皆さん、ジフテリアという感染症を知っているでしょうか?感染症のなかでも、麻疹(はしか)水痘(水ぼうそう)などと比べて、ジフテリアは比較的認知度が低いようです。実際、予防接種(DPT-IPV)が徹底されるようになって以降は非常に稀な感染症となっており、近年のわが国における年間発症件数は数件です。

ですが、ジフテリアは他の感染症と比較して症状が激しく、特に喉にジフテリアが感染することで生じる「喉頭(こうとう)ジフテリア」は窒息の危険があり、ときに命に関わることもあります。ここでは、ジフテリアについての基礎的な知識をおさらいした上で、喉頭ジフテリアについて解説します。

目次

ジフテリアってどんな病気?

ジフテリアはジフテリア菌という細菌によって引き起こされる感染症であり、特に乳幼児や高齢者に多いとされています。

ジフテリア菌はインフルエンザなどと同様に飛沫感染(感染者の咳や痰に含まれる病原体を介して生じる感染)によって感染し、数日の潜伏期間を経て発熱や喉の痛みなどによって発症します。これらの症状は他の感染症と比べると、やや激しいとされています。

ジフテリアで最も恐ろしいのは、発熱や喉の痛みに加えて生じる心筋炎です。心臓の筋肉が炎症によってダメージを受けることで、命を落とすことも少なくありません。

喉頭ジフテリアってなに?

ジフテリア菌に感染し、菌が扁桃・咽頭(鼻腔の奥~食道の手前あたり)で増殖すると扁桃ジフテリア・咽頭ジフテリアという状態になります。

その際、扁桃・咽頭には「偽膜」と呼ばれる特徴的な灰白色の膜が張ります。偽膜は分厚くて剥がれにくく、無理に剥がそうとすると出血してしまいます。

さらにこの膜は、そのまま治療せずに放置しておくと喉や気管を覆うようになります。偽膜が分厚くなると空気の通り道である気管が塞がれてしまいます。これが喉頭ジフテリアです。

気管が塞がれてしまうと窒息のおそれがあり、窒息により命を落としてしまうこともあります。

このような危険な状態になる前に、医師(救命救急科や耳鼻咽喉科)の診察・治療を受けなければなりません。

喉頭ジフテリア、どうやって気づく?

では、「気管が塞がりかけている」のに気付くためにはどうすれば良いのでしょうか?

喉を含む上気道が塞がれると、呼吸の際に犬が吠える様な特徴的な音を生じるようになります。これは「犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)」と呼ばれ、空気の通り道が塞がってしまうのが差し迫っていることを示しています。

また、息を吸い込む際にぜいぜいと苦しそうにしている「吸気性喘鳴(きゅうきせいぜんめい)」の症状も、気道閉塞が差し迫っていることを疑わせる徴候です。

これらの徴候が認められる場合は、早急に医師の診察を受けなければなりません。

まとめ

ジフテリアはワクチンの普及によりわが国では非常に稀な感染症となりました。それに従い、喉頭ジフテリアも医療現場で見られることは非常に少なくなりました。ただ、一度発症すると重篤な経過をたどるリスクが高い感染症なので、特に幼いお子さんや高齢者がいるご家庭では頭の隅に留めておくと良いかもしれません。

また、喉(気道)が閉塞しかけている際に認められる症状(犬吠様咳嗽や吸気性喘鳴など)は、命に関わる状態か否かを見極める重要な手がかりになるので、一般の皆さんも知っておくと良いでしょう。

ただし、中途半端な判断によって医療機関の受診が遅れてしまうことはあってはならないので、少しでも症状に不安を覚える場合は早急に医師の診察を受けるようにしましょうね。