一般的に白目(しろめ)と呼ばれている部分は、上から結膜、上強膜(じょうきょうまく)、強膜(きょうまく)で構成されています。眼が充血する原因で知られているのは結膜炎ですが、強膜が炎症を起こしたときにも充血は起きます。また、強膜炎を発症したときには強い痛みを伴う場合もあります。今回はあまり馴染みのない強膜炎と上強膜炎について紹介していきます。

目次

強膜(上強膜)とは

眼球を形作る白くて固い膜を強膜と言い、上強膜とは、強膜の最表面部分、結膜と接する部分を指します。最も眼球表面にある結膜は半透明な薄い膜のため、下にある強膜が透けて白色に見えています。強膜はその字の通り眼球の中で一番強く、外からの衝撃や圧力に耐え眼球を守る役割を果たしています。上強膜には血管が豊富にあり、その血管を通して強膜に栄養を届けています。

上強膜炎と強膜炎の原因・症状

暗闇で漂う赤いオーブ

炎症が起こった部分によって上強膜炎強膜炎に分けられます。上強膜炎と強膜炎では症状や程度が大きく異なります。結膜炎については「目の病気の代表格・結膜炎。軽い症状だからと見逃さないで!」をご覧ください。

上強膜炎

強膜表面に炎症がとどまる場合を上強膜炎と呼びます。充血や腫れ、ゴロゴロするなどの異物感、まぶしさや流涙などが起こります。また、白眼の一部分が盛り上がることもあります。比較的若い世代によくみられ、その中でも女性に多くみられます。

原因は調べてもはっきりしないことが多く、自己免疫疾患の他、感染症、関節リウマチ全身性エリテマトーデス梅毒などに合併して起きる場合があります。

強膜炎

強膜全層に炎症が及んだ状態です。強い充血と、眼の奥に感じる強い痛みが特徴的で、強膜の炎症が強く、強膜が薄くなるとその下にある脈絡膜が透けて見えるようになり、白眼の一部が紫~黒色に見えるようになります。こうなると眠れないほどのひどい痛みに襲われます。

炎症が強いために強膜表面にある眼球の運動筋も炎症を起こすので、眼を動かしたときに痛みを感じます。また虹彩毛様体炎も生じるので羞明(まぶしさ)や、刺激症状による流涙なども起こります。

炎症がひどい場合だと、眼球に孔(あな)が空いてしまうケースもあります。比較的稀な疾患で、30代~50代、特に女性に多くみられます。

原因は上強膜炎と同じく、はっきりしない場合が多いです。自己免疫疾患(関節リウマチや全身性エリテマトーデス、結節性多発動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症など)に合併して起きる場合があります。

上強膜炎・強膜炎の治療

上強膜炎はステロイド薬の点眼が基本治療となります。無治療で重症化すると治療困難になりますので軽いうちに早めに眼科を受診しましょう。

強膜炎の治療はまずは点眼薬を使用し、重症化が見られる場合は内服や注射、点滴などを行います。炎症を抑えるためにステロイド薬が最も多く用いられますが、症状が軽い場合は非ステロイド抗炎症薬を使用したり、補助として抗生物質を使ったりする場合もあります。

しかし上記の治療で効果がなかったり症状が強かったりする場合は、ステロイド薬を直接結膜の下に注射する結膜下注射や、内服や点滴によるステロイド薬の全身投与が行われる場合もあります。

上強膜炎や強膜炎の原因が自己免疫疾患など他の疾患にある場合は、眼の症状を抑えても根本的な解決にはなりません。原因疾患を治療していきます。

まとめ

上強膜炎、強膜炎ともに特徴的な症状は充血です。強膜炎になるとさらに強い眼の痛みを伴ってきます。結膜炎と勘違いしてしまうと、放置してしまいがちですが、治療せずにいると症状がどんどん悪化して視力に影響を及ぼす可能性もあります。また、自己免疫疾患といった病気を発症している可能性も考えられます。強膜炎のような症状が現れた場合には早目に眼科を受診し、早期発見・早期治療で重症化を防ぎましょう。