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「遊び」を使い、活動性の維持向上を目指す

―具体的に、どのようにリハビリテーション(リハビリ)をしていくのでしょうか。

安静度に合わせたリハビリを行います。このときに欠かせないのが、チーム内でのコミュニケーションです。例えば、化学療法の時間帯は病棟でモニタリングを行う必要があるので、病棟から動ける時間を看護師に確認し、リハビリ室に行く時間を調整します。「今日は1日中病棟を出られない」という日は病棟でリハビリをするように組み立てるなど工夫を行い、できるだけすべての時期に関われるようにしています。

行う作業は基本的に、粗大運動(胴体と四肢の大きな筋肉を使った動き)を伴う遊びが多いです。床から立ってものを運んだり、リハビリ室では走り回ったりブランコに乗ったり、ボールプールで遊んだりもします。おもちゃや遊具を使って、粗大な運動を促すのです。

ベッドサイドでも、なるべく動けるような活動をしていきます。例えばビーチボールを使えば、ふくらませたり空気を抜いたり、上に座ってバランスを取ったりできます。ベッド上に立たせてやることもあれば、ベッドサイドの柵に大きなボードを立てかけて、床にばらまいたマグネットを1個ずつ付けさせるような作業も大きな筋肉を使います。マグネットを布団の中に隠して探させるのも全身運動になりますね。

ほかにも、全身のいろんなところに輪っかを持っていってキャッチさせたり、洗濯バサミを全身に貼り付けて「ヨーイドン」で外させたり、ベッドサイドでも身体を動かす方法はたくさんあります。遊びを使うと、子どもたちはかなり主体的にやってくれますね。

 

―かなりバリエーション豊かなのですね。子どもたちの意識としては、「リハビリ」というよりも「遊び」なのでしょうか?

「遊んでいる」という感覚の子がほとんどなんじゃないかなと思います。小学校の中学年くらいになれば目的を理解できますが、小さい子の場合は、リハビリ室のことも「病院の中の公園」くらいに思っているかもしれませんね。

私たちは疾患を治すことはできませんが、障がいの予防を目指すことはできます。加えて、早期から介入することで関係性も構築できるのです。

体調が悪くなってから介入すると、「痛いときに来る人」「つらいときに来る人」になってしまいます。そうではなくて、良いときも悪いときもずっと一緒にいるというスタイルを目指しています。

このほか、退院して帰宅したとき(在宅生活)に何か障がいが残るようなら、家の中の環境調整を提案するという役割もあります。どんな車椅子がいいのか、どんなベッドがいいのかなどは私たちが評価し多職種と共有していくことが多いです。あとは学校や保育園・幼稚園の先生との連携も取ります。

 

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