ズキズキ痛む耳、無視するのは難しいですよね。
耳の痛みの原因として何が考えられるのでしょうか。また、対処法はあるのでしょうか?
この記事では、耳の痛みを引き起こす原因の一部をご紹介します。

目次

痛むのはどこ?耳の仕組み

まずは耳の仕組みを理解しましょう。耳は外側の方から外耳、中耳、内耳と大きく分けることができます。

外耳は耳の軟骨から外耳道を通って鼓膜までのことです。
中耳は鼓膜から内耳まで、音を伝えるための小さな骨(耳小骨)が入っています。
中耳よりさらに奥、カタツムリのような形をしている蝸牛は、内耳にあたります。
耳の構造-図解

耳の病気の場合

外耳道炎…耳かきのしすぎ、耳に水が入っているかも?

細菌感染などで外耳道に炎症が起きることで、耳の外の方に痛みを感じている状態です。
外耳道炎の原因として、耳掃除のしすぎで傷をつけてしまったり、水が耳の中に入ってしまったりしているケースが多く見られます。

くわえて、外耳道炎は夏になると患者数が増えるといわれています。
特にお子さんはプールに行く機会も増えるため、耳の中に水が入りやすくなること、夏は気温が高いので細菌の感染力も旺盛になっている時期であることが理由として考えらてれます。

耳掃除を習慣にしている方も多いと思いますが、耳垢は顎の動きで自然に排出されるため、耳掃除は必須ではありません(例外として、耳垢が完全に耳をふさいでしまっているような場合には病院で取り除いてもらう必要があります)。また、耳垢とは本来耳を清潔にし、異物が耳の中に入らないようにするための分泌物ですので、決して要らないものではないのです。

予防として、夏やお風呂上がりは耳掃除をできるだけ控えるよう意識し、見える範囲で塊があった時だけ耳かきやピンセットで取り除くと良いでしょう。柔らかい耳垢の方は綿棒で優しく拭うようにします。
そして外耳道炎を疑った際にはむやみに耳を触らないようにして、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

中耳炎…風邪に伴う場合にはこれかも

中耳炎は、耳の奥の方に痛みを感じる病気で、とても身近なものです。
鼓膜の内側にある中耳腔という小さな空間に炎症が起きるため、激しい痛みを訴え、発熱をしたり、ひどくなると耳の奥から膿が出てきたり(耳だれ)することもあります。
こちらは外耳道炎と比べて、耳の穴からの刺激というよりも、鼻・喉からの細菌感染などが原因として多く、風邪にともなうことがあります

軽症の場合は1週間もすれば自然に治ります。ですがしっかり治さないでいると、慢性化してしまい結果的に難聴を招く恐れもありますので、念のため耳鼻咽喉科か内科を受診しましょう。風邪の後、めまい・ふらつき聴こえにくさを感じることがあれば完治していない可能性があります。

航空性中耳炎…気圧の変化によるもの

耳痛は急激な気圧の変化でも起きることがあります。
飛行機に乗った時、特に上昇・下降の際に耳が痛くなったのであれば、航空性中耳炎かもしれません。
耳の奥には鼓室という空間があり、普段は鼻から空気が送りこまれることで外の気圧と等しく保っています。しかし、飛行機の離陸などで急激に周囲の気圧が変化すると、鼓室の中と外の気圧に差が出てしまい、鼓膜が圧迫され、痛みを生じるのです。

多くは着陸後に自然に治癒しますが、風邪をひいていて鼻の通りが悪い時などは重症化しやすいので注意が必要です。なかなか治らないようであれば耳鼻科の受診が必要となります。

予防としては、耳が痛くなりそうな時(離陸時、着陸時)には唾液を飲み込む、あくびをする動作をすると良いでしょう。小さなお子さんでそれが難しい場合には、ガムを噛ませたり、キャンディを舐めさせたりすることで唾液の分泌をうながすのも良いかもしれません。ダイビングの際に行う耳抜きも効果があります。

音響外傷…スピーカー・イヤホンなどの音量の大きさ

イヤホンをする女性-写真
あまりにも大きい音を聴くと、耳が痛むことがあります。
こういった大音量に晒されていると、音響外傷(騒音性難聴、ロック難聴、ヘッドホン難聴などとも言います)を引き起こし、耳痛だけでなく耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りがすることがあります。
原因は耳の中の、聴こえに関わってくるコルチ器という器官が音の振動で壊れてしまったり、麻痺してしまったりするためだといわれています。

時間が経てば自然に治ることも多いですが、難聴が残る方もいらっしゃるため放置はしない方が良いでしょう。すぐに治療を始めることで良くなることが多いので、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

また、習慣的にヘッドホンやイヤホンで大音量の曲を聴いている方、仕事場で常に騒音にさらされている方は、気づかないうちに難聴が進行している可能性もあります。
音楽プレーヤーの音量は小さめで、眠る前には音を消すなど、あまり長くは聴かないようにしましょう(目安として、プレーヤーの最大音量の60%で毎日1時間であれば、おおよそ心配ないといわれています)。そして会話がしにくいくらいの騒音環境では、耳栓を使用、スピーカーから離れるなどしてご自身の耳を守ることをおすすめします。

耳の病気でない場合

耳の痛みの原因は、耳特有の病気ではないこともあります。
耳の近くにある器官の異常を耳の痛みとして捉えている可能性や、神経痛、皮膚の異常など、様々なケースが考えられ、耳鼻科以外の科目で治療することもあります。

顎関節症

顎の関節や周囲の筋肉が炎症を起こしている状態ですが、耳が痛いと感じることもあります。顎関節症では、あくびや食事など顎を動かす際に痛みを感じることが特徴です。
噛み合わせや顎の動きに異常があることが原因となるために、治療は歯科、もしくは口腔外科で行われます。

上気道炎

上気道とは、鼻や喉のことです。
ノドは耳と隣接した器官のため、炎症(咽頭炎扁桃炎)することで耳痛を感じることがあります。特に食べものや唾を飲み込む際に痛みを感じるのであれば、喉に炎症を起こしているかもしれません。

そのほか、鼻の炎症(鼻炎)によって耳のふさがった感じや、耳の圧迫感が生じ、それを耳痛ととらえることもあります。いずれも内科耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。

帯状疱疹

子供の頃、水ぼうそう(水痘)にかかった方も多いのではないでしょうか。この水ぼうそうのウイルスは治ったあともずっと体の中に潜り込んでおり、抵抗力が弱まった時に再発することがあります。これを帯状疱疹といい、皮膚が赤くなり、水疱と痛みが見られます。
帯状疱疹は耳にできることもあり、激しい痛みを伴います。こちらは皮膚科で治療していくことになります。

耳下腺および周辺のリンパ節疾患

細菌・ウイルス感染や唾石、腫瘍などで、耳たぶの下にある唾液腺(耳下腺)が腫れ、痛むことがあります。有名なおたふくかぜ(耳下腺炎)ですと、小さなお子さんなら4日程度、年齢が上がるにつれ長引き7日間程度腫れが続きます。

三叉神経痛

三叉神経とは顔面の皮膚の知覚を支配している神経です。三叉神経が神経痛を起こすと、ビリッとした瞬間的な痛みを感じます。顔のある一定の場所に触れたり、歯磨きや食事、会話など、顔の筋肉を動かしたりすることで痛みが誘発されることがあります。

三叉神経痛と診断された場合、神経内科麻酔科で治療することになります。

耳の痛みへの対処法

病院に行くまでの痛みの緩和策として、耳の周囲を冷やす方法があります。夜間などでしばらく病院にかかれない場合には、市販の解熱鎮痛剤(熱さまし、痛み止め)を飲んでも良いでしょう。

あくまで応急処置ですので、痛みがひいてもお早めに内科か耳鼻咽喉科を受診し、しっかりと診断をしてもらうことが大切です。