体内のナトリウムは血液や細胞周囲の体液中に存在しており、神経や筋肉の機能に重要な影響を与え、体液のバランスを保つ働きを持っています。そうした役割を持つナトリウムが不足したり、その濃度が低くなったりした状態を低ナトリウム血症といい、様々な症状をきたして最悪、生命の危機もあり得ます。今回は低ナトリウム血症の原因や症状・治療法について解説いたします。

目次

低ナトリウム血症とは?

ナトリウムは食塩の成分の一部で、食べ物や飲み物から摂取されて主に汗や尿と一緒に体外へ排出されています。健康であれば体液中のナトリウム濃度は一定に保たれ、バランスを崩すことはありません。病気や薬の影響などから低ナトリウム血症を引き起こす場合があります。

低ナトリウム血症にはナトリウムが排出されすぎたり、しっかりと摂取していなかったりすることから起こるナトリウム不足の場合と、水分を過剰に摂取しているためにナトリウム濃度が薄くなっているものとあります。

高齢者と低ナトリウム血症

体液の水分量が少ない高齢者は、加齢による影響から低ナトリウム血症になりやすい傾向があります。一般成人は体重の60%が水分ですが、高齢者は体重に対し45~50%しか体内に水分を保有していません(日本内科学会雑誌104巻5号より)。発熱や発汗などで水分とナトリウムを少し失うだけでも、容易に低ナトリウム血症を引き起こす恐れがあります。

また加齢によって腎機能の低下し、尿を濃縮させる力が弱くなるためです。そして夜間におしっこの量が増え、より多くの水分が排出されてしまいます。喉の渇きを感じにくくなったり、「おしっこが出るから」という理由で水分を制限してしまい、1日に必要な水分量を摂取できていないケースもみられます。

認知症を発症している高齢者では、喉が渇いたことを上手く表現できなかったり、体調不良であっても訴えたりすることができないので重症化することがあります。

低ナトリウム血症の原因と症状とは?

蛇口をつかもうとする手

低ナトリウム血症の症状

低ナトリウム血症では最初は動作や反応が鈍くなり、倦怠感を訴える方もいますが、低ナトリウム血症が悪化するにつれ、錯乱や筋肉の痙攣(けいれん)などを起こします。以下のような様々な症状がみられます。

  • 倦怠感、脱力、ふらつき、痙攣
  • 喉の渇きや口の中の乾燥
  • 頭痛、嘔気や嘔吐
  • むくみ
  • 傾眠
  • 意識障害 など

これらの症状が表れているときに注意したいのは脳浮腫です。脳の神経細胞に水が入ってきてむくんでいる状態で、命を落とす危険性があります。

低ナトリウム血症を引き起こす原因

体液中のナトリウムは、体液の大量消費や腎不全や心不全などの病気、利尿剤の使用などから濃度や量が低下します。以下に原因をいくつか紹介します。

アジソン病は副腎皮質ホルモンが欠落して様々な症状が表れる難病です。塩分だけではなく水分・糖分の補給が必要となる病気です。また抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)とは、抗利尿ホルモンの分泌機能が失われ、水分が過剰なのにもかかわらず、水の再吸収をしてしまい、血液を薄めてしまう病気です。

低ナトリウム血症の治療法は?

低ナトリウム血症は血液中のナトリウム濃度を調べて診断し、さらに他の成分(タンパク質など)の量、細胞意外の体液量、尿の中に含まれるナトリウム濃度などで原因を特定していきます。原因に何らかの疾患が考えられるようであれば、その疾患の治療に取り組みます。

単純に水分摂取量を制限して改善することもあり得ますが、重度であればそれだけでは改善は見込めません。また低ナトリウム血症を避けるために塩分の強い食品や飲み物を沢山摂取しても、解決できるものでもありません。医師の指示を受けながら治療していきましょう。

まとめ

「異常な喉の渇き」「むくみが強い」「筋肉がピクピク痙攣する」などの症状が表れた場合は、低ナトリウム血症が起きている恐れがあります。低ナトリウム血症は様々な原因が考えられ、中には心不全や難病なども含まれています。気になった場合は医療機関を受診してみましょう。