眼の感染症には様々な種類があり、眼窩蜂窩織炎はその中の一つです。発症すると結膜、まぶたが充血し腫れて痛むとともに、眼球突出、眼球運動障害などがおこります。重症化した場合には視力低下、失明の可能性があり、さらに全身状態が悪化し生命の危機に陥る事もありえます。治療に急を要する病気の一つです。今回は眼窩蜂窩織炎について紹介していきます。

目次

眼窩蜂窩織炎とは

頭蓋骨には眼球を収める眼窩(がんか)と呼ばれるスペースがあります。この眼窩にある脂肪組織が、何らかの原因で菌に感染して炎症が起きている状態を眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)、または、眼窩蜂巣炎(がんかほうそうえん)と呼びます。

眼窩蜂窩織炎は副鼻腔(※)に起きた感染症(副鼻腔炎)が広がり、隣接する眼窩に波及しておこるものが最も多く見られます。怪我、虫や動物の咬傷、手術などにより眼窩内に直接菌が侵入するケースや、歯やまぶたの感染症が拡大して眼窩に及ぶケースもあります。また、頻度は低いものの、菌が血流を介して眼窩に至り炎症を起こす、血行感染による場合もあります。

(※)頭蓋骨の中にあり、鼻腔に連絡している空洞です。副鼻腔は一部で薄い骨をへだてて眼窩と接しています。

眼窩蜂窩織炎の症状

眼窩蜂窩織炎になると次のような症状が現れます。

上記の眼の症状、特にまぶたの腫れや充血などの症状は、結膜炎麦粒腫(いわゆる「ものもらい」)などでも起こります。しかし、結膜炎や「ものもらい」で眼球突出や複視が現れることはありません。

炎症が強くなると視力低下・発熱・吐き気・頭痛などがみられることもあります。さらに重症化すると、失明ばかりでなく、髄膜炎や海綿静脈洞血栓症などの命にかかわる病気に至ることもあります。上記のような症状を感じたら早急に眼科を受診するようにしましょう。

眼窩蜂窩織炎の診断

そこに信頼はありますか

眼窩蜂窩織炎の診断は、外見と細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査からかなりの程度までつけることができます。しかし炎症の範囲や原因を探るためには、眼窩・副鼻腔などのCT検査、MRI検査が必要です。

眼窩蜂窩織炎と診断された場合には、感染の原因となっている菌を特定する目的で、採血して血液培養検査が行われます。また副鼻腔炎が原因と疑われる場合は副鼻腔滲出液の培養検査も行います。原因菌は黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌などの細菌のことが多いですが、まれには真菌(カビ)の場合もあります。

眼窩蜂窩織炎の治療法

眼窩蜂窩織炎の場合には、入院の上ただちに、様々な細菌に効果のある広域抗菌薬の点滴治療を行うのが基本です。血液や副鼻腔からえた検体の培養検査によって原因菌が特定されれば、その菌に効果の高い抗菌薬に切り替えることを考えます。

また副鼻腔や歯の感染症が眼窩蜂窩織炎の原因となっている場合は、原因病巣に対する治療も行います。

眼窩蜂窩織炎に対しては薬物療法が基本ですが、視力障害がみられる場合、眼窩膿瘍が認められる場合、薬物治療で改善が見られない場合などには、手術治療が必要になります。

まとめ

眼窩蜂窩織炎はあまり聞き慣れない病気かもしれません。まぶたの腫れや充血など眼の症状が基本ですが、放置すると命にかかわる危険もあり、早期発見・早期治療が非常に重要になります。少しでも眼に異常を感じた時は、自己判断せず眼科医の診察を受けるようにしましょう。