鈍痛やキリキリと刺しこむような痛み…お腹の痛みの程度は様々で、またその原因も特定の疾患とは限りません。なかなか痛みが治まらず、痛みに波があったり時間とともにどんどんひどくなったりしたとき、冷や汗をかいたり顔が青白くなったりするショック症状が表れたら要注意です。今回はお腹の痛みと冷や汗などが同時に起こった時に考えられる病気について紹介していきます。

目次

腹痛とショック症状が表れたら疑う病気

腹痛と同時に冷や汗などの症状が出た場合は、体の中で何か異常が起きているかもしれません。疑われる病気・病態5つを説明します。

急性膵炎

膵臓(すいぞう)から分泌されている膵液は、十二指腸で食べ物を消化・分解する働きがあります。アルコールや胆石などが原因で十二指腸ではなく膵臓で消化酵素としての力が働いてしまい、自分の膵臓を傷つけてしまうことがあります。これを急性膵炎といいます。

腹痛でもお腹の上側が痛むのが特徴で、背中の痛みや冷や汗、嘔吐などを伴うこともあります。

腹腔内出血

横隔膜より下の臓器を収めている腹腔内で出血が起きることを腹腔内出血といいます。出血が起きる原因には腹部の外傷や大動脈瘤破裂、腫瘍の破裂に異所性妊娠破裂、動脈の疾患などが挙げられます。

腹腔内出血はお腹の痛みが主な症状です。ただし、目に見えない部分の出血なので原因がすぐ分からないケースもあり、出血量によっては一気に血圧が下がって冷や汗などのショック状態に陥る危険性もあります。

担架で患者さんを運ぶ様子

異所性妊娠

子宮内膜で受精卵が着床して妊娠となりますが、子宮内膜以外の場所で受精卵が着床してしまうことを異所性妊娠と言います。子宮外妊娠という呼び方で広く知られています。

妊娠の約1~2%で発生し、大多数は卵管で着床する卵管妊娠です(日本産科婦人科学会より)。その他には卵巣頸管、子宮間質部や腹膜でも妊娠は起こります。受精卵がそのまま発育を続けてしまうと卵管などの弱い部分が破裂し、腹腔内で大量出血を起こしてしまう危険性があります。

出血が起こると急激な腹痛や冷や汗、貧血などの症状が表れる場合があります。早急に医師の診察を受ける必要があります。

上腸間膜動脈閉塞症

小腸や大腸の一部、膵臓に血を送っている上腸間膜動脈(じょうちょうかんまくどうみゃく)が、いきなり詰まって血流が滞ってしまう病気を上腸間膜動脈閉塞症といいます。放置すると腸が壊死し、全身状態も急激に悪化してしまうため、病気にかかって悪化すると危険な病気です。

この病気は以下のような2つの原因があり、日本人では後者が多く見られます。

  • 上腸間膜動脈の慢性的な動脈硬化によって血栓ができ、閉塞してしまう
  • 心筋梗塞心房細動を起こす心臓近くにできた血栓が、上腸間膜動脈に運ばれて詰まってしまう

消化管穿孔

食べ物は口から入って肛門から排出されますが、この口から肛門までの1本の管を消化管といい、消化管で食べ物が消化・吸収されその不要物が便になって体の外へと排泄されます。

この重要な役割を果たしている食道・胃・十二指腸・小腸・大腸に何らかの原因で孔(あな)が開いてしまった状態を消化管穿孔といいます。胃・十二指腸であれば上部消化管穿孔、小腸・大腸であれば下部消化管穿孔と、場所によって呼び方が少し異なります。

孔が開いてしまう原因には、潰瘍や炎症、腸閉塞など病的なものもあれば、外傷や異物などの場合もあります。孔が開くと消化管内にある食べ物や便・腸液などの消化液が腹腔内に漏れ出してしまい、腹膜炎など重篤な状態に陥ってしまう危険性があります。

急激な腹痛や嘔吐・発熱などが主な症状で、時にはショック状態になって冷や汗や血圧低下などを引き起こすこともあります。消化管穿孔と診断された場合は早急な治療が必要です。

まとめ

腹痛と同時に冷や汗が出るなどショック症状が表れている時は、緊急度が高い状態とが多いといえます。ショックが起きている場合は、急変して状態が一気に悪くなる恐れもあります。そうならないためには早期発見・早期治療が最重要です。症状が表れたら我慢せずにすぐに病院を受診しましょう。