痰の出ない咳(からせき)はありふれた症状の1つです。からせきは風邪やアレルギーなど、さまざまな原因によって生じます。原因を見つけるためには咳の特徴が重要になることがあります。
ここでは激しいせきこみがみられる病気を4つ、犬の吠え声のようなからせきがみられる病気2つについて、症状など具体的な特徴を解説します。
激しいせきこみがみられる病気
百日咳
原因は百日咳菌による感染で、激しい咳を特徴とする病気です。非常に感染力が強く、幼い子ほど重症になります。症状はまず鼻水やくしゃみ、咳、微熱など風邪に似たような症状が1~2週間続きます。その後、せきこみが見られるようになります。
百日咳の特徴なせきこみには「レプリーゼ」と名前がついています。顔を真っ赤にするほどコンコンと激しくせき込み、その後ヒューッと音を立てながら一気に大きく息を吸い込みます。この発作は2~3分続き、1日に数回~数十回、特に夜に現れ、2~3週間続きます。
激しい咳のために呼吸が止まった場合、けいれんや意識障害につながることがあります。予防のためのワクチン接種が重要です。
最近では大人の百日咳感染が増加し、大人の長引く咳の原因としても問題となっています。
喘息
喘息は気管支に炎症が起きているために空気の通り道が狭くなり、刺激に敏感になっている状態です。原因は子供の場合、ダニやハウスダスト、花粉、ペットなどのアレルゲンが多い一方、大人では分からないことも少なくありません。
発作が起こると、せきこみや喘鳴(ぜんめい)、息苦しさ、痰などが生じるようになります。風邪や運動、寒暖差、たばこの煙、空気の乾燥などをきっかけに発作が生じることもあります。発作は主に夜中、明け方に悪化します。
症状が落ち着くと治ったように見えますが、気管支の炎症が残っている状態ではいずれまた発作を起こすため、原因を避け、治療を中断しないことが大切です。
咳喘息
咳喘息の原因は喘息と同様、寒暖差やたばこの煙、運動、ハウスダストなどのアレルゲンです。これらに反応し、気道が狭く敏感になっているためにせきこみが生じるのが咳喘息です。発作の時間帯も喘息と同じく、夜間から早朝にかけて起こりやすいといわれています。
ただし、咳喘息は喘息とは異なり喘鳴や息苦しさは生じず、からせきのみが続くという点で区別されます。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎の原因は微生物の肺炎マイコプラズマによる感染で、微生物が気道に入って肺炎が起こります。濃厚接触する環境で飛沫感染または接触感染で感染しますが、空気感染はしません。そのため学校や職場など集団で流行していきます。夜間や早朝に乾いた咳が長く続くのが特徴です。その他発熱や頭痛、喉や胸の痛みなども現れます。
マイコプラズマ肺炎は自然に治ることもありますが、マクロライド系の抗菌薬を使って治療します。中にはマクロライド系に耐性を持つタイプがあるので、そのときはテトラサイクリン系の抗菌薬で治していきます。
犬の吠え声のようなからせきが出る病気

急性喉頭蓋炎
のどには飲食物と空気が通る咽頭と、空気の通り道で肺につながる喉頭とがあります。喉頭には、食物を飲み込む際に気管に流れこんでしまわないようフタをする喉頭蓋(こうとうがい)と、発声に必要な声帯の2つの器官があります。ウイルスや細菌感染によって急性喉頭蓋炎が起こると、発熱や咳、のどの痛みや違和感がみられます。
そして食物が飲み込みにくくなったり、息苦しくなったり、声がかすれるあるいは出なくなるなどの症状が現れてきます。含み声(こもったような声)や犬が吠えるようなせきこみがみられることも特徴的です。
喉頭ジフテリア
原因はジフテリア菌による感染症で、主に鼻やのどの粘膜に感染し、発熱(38度前後)、のどの痛み、飲み込む際の痛みなどの症状から発症します。炎症が喉頭まで及ぶと、次第に声がかれ、犬が吠えるようなせきこみがみられるようになります。
炎症によって気管が狭くなると、呼吸困難が生じることもあります。菌が産生する毒素が体内にばらまかれると、昏睡や心筋炎など、命に関わる可能性もあります。
ジフテリアは1945年には86,000人が感染し、そのうち約10%は死亡していましたが、2000年までの10年間では感染者21人と激減しており、予防接種が非常に有効な感染症です(国立感染症研究所より)。
まとめ
からせきはありふれた症状ではありますが、放置すると無呼吸やけいれんの原因になることや、結核のような危険な病気が隠れていることもあります。普通とは違うような咳に気付いたら、早めに呼吸器内科を受診するようにしましょう。