健康診断などで「貧血」と言われた経験はありませんか?慢性的な症状である貧血は、一朝一夕で治療を行うことはなかなかできません。
ですが、日常生活に気を配ることで予防したり、適切な治療で改善することができます。

今回は、最も多く見られる鉄欠乏性貧血の原因と治療方法を、医師・安田 洋先生による監修記事でご紹介いたします。
なお、その他の貧血の種類や症状については「なんだかフラフラする…。意外と知らない貧血の種類と様々な症状」の記事をご覧ください。

目次

鉄分の不足が原因で起こる貧血

鉄欠乏性貧血の主な原因は、鉄分の不足です。

血液の成分の一つである赤血球は、酸素を運ぶ役割を果たしています。
赤血球の中に含まれるヘモグロビンが酸素と結合し、肺から取り込まれた酸素を体中に運びます。

このヘモグロビンを作るのに必要なのが、鉄です。鉄が不足すると、ヘモグロビンが不足するため酸素の運搬がうまくいかなくなります。
少しでも酸素を体中に送ろうとして心臓や肺が激しく働くため、動悸息切れをはじめとした症状が起こるのです。

鉄分不足の原因は?

では、そもそもどうして鉄分が不足してしまうのでしょうか。原因として考えられるのは、以下の2つです。

鉄分不足

過度なダイエットや偏食によって、鉄分不足が起こる場合があります。

加えて、女性の場合は妊娠中や授乳中、胎児や母乳に鉄分をとられるため鉄分が不足し、鉄欠乏性貧血を起こす原因となります。

出血

女性は月経や分娩で体外への出血が起こるため、貧血が起こりやすくなります。また、胃潰瘍、胃腸のがん、子宮筋腫などによって体内で出血が起きている場合があります。

このように、鉄欠乏性貧血は何らかの病気のサインを示す場合もあるため、必要に応じて検査を受けることが必要です。

鉄分をしっかり摂取して貧血を予防しよう

貧血を予防するには、栄養バランスの良い食事を摂ることが第一です。

食事摂取基準によると、月経のある成人女性は1日に10.5mg、成人男性は7.5mgの鉄の摂取が推奨されています。

これは、3食を規則正しく、栄養バランスの良い食事を心掛けることで摂取できる量です。
特に、成長期は筋肉や血液を作るため、成人以上の鉄が必要となります。

無理なダイエットは行わず、しっかりとバランスのとれた食事を摂るようにしましょう。

ただし、貧血を起こしやすい女性の場合は意識して鉄を摂るよう心掛けが必要です。
鉄分を多く含む食品には、レバーカツオドライフルーツなどがあります。
鉄分にはタンパク質やビタミンCとともに摂取することで吸収率が上がるものがあるので、栄養バランスの良い食事が何よりも大切です。

鉄剤を飲んで治療を行おう

鉄剤治療

鉄欠乏性貧血の症状が出た場合、まずは原因となっている月経過多や胃腸の潰瘍がんなどを治療することが必要になります。根本的な原因を解決することが重要です。

貧血の症状自体を治すためには、1日に1~2回、鉄剤の内服を行います。
内服を開始して約3~4週間でヘモグロビンが増加しますが、体全体の鉄不足を改善するためには2~3ヶ月の服用が必要です。

しっかりと鉄剤の服用を続けることが、完治への近道です

吐き気などが起こって内服による治療がうまくいかない場合、注射や点滴で鉄の補充を行うこともあります。
これは、比較的頻繁な通院が必要です。

鉄剤を服用すると、便の色が黒くなることがあります。
これは、吸収されなかった鉄分が排泄されるためなので、心配はありません。

最後に

鉄欠乏性貧血は突然起こるものではなく、徐々に進行していく症状です。ですから、ひどくなる前に食事を見直すことで症状を改善できることがあります。

一度症状が現れてしまうと、長期間に渡る鉄剤の内服が必要ですが、鉄欠乏性貧血は根気よく治療を行えば完治する症状です
適切な治療を受けるために、心配な症状がある方はぜひ一度病院で診察を受けてみてください。