強皮症には「全身性強皮症」と「限局性強皮症」のふたつがあります。一般的に「強皮症」といわれるのは、難病にも指定されている「全身性強皮症」のことです。「限局性強皮症」は皮膚だけが硬くなる病気で、こちらは難病ではありません。この記事では、皮膚だけでなく内蔵まで硬くなってしまうこともある「全身性強皮症」について説明していきます。

目次

どんな病気なの?

皮膚が硬くなる、という症状が主な症状で、膠原病のひとつです。全身性強皮症では、5~6年で皮膚硬化の症状が進行したり、内臓の症状が出てくる「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と、皮膚硬化が比較的軽症で進行もほとんどないか、あっても非常にゆっくりな「限局皮膚硬化型全身性強皮症」の二つのタイプがあります。

急激に進行することがあり、その場合には命を脅かすことになりますが、皮膚が硬くなる程度も進行も個人差が非常に大きく、なかには自然によくなるケースもあるという病気です。

日本全国では2万人以上の患者さんがいると推測されます。なりやすいのは女性で、男女比は1:10くらいの比率です。25~50歳くらいでの発症が多くみられます(強皮症研究会議より)。

原因はわかっているの?

原因ははっきりとは分かっていません。現在明らかになっているのは、この病気に特徴的な異常が3つあるということです。

1.線維芽細胞の活性化

線維芽細胞というのは、皮膚の真皮層にあって、コラーゲンを作っている細胞です。この細胞が活性化されると、コラーゲンの生産が過剰になってしまいます。これはケロイドができるときと同じ反応で、その結果、皮膚が引きつれたりこわばったりする症状が出てきます。

2.免疫異常

膠原病の多くの患者さんと同じように、この病気でも免疫の異常が見られます。特に血液検査では抗核抗体という成分が90%の患者さんでみられます強皮症研究会議より)。

抗核抗体は、細胞の核の中にある成分に対する自己抗体の総称で、現在では20種類以上が知られています。強皮症では、抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼI(Scl70)抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体の3つの抗体が特異的に検出されます。

3.血管障害

強皮症の多くはレイノー現象という血管の症状(このあと詳しく説明します)から発症します。そのため、血管障害がこの病気の初期段階という考えも有力です。

上記の3つが起こる原因を探ることが、病気の解明に繋がりそうです。研究が進められています。

美容形成が原因になることがあるの?

強皮症は原因不明ではありますが、ごく少数ながら、これがきっかけで、というもので明らかになっているものがあります。いずれも、特殊な例ではありますが、本来体内には無い物質に触れ続けることで免疫の異常を引き起こしていることが考えられます。

1.美容形成手術

全員ではありませんが、胸や鼻の手術で、シリコンやパラフィンを注入した人に強皮症の発病がみられることがあります。手術後10~20年経ってからの発症もあるようです(強皮症研究会議より)。

2.化学物資との長期の接触

ビニルクロライド,エポキシ樹脂などを扱う化学工場で長年接触していた人の中に、強皮症を発症したという例があります。

どんな症状があるの?その1:皮膚の症状

指先-写真

レイノー現象

冷たいもの触ったり、精神的な緊張が強くなった時に、指先(末梢)の血流が発作的に悪くなり、指が青白くなったり、紫色になったりする症状です。血流が回復すると戻りますが、急に血流が良くなるので皮膚が赤くなります。ひどい症状では皮膚の潰瘍ができることもあります。

皮膚硬化

指先や手の腫れぼったい感じやこわばりのような症状からはじまります。限局皮膚硬化型の場合はあまり広がりませんが、びまん皮膚硬化型の場合は、だんだんと体の中心に向かって硬化が広がります

その他の皮膚症状

毛細血管拡張(皮膚が赤っぽくなる。顔なら赤ら顔になる)、指先の潰瘍爪の甘皮に黒い点ができる、皮膚の色が黒ずんだり(色素沈着)、逆に白っぽくなったり(色素脱失)する、などの様々な症状がみられます。

どんな症状があるの?その2:内臓の症状

肺の症状

肺線維症という、肺が硬くなってしまう状態や、肺から心臓に血液を送る血管が硬くなってしまうことで起こる、肺高血圧症という状態があります。前者は肺の機能の低下、後者は心臓への負担が大きくなるというところから、息切れや、疲れやすいという症状が出てきます。

強皮症腎(腎クリーゼ)

腎臓の血管に障害が起こり、そのために高血圧を引き起こす状態です。腎臓の機能にも影響が出て、尿が出なくなったり、腎不全を起こすこともあります。この症状に対しては、有効な薬があることが分かっていますが、症状が急激に出て悪化してしまうこともあり、強皮症の症状の中では最も重症化しやすいもので、注意が必要です。

逆流性食道炎

食道が硬くなってしまうため、食べ物がうまく通ることができず、逆流性食道炎を引き起こします。逆流性食道炎については「その胸焼け、逆流性食道炎かもしれません。逆流性食道炎とその予防、治療方法とは?」もご参照ください。

その他の症状

関節痛心臓の症状不整脈、心外膜炎)、皮膚の硬化により関節が曲がったまま固まってしまう(拘縮)、腸に障害が出た場合に吸収不良が起こる、下痢便秘になる、など、「皮膚が硬くなる」ことによっておこる症状は非常に多岐に渡ります。

まとめ

「皮膚」というと表面的なものに感じられますが、内臓を形作る組織も皮膚のひとつと考えると、この病気がとても厄介なものだということがわかります。そのため、治療方法も限られてはおらず、症状により様々です。