合いを進めていくようにするのがソーシャルワーカーの役割ですね。

 

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