高血圧によって引き起こされ、腎臓の機能低下をおこしてしまう腎硬化症。この疾患は、透析が必要な末期腎不全の状態に至る原因の第3位の疾患でもあります。場合によっては命に係わる危険性があるだけでなく、適切に対処しなければ人工透析が必要な状態となってしまいます

具体的に腎硬化症の治療では何を行うのでしょうか。基本的な治療方法と予後、生活上の注意についてみてみましょう。

目次

腎硬化症の治療

腎硬化症の治療には、まず何よりも血圧の管理が大切になります。血圧を下げても腎硬化症が劇的によくなるというわけではありませんが、病気の進行を食い止め、深刻な症状が出るのを防ぐことができます。

生活習慣の見直し、改善

血圧の管理でまず大切なのが、生活習慣の見直しと改善です。高血圧はほとんどの場合、乱れた生活習慣が原因となっており、食塩制限、野菜や果物の摂取とコレステロール制限や飽和脂肪酸の制限、適正体重の維持、運動、アルコール制限、禁煙を基本とした非薬物的な治療を第一に行います。

塩分は血圧を上げる作用があるだけでなく、心臓や血管にも影響を与えることが知られており、喫煙や、過度のアルコールも同様に血圧上昇や血管系への負荷がかかります。これらを控え、ダメージをなるべく抑えることが目標となります。

逆に野菜や果物の摂取や適正体重の維持運動は血圧を下げる効果があります。野菜や果物に含まれるミネラル類は低脂肪の乳製品などと組み合わせるとかなりの降圧効果を期待できますが、腎不全が進んでいる場合は血清カリウム値などが上昇し危険な場合もあるので、注意してください。

適度な運動

運動も、軽いウォーキングなどを一日三十分ほど行うことで降圧効果が期待できます。運動中は血圧が上がることもありますので、行うときはよく主治医の先生と相談するようにしてください。

薬による血圧コントロール

生活習慣の改善は高血圧治療で大切な要素ではありますが、やはり限界があります。そこで生活習慣の改善と並行して用いられるのが、降圧薬と呼ばれる、血圧を下げる薬です。

降圧薬には多くの種類があり、いくつかのグループに分けられます。主なものはカルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬で、ほかに中枢性交感神経抑制薬や血管拡張薬などが用いられています。

簡単に説明すると、カルシウム拮抗薬は血管を縮める作用のあるカルシウムイオンを邪魔して、血管を広げようとするはたらきがあります。ARB、ACE阻害薬は血圧を上げる作用のあるホルモンを減少させ、利尿薬は血液の中の塩分と水分を減らすことで血圧を下げています。そしてβ遮断薬、α遮断薬は血圧を調整する神経に直接作用し、血圧を下げさせているのです。

降圧剤の使用では、通常一つの薬剤を少量から開始し、血圧や副作用に注意しながら徐々に増やしていきます。しかし、悪性腎硬化症をおこすような重度の高血圧の場合は、最初から多めの量を用いたり、2種以上の降圧薬を併用したりすることもあります。

腎硬化症の予後

腎硬化症になると、比較的ゆっくりとした経過をたどることが多いのですが、一度進行した腎硬化症はもとには戻らないことがほとんどであるため、年を取ると人工透析が必要になることが少なくありません。

しかし、早期より適切な血圧のコントロールを行うことで改善する見込みが充分にあります。

 

人工透析を受けることになった場合は、一般的な血液透析と呼ばれる方法であれば1回4時間・週3回、透析を行う病院に通います。現在は、使用される機器の開発・改良も進み、透析患者さんの予後もだいぶ良くなっていますが、食事制限・水分制限などは厳密に守らなくてはならず、負担は少なからずあります。できるかぎり早めに治療を開始し、きちんと血圧のコントロールを行っていくことが重要です。

腎硬化症の生活上の注意

運動-写真

腎硬化症によって慢性腎不全をきたした場合、生活でも様々なことに気を付ける必要があります。

まず基本となるのは、過激な運動や過労を避け、毎日一定して無理のないペースで生活することです。腎硬化症は症状に乏しい病気であるため、ふとした時に無理をしがちなのですが、これは決して弱った腎臓にとって良いことではありません。もちろん仕事などを片付けなければならない、といった状況もあるかと思いますが、そういった時でも短期間に集中して無理をするのではなく、うまく分散して一定のペースで日々を過ごせるようにするのが最も大切なのです。

また、意外と盲点になりやすいのが、ストレスのかかる状況だけが無理にあたるわけではないということです。休日に一日使って趣味のスポーツに興じてしまうなど、極度に生活のリズムを変えることも、知らないうちに体にとってはストレスとなりうる場合があります。一定したリズムを作れるように、一日おきに軽く体を動かすなどして、体にも心にも負担がかからないような生活を送れるように心がけましょう。

他にも、腎不全を悪化させる原因となりうる風邪などの感染症や、嘔吐、下痢などによる脱水などを防止できるように普段から心がけることも大切です。

まとめ

腎硬化症の治療には血圧のコントロールが何よりも大切で、それには非薬物的な方法と薬物的な方法の2種類が存在します。早くに診断、治療を行えば比較的予後がよく過ごせますが、治療が遅れると腎臓の機能を取り戻すことはできず、人工透析が必要となってしまうことが多いです。できれば腎臓を専門とする内科医に早めに診断・治療をしてもらうといいでしょう。

生活上の注意点としては、まず無理をしないこと、そしてなるべく生活ペースを一定に保つことが重要です。他にも、病状を悪化させる原因となりうる、感染脱水には十分注意しなければならないでしょう。