は、通常は透明や白色で量も少なく、知らない間に飲み込んでしまっています。しかし、身体の状態によって色や粘度が変化していきます。

細菌やウイルスに感染して呼吸器が炎症を起こすと、黄色や緑色で粘度の高いドロッとした痰が多くみられます。では、さび色(赤褐色)やピンク、黒色の痰が出るのはどのような場合でしょうか?痰の色が変わる要因や考えられる病気について説明していきます。

なお、ここで挙げる病名はあくまで一例です。他の病気の場合も考えられます。

目次

痰がさび色やピンク、黒色になる理由

さび色やピンク、黒色の痰がみられるのは、鼻、喉、口、気管、気管支、肺の粘膜か、肺の血管が傷ついた時に出血して痰に血液が混じるときです。

新しい出血の場合は真っ赤な色ですが、出血してから時間が経った古い血液が混じるとさび色や黒色となります。ピンク色の場合は、肺水腫を起こす心不全などでみられます。

さび色の痰がみられる疾患

肺炎球菌性肺炎

肺炎を起こす原因となる菌は肺炎球菌インフルエンザ菌マイコプラズマなどがあります。肺炎球菌による肺炎は成人の市中肺炎(医療施設または医療環境に入院または入所せずに、日常生活を送っている方に生じた肺炎)の30~40を占め、最も割合が高いといわれています(「全部見える呼吸器疾患」p.99より)。高齢者の肺炎にも多くみられます。

症状は、さび色の痰、発熱、呼吸困難などがみられます。肺炎球菌による肺炎は重症化すると菌血症(血液内に細菌が存在してしまう状態)を伴う場合や、敗血症などを起こす場合があります。

ピンク色の痰がみられる病態

ピンク色の液体-写真

心原性肺水腫

心臓の働きが悪くなって全身へ血液を送り出す力が弱くなることがきっかけ(左心不全)で起こります。肺の毛細血管の壁から血液の液体成分が漏れ出やすくなった場合などに、肺胞の中に液体成分が溜まってしまう病態です。

呼吸のためのガス交換を行っている肺胞の中に液体成分が溜まるため、肺に酸素がとりこみにくくなり呼吸困難を起こします。仰向けで寝ると息苦しくなることがあります。喘鳴(ぜんめい)やピンク色の泡状の痰がみられることもあります。

重症化すると呼吸不全となり、チアノーゼ(皮膚や唇が紫色になる)、冷や汗血圧低下意識障害などがみられます。

黒色の痰がみられる疾患病態

塵肺(じんぱい)

塵肺アスベスト(石綿)や珪酸(けいさん、土や石の成分)などの土ぼこりや鉱物性のほこり(無機粉じん)を長期間にわたって肺に吸い込み続けることが原因です。肺の中の線維組織が増殖していきます。線維組織が増えると肺胞や細気管支、血管などが破壊され、呼吸が行いにくくなります。

咳、黒っぽい痰、喘鳴、息切れがみられ、進行すると呼吸困難がみられるようになります。

肺胞出血

肺胞出血とは肺のガス交換を行っている肺胞の壁の毛細血管が傷つき、肺胞腔内に出血がみられる状態です。肺胞の中に出血した血液は咳や痰と一緒に出てくるため、喀血(かっけつ、咳とともに血液そのものを吐く状態)や血痰(出血が少量で痰に血が混じっている状態)がみられます。

肺胞出血は、血液を固まりにくくする薬や血小板の機能を抑える薬などの服用や、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、肺胞出血と糸球体炎腎炎を併発する自己免疫疾患の一種・グッドパスチャー症候群などによって起こります。

ほかに咳、息切れ、呼吸困難がみられ、肺の中に溜まった血液が数時間以上経ってから痰と一緒に出てくると黒い痰がみられます。

まとめ

さび色、ピンク、黒色の痰がみられるときは、鼻や口、喉、気管支、肺など体の内部から出血していることが考えられます。様々な疾患が原因としてあげられ、適切な治療を受けずに放っておくと重症化する場合もあります。変わった色の痰がみられた場合は呼吸器内科を受診するようにしましょう。