不況や就職難などを背景に、メンタルヘルス患者さんの存在はどんどん身近なものとなっています。組織の中で働く人が多い現代社会では、組織の中で何しかしらの「生きづらさ」を感じている人が多いようです。

統計局が2014年11月20日に公表した日本総人口は約1億2,500万人、そのうち、約320万人が精神疾患を患っているといわれています(厚生労働省より)。実に日本人の40人に1人が問題を抱えるメンタルヘルスについて、自分を見つめ直し、もう一度考えてみませんか。

目次

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メンタルヘルスの現状

厚生労働省によると、平成23年度の精神疾患患者数トップ4は以下の通りです。

近年、うつ病などの気分障害の患者数が増加傾向にあります。一方で、統合失調症などの患者数は、横ばいか、精神科を受診している患者数の中での割合は減少傾向にあるようです。

また、組織の中で働く人が多いわけですが、周りの人とのコミュニケーションがうまくいかず、浮いてしまったり、うっかりミスや不注意が続くといった大人のADHD(注意欠如・多動症)の素因がある方を目にすることがしばしばある(男性患者さんに多いようです)のも、近年の特徴といえるかもしれません。
精神疾患の患者数グラフ-図解

※上の図は、クリックまたはタップで拡大できます。

これらは、すでに医療機関で受診している患者さんの人数です。 加えて、心身の不調を感じながらも受診せずに何とか毎日をやり過ごしている状態にある「精神疾患予備群」の存在も無視できません。

「良いストレス(善玉ストレス)」と「悪いストレス(悪玉ストレス)」

万病の元といわれるストレス。外部からの刺激などよって体の内部に生じる反応と、ストレスの原因になる外的刺激(ストレッサー)とを合わせてストレスと呼んでいます。

ストレスの主な要因は以下の4つです。心理的ストレスばかりではなく、身体的なストレスもあります。動物と比べると、人間は特に心理的・社会的要因が大きいといわれています。

  • 環境的要因:天候、騒音、暑さ寒さ、有害物質など
  • 身体的要因:病気、飢え、睡眠不足など
  • 心理的要因:不安、悩み、緊張、恐怖、怒りなど
  • 社会的要因:人間関係、忙しすぎる仕事など

「職場に行けない」ことを主訴に、医療機関を受診する患者さんの原因(ストレス因)としては、辛い辛い人間関係か、にっちもさっちもいかないわけのわからない仕事が山積み状態のどちらか、あるいは両方を抱えていることも少なくないようです。

ところで、ストレスには「善玉ストレス」と「悪玉ストレス」 があることをご存知ですか?

これは、ストレッサーに対する個人の受け止め方により決まります。ストレスの感じ方は個人の性格(個性)や人生経験などにより異なるばかりでなく、同じ個人であってもその日の体調によって変わります。普通の会社勤めの人ですと、どうも月曜日が調子がのらないという患者さんが結構おられますし、週末に近づくにつれて疲労倦怠感が強まると訴える方もおられます。

ストレスを感じると、心や体はそれを解消しようと、自然と防御反応(防衛機制)がおこります。ストレスのもとであるストレッサーを、昇華するなど上手く制御できた場合(例えば、スポーツでストレス発散する場合)には、そのストレスは「善玉ストレス」になることもあります。

しかし、心の中で上手く制御できなかった場合(重荷を感じたり、憂鬱や億劫になる、頭からそのことが離れない、避けてしまうなど)では、「悪玉ストレス」となることもあるのです。たとえ、出産や引っ越し、昇進、結婚など喜ばしいことであっても、上手くストレスに適応できなければ、「悪玉ストレス」として不安や抑うつといった心理的反応や不眠、頭痛、食欲低下、倦怠感といった身体反応を引き起こすことも起こりうるわけです。

すなわち、ストレスは、個人の受け止め方によって、「善玉ストレス」にも、「悪玉ストレス」にもなりうるといっていいでしょう。

企業などの職場では、従業員の「ストレス・チェック」が義務(従業員数50名以上の企業が対象)づけられておりますので、自分のストレスの度合いについて知ることができます。

ストレスと仲良く!ストレス対処法

ストレスフリー-写真

ストレスに対処する行動を「ストレスコーピング」といいます。

copeとはうまく処理する、うまく対処するといった意味です。ストレスコーピングには、以下のような方法があります。

1.ストレスそのものをなくしてしまう

  • 深刻ないじめを受けている子供を転校させる
  • ストレス過多の職場を辞める

2.周囲の人の協力を得てストレスを解決する

  • 学校に相談して、いじめの事態改善をはかる
  • 上司・同僚、産業医や産業保健師に働きかけ、職場の環境改善の道を探る
  • 部署替えを希望する

3.ストレスによって発生した自分の感情を周囲の人に聴いてもらい発散する

  • 公的相談窓口、カウンセラー・精神科医など専門家を利用する

また、自分でできるストレス対処法として大切とされるのが、3つの「R」です。

  • レスト(Rest・休養):脳と身体の休息のために良質な夜間睡眠をとって疲労・倦怠感をなくす、入浴など
  • リラクゼーション(Relaxation・癒やし):音楽や軽い運動、ストレッチ、ヨガ、座禅(無)、自律訓練法(自己催眠)、瞑想など
  • レクリエーション(Recreation・活性化):脳の活動の歪みを取り除いてリ・クリエイト(創り直し)する(手を動かして没頭できる、塗り絵や楽器の演奏など)、旅行、趣味を思う存分楽しむ、会食、野外活動、楽しいことを考える、笑うなど

最後に

ストレス社会に生きる現代人。避けきれないストレスを敵視するのではなく、ストレスを味方につける、上手く解消するのが、21世紀を生き抜く秘訣ともいえそうです。「自分の健康は自分で守る」を基本に、ストレスと仲良く暮らす方法を考えてみませんか。そして、3つの「R」ができないほど、ストレスに押しつぶされている場合には、うつ病などであったり、何をやっても楽しめない(失快感症)や、悪く考える癖(自動思考、スキーマ)がある可能性もありますので、精神科専門医やカウンセラー(臨床心理士)を受診してみることをお勧めします。