この病気は膠原病のひとつです。膠原病と聞くだけでも「大変なのかな」と思うのに、混合性だなんて更に大変そうでイメージもしにくいと思います。病名だけでは想像もつきにくいこの病気、どういう病気なのか、みていきましょう。

目次

どんな病気なの?

混合性結合組織病は、以下の3つの病気の症状が複数見られる疾患として1972年にアメリカで提唱されました。

3つの疾患はいずれも、膠原病のなかでも比較的よく知られている疾患です。

混合性結合組織病の患者さんには、レイノー現象(後述)がほぼ全ての症例でみられることからも、かつては強皮症に分類できるものではないかという意見も多かったようです。しかし、現在では独立した病気として認識されています。日本では1993年に厚生労働省が特定疾患(難病)に指定しました。あとで詳しく説明しますが、3つの病気のすべての症状がみられるわけではなく、それ以外の症状もあります。

女性に多い病気で、男女比は1:13~15とされています。30~40歳に多く見られます(大阪大学大学院医学系研究科より)。

どうやって判断するの?

この病気の特徴として、抗核抗体(細胞内にある成分。自分自身を攻撃してしまうもの)のひとつである、抗U1-RNP抗体が検出されます。抗U1-RNP抗体が検出されない場合は、別の病気を疑います。ただし、抗U1-RNP抗体が検出されても、症状の中にほかの病気特有のものがあれば、その可能性を考える必要があります。ほかの膠原病と同じように、判断は慎重を要するということですね。

抗核抗体が検出されることから、自己免疫疾患とされてはいますが、抗U1-RNP抗体の影響がどの程度かはわかっていません。抗U1-RNP抗体が判断材料にはなるのですが、この抗体自体が身体のトラブルの原因になっているという証拠は得られてはいないのです。まだ分からないことが多く、研究が続けられています。

どんな症状があるの?命にはかかわる?

混合性結合組織病の5年生存率は95%(千葉大学大学院医学研究院)で、一般的には予後のよいものとされます。合併症として起こる肺高血圧症が生命に関わる可能性の高いもので、早期発見と早期治療が重要となります。

主な症状

レイノー現象

指先の血流が悪くなることで、指先が白くなったり、紫色になったりします。発作的なものなので、血流が回復すると症状は改善します。

手指の腫れ

普段入る指輪が入らない、ということで気づくこともあります。指先から手の甲にかけて腫れぼったくなります。

3つの膠原病様症状

それぞれの膠原病でみられる症状のなかで、以下のような症状が複数現れます。

SLE様症状

リンパ節が腫れる、顔面に紅斑が出る、心膜炎や胸膜炎を起こす、白血球が少なくなる

強皮症様症状

手指の皮膚が硬くなる、肺繊維症になる、食道の動きが悪くなる(食事が飲み込み辛くなる)

多発性筋炎様症状

筋力が低下する(疲れやすくなる)

その他の症状

無菌性髄膜炎

発熱、頭痛、嘔吐、という髄膜炎の症状が出るが、細菌感染が原因ではないもの

三叉神経障害

ほかの膠原病では珍しく、混合性結合組織病に特徴的な症状です。顔の横側や鼻から下の部分に、知覚異常、味覚異常が出ることがあります。

肺高血圧症とは

この病気の5%前後でみられる合併症です(千葉大学大学院医学研究院より)。生命に関わることもあり、混合性結合組織病の合併症の中では最も重いものです。心臓から肺に血液を送る血管が狭くなってしまい、血液を送る心臓の働きに負担がかかります。その結果、高血圧という症状が出てきます。心臓への負担も大きく、発見が遅れると、心不全にも繋がります。薬の開発が進んでおり、早期に発見することで、重症化を防ぐことができます。

治りますか?

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SLEや多発性筋炎様症状は治療で良くなりますが、レイノー現象や手指腫脹、強皮症様症状はステロイド薬が効きにくいため最後まで残ることが多いとされています。また、症状が良くなってきてステロイド薬などを減らしているときに、症状がぶり返すこともあります。

完治、とはいいにくいものですが、寛解(症状が落ち着いている)の状態で過ごしている方も沢山います。治療は主に3つの病気の治療と同様で、以下のようなものがあります。

ステロイド治療

ステロイド薬がよく効果を発揮します。強皮症様の症状に関してはステロイドが反応しにくいので、症状が残りやすいとされます。また、長期間内服が必要となる場合があるので、副作用に注意しなければなりません。

*ステロイド薬の主な副作用:胃潰瘍、免疫力が下がる、高脂血症・糖尿病になりやすくなる、骨粗しょう症になりやすくなる、など。
ステロイドは胃を悪くするため、服用の際には胃薬(できればPPI)の併用が必須となります。

免疫抑制剤

免疫抑制剤は近年、膠原病に対して積極的に使用されるようになっています。
ステロイド薬が使用できない場合や、ステロイド薬では効果が十分に得られない場合にも免疫用製剤を使います。

肺血管拡張薬

肺高血圧症に対する治療です。血流改善のため、肺の血管を広げる薬を使います。重い症状がみられる場合は、機械を使って持続点滴が行われることもあります。

日常生活に支障はない?

重い症状が出ていないときには、日常生活で制限されることはありません。症状に応じて、休息を取ることが大切です。特に注意したいのは、血流を悪くしない、ということです。体を冷やさない、禁煙、長時間の水仕事は避ける、などに気を付けて過ごしましょう。また、日々の生活の中で、体調や薬を飲んだときの変化など、体のことで気が付いたことがあれば、すぐにメモをしておいて、診察でお話ししていただきたいと思います。

まとめ

混合性結合組織病では主に3つの膠原病に対する治療で改善が見込まれます。原因は不明ながら、それぞれの症状に対しては、治療方法・治療薬がある、というのが膠原病の特徴です。長期戦になるのも膠原病の特徴ですが、その間に、研究も進んでいます。症状とお付き合いするのも大変ですが、新しい治療法や原因が見つかることを期待したいですね。