心筋炎という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
心筋炎は、健康な人でも突然起こる可能性がある病気で、発症したのちには重度の心不全や不整脈などを引き起こす可能性もあります。
また、時には急激に病状が悪化し生命を脅かす状態にもなりうる病気です。
今回は、心筋炎とはどんな病気かについて解説していきます。
心筋炎とは
心筋炎とは、その名の通り心筋の炎症です。心筋は心臓を動かす筋肉です。
心臓は全身に血液を送るポンプのようなもので、絶えず拍動し、全身に血液を巡らせています。
心筋に炎症が起きることで、心臓のポンプ機能が低下し、心不全という状態に陥ったり、危険な不整脈などが出現したりすることもあります。
心筋炎には色々なタイプがあり、急性心筋炎、劇症型心筋炎、慢性心筋炎、拡張型心筋症類似型などの種類に分けられます。
この中でも一番多くみられるのが急性心筋炎です。
急性心筋炎は、心筋にウイルスなどが感染し発症します。
代表的な症状は、風邪症状、心不全、不整脈などですが、急性心筋炎の中には死に至るほど急激な病状変化を示すものがあり、その場合を劇症型心筋炎といいます。
劇症型心筋炎には厳密な定義は確立していません。
心筋炎の原因とは
心筋炎のほとんどがウイルス感染によるものと考えられています。
なかでもB群コクサッキーウイルスの感染が多いとされますが、他の多くのウイルスも発症に関与しています。
細菌感染に伴うものや、薬剤によるもの、関節リウマチなどによるものなどもありますが原因が特定できないものも少なくありません。
また、HIV感染症(AIDS)やC型肝炎ウイルスも心筋炎を引き起こす可能性があるとされています。
心筋炎の症状とは
急性心筋炎の主な症状は、かぜ症状(悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛、全身倦怠感など)や、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸炎に類似した消化器症状が先行します。
それに続き、数時間から数日の経過で、心症状が出現します。
心症状は、病変の部位や炎症の程度、心筋炎の広がりによって症状も異なります。
しかし心筋の炎症で心臓のポンプ機能が低下すると、心不全症状が出現します。
多くは労作時の息切れで始まり、呼吸困難感、体の疲れやすさ・だるさ、食欲不振、浮腫、動悸など色々な症状があります。
心不全の詳しい症状については「心不全ってどんな症状?原因となる7つの病気」の記事をご参考ください。
また、胸の痛みや、不整脈が起こることで意識が遠のくような失神などの症状が見られることもあります。
場合によっては、かぜ症状などの先行する自覚症状がなく、いきなり心症状が起こることもあります。
劇症型心筋炎では、血圧低下、意識障害などのショック状態を発症する場合や、突然死を引き起こすこともあります。
小児の心筋炎の特徴
心筋炎は大人、子ども関係なく誰にでも起こる可能性がありますが、特に小児は自覚症状をはっきりと訴えることが難しいため、早期発見もより難しくなると思われます。
小児期の心筋炎の特徴としては、経過がよい場合は、1~2週間の炎症期ののち回復期に入ります。
しかし、小児期の心筋炎の30~40%は劇症型心筋炎、40~50%が急性心筋炎とされています。
予後が不良とされる劇症型心筋炎の患者の約半数が入院前に肺炎や喘息と診断を受けています。
小児例全体の生存例は75%とされ、60%は後遺症なく退院していますが、小児期では不整脈が残ることがあるため回復した後も長期にわたる経過観察が必要です。(日本小児循環器学会|小児期急性・劇症心筋炎の診断と治療の指針より)
まとめ
心筋炎の多くは、急性期を脱した後の予後は良好で、自然に軽快に向かいます。
しかし、一部の症例では、炎症が遷延し、慢性化することがあり、重篤な合併症を合併することもあります。
今回は、原因や症状について説明しましたが、心筋炎は特徴とする症状がないため、早期の介入が難しく治療が遅れることもありえます。
予後にも関わってくるため、早期の発見・治療がとても大切です。