夏季は、最高気温が30℃以上となる真夏日はもちろん、35℃以上となる猛暑日も少なくありません。熱中症で救急搬送される患者さんも多く、特に乳幼児や高齢者などは熱中症が重症化しやすい傾向があります。

重症化した場合、命にかかわることはもちろんですが、命をとりとめたとしても後遺症が残ってしまうことがあります。この記事では、熱中症による後遺症について解説しています。

目次

熱中症の重症度分類

熱中症は重症度に基づいて大きく三段階に分けられます。

Ⅰ度

頭痛や吐き気、めまいなどの症状などが引き起こされます。ですが、意識はしっかりしているため、涼しい場所で水分をきちんと摂取しながら休息をとれば回復していきます。

Ⅱ度

体内の水分量が減ることによって循環不全(全身に血流がきちんと回らなくなること)が生じます。医療機関の速やかな受診が必要となります。

Ⅲ度

最も重症とされる状態で、後遺症が残る可能性があります。
この段階まで達すると循環不全によって様々な臓器に障害が起こります。特に脳にダメージが及ぶと意識障害やけいれん発作などが引き起こされます。

また、体内に蓄積された熱によって全身の筋肉が破壊され始めます。破壊された筋肉から漏れ出したミオグロビンという成分によって腎臓がダメージを受け、腎不全となることもあります。この段階まで達すると集中治療室(ICU)での全身管理が必要となります。

どんな後遺症が残るの?

最も後遺症として深刻なものは、脳などの中枢神経系に残る障害です。

  • 記憶障害(ついさっき起きたことを覚えていられない)
  • 注意障害(ぼんやりして同じミスを繰り返す)
  • 遂行機能障害(計画立てて物事を行えない)
  • 社会的行動障害(他人と良好な関係を保てなくなる)

といった障害が残ることがあります(これらをまとめて「高次脳機能障害」と呼びます)。

小脳というバランス感覚や姿勢保持を司る部分がダメージを受けることによって歩行障害などが残ることもあります。また、物を飲み込みづらくなるといった嚥下障害が残ったケースもあります。そのほかにも、筋力低下や認知症がみられたケースもあったようです。

後遺症を残さないようにするためにはどうすればいい?

夏と救急車

それでは重症の熱中症で後遺症を残さないためには何をすればよいのでしょうか?基本的な対処法を以下に挙げていきます。

速やかに医療設備の整った医療機関へ運ぶ

意識障害を示している熱中症の人を見かけたらためらうことなく救急車を呼びましょう。上記で挙げたように重度の熱中症に陥っている場合は可能な限り早く集中治療室での治療を始める必要があります。

可能な限り身体を冷やす

中枢神経の障害は長い時間、高体温に晒されることによって生じるとされているため、ように努めましょう。ただし、意識のない人に無理をして水分を飲ませると誤嚥の可能性もあるため、意識がはっきりしていない場合の水分補給は注意深くさせるようにしなければなりません。

まとめ

特に乳幼児や高齢者は熱中症が重症化しやすい傾向があります。知らないうちに高体温に晒される時間が長くなり、中枢神経に不可逆的(回復しない)障害が残っていることもあります。これから暑い日が徐々に増えていくので、熱中症には十分注意して過ごしましょう。