「最初のおたふく風邪のとき片側しか腫れなかったから、もう一回かかった」「おたふく風邪にかかっても免疫がつかない場合があるよ」。こんな会話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは間違いです。

流行性耳下腺炎(おたふく風邪)に2回かかることはありません。今回はおたふく風邪と勘違いしやすい反復性耳下腺炎や、他の良く似た症状を持つ病気について説明します。症状が出た場合の参考にしてください。

目次

反復性耳下腺炎の症状と原因は?

不定期に片側の耳下腺(耳の下、頬)全体が数日~数週間ほど腫れます。ほとんどの人は発熱せず、した場合でも37度台ほどです。成長するにつれて発症頻度は減りますが、30~40代の女性はかかりやすい病気です(信州医学雑誌、第51巻4号pp.215~218、2003より)。

主な原因は疲労などで体力が低下したとき、口腔内の常在菌が唾液腺に入って唾液管の末端が拡張してしまうためです。またコクサッキーウイルスA群、パラインフルエンザ ウイルス1および3 型などのウイルス感染で耳下腺が腫れる場合もあります。

おたふく風邪と違って他の人にうつらないので登園、登校などは可能です。

反復性耳下腺炎の治療と予防は?

病院から処方されるペニシリン系の抗菌剤を飲んだり、口腔内を清潔に保つなどして治療していきます。予防法は確実ではありませんが、ガムをかんだり(小児の場合は窒息や虫歯になる可能性があるため注意)耳下腺をマッサージしたりすることなどが挙げられます。疲れやストレスを溜めず、健康に過ごすことも大切です。

ほとんどの人は思春期になるにつれて繰り返さなくなる(自然治癒)ので、耳下腺を摘出する外科手術は一般的ではありません。

反復性耳下腺炎とおたふく風邪を見分けるには

見分ける少年-写真

おたふく風邪は終生免疫のため2回かかることはないので、以前一度かかったのにほほがまた腫れた場合は反復性耳下腺炎などほかの病気を疑います。またおたふく風邪を引き起こすムンプスウイルスに現在または過去感染したかどうか診断できる血液検査も有効です。

初めてほほが腫れた場合は、学校などで出席停止(おたふく風邪はほほの腫れが現れた後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで)の措置が取られるおたふく風邪と反復性耳下腺炎を鑑別します。両方とも乳幼児、学童期にかかりやすく、軽度の発熱があった場合はより区別が難しいです。

ただ反復性耳下腺炎の腫れはおたふく風邪ほど強くなく、皮膚が赤くなることもありません。また唾液腺の造影検査で点状の陰影が見られたり、エコー(超音波検査)で所見が認められると反復性耳下腺炎と診断されます。

おたふく風邪に似た他の病気は?

反復性耳下腺炎以外に鑑別の重要な病気としてシェーグレン症候群があります。唾液腺(他には涙腺など)が慢性炎症を起こすことが原因で、頬が繰り返し腫れる場合があります。女性に多く、子供から高齢者まで幅広い年齢層で発症する全身性自己免疫疾患で、日本では難病に指定されています。

シェーグレン症候群はあらゆる外分泌腺の機能低下が特徴で目の渇きによる結膜炎口の渇きによる嚥下困難発声困難肌の渇きによるかゆみを伴います。

また分泌腺以外の症状は、関節炎甲状腺機能障害神経障害腎障害など多岐にわたります。耳下腺や唾液腺の分泌測定、血液検査で確定診断となりますので、覚えがある場合はおたふく風邪や反復性耳下腺炎だと判断せず、病院を受診することが大切です。

他にもおたふく風邪に似た病気として急性化膿性耳下腺炎があり、細菌が耳下腺に入り込んで炎症を起こすことが原因です。急激に腫れて高熱が出ますが、細菌には抗生物質がよく効くので病院で診断・処方してもらいましょう。

まとめ

医師が初めてほほの腫れた患者を受診する場合、どの病気か問診だけで正確に診断するのは難しいとされています。まして患者が「おたふく風邪」や「反復性耳下腺炎」だと判断するのは困難です。おたふく風邪の場合は周囲に迷惑をかける恐れもあるため、病院を受診し、必要に応じて検査を受けましょう。