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子ども自身が主体的にリハビリに取り組むために

―お子さんたちが遊びに対して乗り気でないときは、どうしていますか?

そのときは「やらない」という選択肢をとることもあります。

小さなお子さんの場合、嫌な経験になってしまうと、「リハビリ室に行くだけで泣く」「療法士が来たら泣く」ようになってしまいます。ですから、親御さんの希望が強くても「やらない」選択も時に必要です。

とはいえ、なるべく子どもたちが乗り気になれるように、好きなものや苦手なもの、得意なことは最初に必ず聴いています。それを参考に、好きなキャラクターを仕掛けておくなど、その子が好むものを参考に介入することも多々あります。

そのため、課題内容は人によってかなり異なります。足の同じ筋力が弱い子でも、一人は電車遊びでもう一人はジャングルジムに登るなど、プログラムはオーダーメイドです。

 

―課題がうまくできないときにはどうしているのでしょうか。

基本的には、評価に沿って、その子にとってちょっと難しいくらいの課題を取り入れます。絶対にできるものを選ぶことはあっても、絶対に達成できないものを選択することはないですね。闘病中の子どもたちにとって、成功体験が大きなパワーになるからです。なので、難しい課題を選択しすぎてしまった場合も、そっとサポートして達成を感じて終われるように心がけています。

段階付けで「今日はここまでできた」「次はここまで」「いつまでにここまでしよう」などと提示することはあります。でも、基本的には「できた」「できた」の繰り返しです。

子どもたちにかける言葉は、「できたね」「上手だね」が多いです。「かっこいいね」と言うこともあります。ネガティブな言葉は、基本的に使いません。

 

―退院後も支援は続けていくのですか?

目標が達成されていれば、基本的には退院のときに「卒業」という形にしています。「終了」ではなく、「頑張ったからリハビリは卒業できるよ」という形で終わらせることがほとんどです。

退院後に支援が必要な場合、たいていは地域の療育センターや訪問リハビリテーションに引き継いでいきます。治療が続いている場合や、心配が残っているにも関わらず支援につながっていない場合は、外来でフォローすることもあります。

 

―最後に、小児がんのお子さんと関わる中で、読者の方に伝えたいことがあれば教えていただけないでしょうか。

小児がんの子どもたちについて「かわいそう」「みんな点滴で寝かされている」というイメージをもたれている方は少なくないと思います。でも、小児がんセンターの子どもたちは、病院の外で過ごしている子どもたちと同じく、もしくはそれ以上の大きな力を持っていて、キラキラした瞳やとびっきりの笑顔を見せてくれます。中には私たちがハアハアしてしまうほど元気なお子さんもいます。

病気であっても、子どもたちはずっと遊んでいます。体が上手に動かない時も、見たり聴いたり想像したりして遊んでいます。みんなその子らしい時間を過ごして、リハビリも楽しんで取り組むことができているんです。リハビリは子どもたちが泣きながら頑張っている活動ではありません。子どもたちは自分たちの力で、自分たちの意志で動くことで元気を取り戻していくパワーを持っています。私たちはそこに寄り添いほんのちょっとのお手伝いをしているだけなのです。

編集後記

「身体の機能回復のため」というイメージの強いリハビリテーションですが、成育では、トラブルが起こる前から予防的に行うことで子どもたちの生活を守っているそうです。「遊び」を通して行うことで、子どもたち自身が主体的に取り組んでいる、というお話も印象的でした。

成育医療研究センターのこどもサポートチームに聞く「小児がん」連載、最終回となる次回は、医師・塩田 曜子先生にお話を伺います。

※取材対象者の肩書・記事内容は2018年2月23日時点の情報です。