喀血(かっけつ)も吐血(とけつ)も、どちらも口から血を吐くこというのは知っている人も多いと思います。しかし、喀血と吐血は、何がどう違うのかはっきりとわからない人も多いのではないでしょうか。今回は、喀血と吐血について、その特徴と原因としてどんな病気が考えられるのか解説します。
喀血吐血の違い
喀血と吐血の大きな違いは、どこから出血しているかということです。
喀血
痰に血液が混じったのが血痰ですが、咳とともに血液を喀出することを喀血(かっけつ)と言います。血痰と喀血は、同様の現象を血液の多少で分けており、喀血は血痰よりも血液の割合が多いものです。喀血は鮮紅色の出血であることが多く、主に呼吸器からの出血で見られます。
血痰に関しては、「痰に血が混じってる!血痰の原因は病気?」で詳しく解説していますので、こちらの記事をご覧ください。
吐血
吐血は、食べ物が混じっている場合もあり、その色は暗赤色の出血であることが多いとされています。食道、胃、十二指腸など上部消化管から出血した場合にみられます。
吐血の色調は、胃酸の影響を受けただけ赤黒い色に近い色となりますが、胃酸の影響を受けなかった場合や胃ではなく食道等からの出血の場合では真っ赤な鮮血がみられるので、喀血との判別は色調だけでは難しいこともあります。
吐いた血液が少量であっても吐いた量が必ずしも出血した量とは限らないため、口から血液が出てきた場合は緊急性のあるケースも多いです。
喀血の原因となる病気
肺胞出血
肺は、直径 0.1~0.2 mm の肺胞と呼ばれる小さな袋がブドウの房のように集まってできている臓器です。肺胞のまわりは毛細血管がとりまいており、この毛細血管が損傷されて、肺胞腔内に血液が出ることを肺胞出血といいます。
多くの場合は、肺胞に出た血液は気管支を通って、口の中に出てきます。肺胞出血が肺全体に生じた場合、肺で空気を取り入れることが難しくなり、呼吸が苦しくなります。多量出血の場合は、体内の循環を保つことができなくなり重症となります。
肺胞出血は、抗凝固薬などの薬剤の副作用としても起きることがあります。薬剤以外では、グッドパスチャー症候群などや膠原病(全身性エリテマトーデスなど)で起こります。
血痰を呈する病気
血痰と喀血の違いは血液の量ですので、喀血の症状がある場合は血痰の原因となる病気と同様のものが考えられます。その病気については、「痰に血が混じってる!血痰の原因は病気?」の記事をご覧ください。
吐血の原因となる病気
胃潰瘍十二指腸潰瘍
胃・十二指腸は通常、胃液によって粘膜が傷つかないようにするための仕組みがあります。しかし、何らかの原因でその仕組みが破綻し、強い酸性の胃酸や消化酵素を含む胃液によって粘膜下にある組織が溶かされてしまうことがあります。それが胃・十二指腸潰瘍という病気です。
胃・十二指腸潰瘍は再発することが多いのも特徴です。潰瘍によって血管が傷つくと出血が起こり、吐血が起こることがあります。解熱鎮痛目的で使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も潰瘍の原因となります。また、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という菌の感染も原因の一つです。
胃潰瘍については「ストレスでお腹が痛い!胃潰瘍を疑ったらどうすればいい?」、ピロリ菌に関しては、「胃潰瘍の原因?ピロリ菌ってどんな菌」をご覧ください。
食道静脈瘤
食道静脈瘤は肝硬変などで肝臓から出ている門脈という血管の圧力が亢進している人にみられます。食道の静脈が拡張・怒張した状態です。食道静脈瘤自体の症状はありませんが、肝硬変の病状悪化などで食道静脈瘤が破裂し、出血することにより吐血が起こります。色は鮮紅色で、比較的多量の出血が生じます。
胃がん
胃粘膜に発生する悪性腫瘍です。危険因子としては、ピロリ菌、食塩の過剰摂取、βカロテンの摂取不足が挙げられます。早期胃がんは無症状なことが多く、進行すると、体重減少や腹部不快感、心窩部痛などが発生します。また、胃がんに潰瘍を伴うとそれにより出血し、吐血を伴うことがあります。
胃がんについては「日本人の国民病胃がん。胃がんで死なないための最も有効な方法とは」をご覧ください。
マロリーワイス症候群
激しい嘔吐や悪心をくり返すことで食道と胃のつなぎ目の粘膜に傷が出来て出血するもので、過度のアルコール摂取でしばしばみられます。鮮血の吐血がみられます。
まとめ
喀血、吐血ともに、呼吸器や消化管で重大なことが起こっているサインです。口から血液が出たということは異常なことが起きている可能性があります。場合によっては、多量出血による命の危険にもつながりかねません。速やかに原因を調べ、応急処置が必要です。自己診断せずまずは受診して出血源を見つけ、さらなる病状の悪化を防いでいくことが大切です。