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まずは、子どもたちと「仲良くなりたい」

―お子さんたちとお話しするときに心掛けていることはありますか?

年齢に合わせて、分かる言葉で話すようにしています。でもその前にまず、仲良くなりたいんですよね。ただ病気の話をするとなるとお互い緊張してしまうので、くだらない話をたくさんします。ちょっと部屋に立ち寄って、ママとも何でもない話を色々します。

実際に毎朝ベッドサイドで採血をしたり、点滴を刺したりするのは、30代前半くらいの医師たちです。彼らやいつもそばにいる看護師さんたちは本当に、子どもたちとすごく仲良しです。

月に1回や2ヶ月に1回の外来でも同じです。データの話は親御さんとして、子どもたちとは「今何してるの?」「今度学校で何するの?」という話ばかりしています。だから、子どもたちは病院に来るのをそんなに嫌がっていない気がしますね。遊びに来ている感覚だと思います。

高校生くらいの子は、難しいです。中には、何を考えているのか分からない子もいます。数年前までは(コミュニケーションなどに関する悩みを)抱え込んでしまっていましたが、今は、私に本当の気持ちを話さなくても、誰か話しやすい相手に話せれば良いと思っています。これは多職種の素晴らしい点ですね。

 

―まだ話すことができない年齢のお子さんの場合は、どうでしょうか。

やはり遊んで、仲良くなりますね。

赤ちゃんの場合、遠くから見ても自分でキャッキャと寝返りを打っていれば「ああ、今日も元気だ」と分かります。それに、お母さんがニコニコしていれば赤ちゃんは安心してくれます。元気のない時はおもちゃに見向きもしないので、具合の悪さは、赤ちゃんの方が分かりやすいです。

 

―小児がんは治る病気になってきている一方、晩期障害という問題も出てきています。治療中のお子さんには、治った後の話はするのでしょうか?

それも年齢に合わせてです。今までは、子どもたちにはあまり具体的な話をしてきていませんでした。例えば「不妊になる」というようなデリケートな話題は、親も子どもに聞かせたいとは望みませんよね。だから、実際には話せていないことの方が多かったです。

でも、最近はストレートに「骨髄移植をする時にはそう(不妊に)なる」と伝える土壌ができてきています。これは、伝えた後の心の変化を他の職種が受け止めてくれるという点が大きいです。

一方、言えていない部分もあります。例えば、頭部に多量の放射線照射を受けた子に対して「あなたのその部分の髪の毛はもう一生生えてこない」とは伝えられていません。親御さんには伝えていますが、それを6歳の子に突きつけることが必要かどうかも分からないし、親もそれを希望していません。でも、いつかは言わなければいけないかもしれませんね。

 

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