心筋炎は、その名の通り心臓の炎症で、ウイルス感染が原因です。
誰にでも起こる可能性がありますが、一部の症例や特に子どもが罹ると重症化することも多く、重篤な合併症の出現や、命の危険もある病気といえます。心筋炎は特徴的な症状がないため、状態のさらなる悪化を防ぐために早期の介入がとても大切になってきます。今回は、心筋炎の治療法や普段の生活での注意点について解説します。

なお、心筋炎の原因や症状、検査については、「心臓に起こる炎症・心筋炎ってどんな病気?」をご参照ください。

目次

心筋炎の検査

心筋炎を疑った場合、受診するのは循環器科です。

では、心筋炎はどのようにしてわかるのでしょう。心筋炎は、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図、心臓超音波検査、血液検査などの検査を行って診断していきます。

1.血液検査

心筋炎では心筋が壊れて血液中に流れるため、心筋特異的クレアチニンキナーゼ(CK-MB)や心筋トロポニンなどが上昇します。

2.胸部レントゲン

心臓の影の拡大、肺に水が溜まってしまう肺うっ血を認めることがあります。急激な発症のために所見が出現しない場合もあります。

3.心電図

時間の経過とともに心筋の障害を疑わせる異常所見が明瞭になることも多く、心筋炎が疑われる場合は経過を追って心電図を検査することが重要となります。

心電図波形の異常や危険な不整脈が見られることもあります。

4.心臓超音波検査

心臓を包んでいる膜の中に余分な液体が溜まる心嚢液貯留に加え、心臓の血液を押し出す力の低下に加えて、炎症に伴う心筋の浮腫がみられることもあります。

心筋炎は診断をつけるのが難しい病気とされており、より詳しく精査するとなると、心臓MRI・CTや核医学検査、心臓カテーテル検査が行われることもあります。

心筋炎の治療法

雲のハート

心筋炎に対して使用可能な抗ウイルス薬はまだ開発されておらず、対症療法しかありません。心筋炎の一部では、病状の急激な悪化で生命の危険に陥ることも起こりうるため、入院したうえで、安静を保つことで心筋の回復を待ちます
心筋炎による不整脈心不全などの合併に注意しながら、循環動態をしっかりとみていきます。

心筋炎に伴って心不全や危険な不整脈が起きた場合は迅速に治療していきます。心不全に対しては、尿量を増加させる利尿薬や心臓のポンプ機能を強める強心剤を状態に応じて使います。不整脈に対しては、抗不整脈薬の使用や電気的除細動(電気ショック)を行ったり、一時的に体外式ペースメーカーを使用したりする場合があります。

状態によっては、緊急的な処置が必要な場合もあるので、選択される治療法は異なります。いずれの場合も医師からしっかりと説明を受けましょう。

退院後も、心筋炎の程度や慢性化の有無などによって経過観察の方法は異なりますので、医師の指示に従って通院しましょう。

心筋炎の予防として生活で心掛けること

心筋炎は軽症なものを含めると、発症頻度が少ない疾患ではないとされています。予後が不良とされる劇症型心筋炎の患者の約半数が入院前に肺炎喘息と診断を受けています。原因となるウイルスは鼻や喉から体内に侵入するものが多いため、日常的な手洗いやうがい手洗いやうがいによりある程度は予防できると思われます。

しかし、症状や徴候に特徴がなく早期診断が難しい病気のため、ウイルスに感染し心筋炎を発症していても適切な対応が遅れてしまうこともあるかもしれません。風邪のような症状を軽く考えずに、胸の違和感や痛み、不整脈を感じる、極度の頻脈(脈が100回/分以上)や徐脈(脈が50回/分以下)、風邪症状が長引いてなかなか治らない場合には早めに医療機関を受診することが大切です。

まとめ

心筋炎は、これまでの説明のように、ただの風邪だと思って経過し、気づくのが遅かったというパターンもあり、早期診断が難しいとされている病気です。専門は循環器科にはなります。健康な人でも起こる可能性があるため、普段から風邪症状からの移行も頭の隅に入れておきましょう。風邪症状を軽く考えず、気になる症状がある場合は早期に受診し、症状の悪化がないように観察していくことが大切です。