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少しでも、楽しく過ごせるように

―成育での緩和ケアについて、お話しいただければと思います。

私たちは、入院の時点から亡くなった後の家族のケアまで含めて「緩和」と言っています。治る子も含めて、です。

私の以前の上司が、「何事もなかったように、元いた場所に戻してあげたい」と話していました。私もその通りだと思っています。入院中も子どもたちは成長していくので、楽しいことをたくさんしてほしいです。

家族が壊れるのも、帰る場所がないのも嫌ですよね。本当に、普通の生活に戻ってほしいと思っています。とはいえ、1年や1年半の入院は大変なことなので、多少のギャップはできてしまいますね。

 

―できるだけそのギャップを減らすためには、どんなことができるでしょうか?

親御さんに対しては、甘やかしすぎたりせず、入院中も普通にしてほしいと思っています。入院中も、本来のその子の在り方に近いような状態で過ごせればいいと思っています。手術や薬は大変ですが、何にせよ、楽しくいてほしいです。

 

―手術や抗がん剤など、大きめの治療の前には、特別なケアをするのですか?

子どもに対して、お話はします。年齢も考慮しますが、どう話すかはお母さんとも相談しますね。「お腹の中にバイキンがいてね」と表現することもあれば、ストレートに写真を見せるときもあります。

実際の写真を見たくない子は、もちろん「見たくない」と言います。お母さんが「うちの子はいいです」という場合もあれば、「見せちゃいましょう」という場合もあるので、その辺りは家族の意向を聞きますね。押し付けになってはいけないと思うので。

 

―「看取り」については、どういったケアをしていますか?

極力、看取りの場にはいたいと思っています。本当に濃厚な時間を過ごすので、「ありがとう」「頑張ったね」と声をかけるなどしますね。

私は、看取りの場に決まりごとはないと思っています。家族の思うようにその時を過ごしてほしいです。モニターにこだわる必要もないですし、ご家族に「抱っこしましょう」と声をかけることもあります。後で「それが良かった」と言ってくださる方もいます。

 

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