ヘルパンギーナという病気を知っていますか?お子さんをお持ちの方ならご存知かもしれませんが、夏に流行する急性の咽頭炎で、子供がかかりやすいといわれている病気です。

実は、このヘルパンギーナは子供限定の病気ではありません。もし大人がかかったら、どうすれば良いのでしょうか?また、お子さんがかかった場合、保育園や幼稚園・小学校はどのくらい休まなければいけないのでしょうか。

目次

ヘルパンギーナってどんな病気?原因は?

ヘルパンギーナは、夏場に乳幼児や子供に流行りやすいウイルス性の感染症です。患者が多くなるのは、6月から8月くらいの間とされています。

ヘルパンギーナを引き起こす病原体はコクサッキーウイルスというウイルスがほとんどですが、エコーウイルスなども関係している場合があります。

このコクサッキーウイルスやエコーウイルスというのは、予防接種でも知られるポリオウイルスなどと同じ、エンテロウイルスというカテゴリーに入るものです。エンテロウイルスは夏風邪の原因としてよく知られており、手足口病の原因にもなります。ときに髄膜炎などを起こしてしまうこともある、怖い病原体です。

 

アメリカの疾病・予防センターに報告されたエンテロウイルスによる患者の分布では、0歳児が44%と圧倒的に多くなっています。1歳から4歳が15%、5歳から9歳が11%、10歳から19歳も11%ですが、20歳以上の大人も17%と報告されていますので、乳幼児や子供だけが感染するとはいえないのです(横浜市衛生研究所より)。

どんな症状が出るの?

手洗い

ヘルパンギーナで特徴的な症状は、以下の3つです。

  • 突然、3840度の高熱が出る
  • 口内炎や水疱ができる
  • 喉や口蓋垂(のどちんこ)に炎症が起こる

ヘルパンギーナでは、突然の発熱とともに喉の奥の方が赤くなり、炎症を起こします。ほとんどの場合、2~3日以内には熱が下がりますが、喉の痛みがひどく、食事を飲み込めないこともあります。

このほか、倦怠感関節の痛みが出たり、発熱の刺激により6歳未満では熱性痙攣を起こしてしまったりする場合もあります。首の痛み・頭痛に加えて吐き気・嘔吐の症状がみられた場合は髄膜炎を疑ってください。

 

赤ちゃんの場合、口や喉が痛いとは訴えられないこともあります。熱が高くぐったりしていたら、口の中を確認しましょう。

また、上記の通り子供に多い病気ではありますが、大人が感染しないわけではありません。大人が感染する場合は、抵抗力が落ちている時と考えられます。子供から感染することが多く、熱が39度を超えて重症化する場合があるので注意が必要です。

 

さらに注意が必要なのは、妊娠中の感染です。出産直前の妊婦さんがヘルパンギーナに罹った場合、生まれてくる子供に感染してしまう場合があります。ほとんどが軽症ですみますが、時に重症となって死亡してしまうケースもあるため、特に夏場に出産を迎える妊婦さんは予防をしっかり行うようにしてください。

ヘルパンギーナの治療法は?保育園幼稚園や学校には行っていい?

安静にして寝ましょう

ヘルパンギーナはウイルスで発症する病気なので、残念ながらこのウイルスを殺せる薬はありません。また、ポリオのように予防できるワクチンもありません。

このため、行われる治療は対症療法が基本です。高熱に対して熱を下げる薬が出されたり、口の中の水疱や口内炎で食事ができない場合には点滴などで水分を補給したりします。家で休む際にも、できるだけ水分を摂るようにし、安静にして寝ておきましょう。辛いもの・冷たいもの・酸っぱいものは喉に刺激を与えてしまうのでできるだけ避け、人肌程度に温かくて喉ごしのよいものを中心に摂取してください。おかゆ、うどん、スポーツ飲料などがおすすめです。

基本的には、ヘルパンギーナは3~4日で治ります。ただし、重症化するとまれに髄膜炎心筋炎を起こすこともあり、重症になった場合は入院となります。

 

ヘルパンギーナにかかった場合、くしゃみなどによる飛沫感染では1週間弱、手を介した接触感染では数週間にわたって他の人に感染させてしまう可能性があります。しかし、学校保健法の規定のように、特に「何日間幼稚園・保育園・学校を休まなければいけない」という規定はありません。解熱後24時間程度で、全身の状態が安定していれば登園・登校が可能です。

エンテロウイルスは、感染してもなにも症状が出ない不顕性感染という状態の人が少なくありません。この不顕性感染者から感染するケースや、汚れた環境(蛇口、ドアノブなど)からの感染も考えられるため、登園・登校禁止期間は定められていないのです。

ヘルパンギーナを予防するために

ヘルパンギーナは飛沫感染や接触感染でうつります。そのため、基本的な予防策として手洗い・うがいが重要です。

家に帰ったら、まずは手洗い・うがいをしてください。手洗いは、できるだけこまめに行うとよいです。また、やくしゃみをする時にはティッシュで口・鼻を覆うと、飛沫感染を防ぐことができます。

赤ちゃんの場合、自分で予防することができないので、お母さんが頼りとなります。手を舐める赤ちゃんが多いので、手を綺麗にしてあげてください。

もちろん、大人の場合も注意が必要です。出産間近の妊婦さんは、子供が大勢いる場所に行く時にはマスクをつけるなど、特に感染に注意してください。

ヘルパンギーナについて

原因 エンテロウイルス
(主にコクサッキーウイルス・エコーウイルス)
潜伏期間 2~7日
症状 38度以上の高熱・口内炎・口蓋垂、喉の炎症
治療 対症療法(解熱剤・点滴など)
予防 うがい・手洗い・マスク

まとめ

ヘルパンギーナは、子供だけの病気だと思って甘く見てはいけません。大人でもかかる可能性がある病気の一つです。感染しても数日休んでいれば軽快することが大半ではありますが、楽しい夏の日を安静にして過ごすのは辛いものですよね。ご自身やお子さんの健康を守るため、手洗い・うがいをはじめ、身近な予防策をしっかりと講じていただければと思います。

また、ヘルパンギーナ以外にも夏に流行する感染症は数多くあります。夏風邪と無縁で過ごすために、「特効薬のない夏風邪を予防する、3つの方法とは?」もぜひ合わせてご覧ください。