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症状を探り、対策を講じる

―ここから、はじめに伺った3つのケアについてお伺いします。まず「症状緩和」ですが、小児がんの場合、どのような症状がみられますか?

小児がんの場合、診断時から亡くなるまでよくみられるのは、痛みや倦怠感ですね。加えて、息苦しさや吐き気は多くの方が経験するという報告があります。不眠や不安、せん妄もいくつか報告があり、症状自体は成人と大きく変わりません。

ただ、本人が具体的に症状を言わないことが多いので、見逃されることはもしかしたら成人より多いかもしれないと思います。

 

―症状を診るにあたって、お子さんの症状はどのように捉えていくのでしょうか。

子どもの場合、症状を訴えられる年齢と訴えられない年齢とがあります。

訴えられる年齢のお子さんでは、成人と同じような尺度を使うことが可能です。例えばNRS(Numerical Rating Scale)という方法で「痛みは1日の中で0から10のうちいくつくらいですか?」と尋ねたり、VAS (Visual Analogue Scale)といって線を引っ張って「この線が一番痛いとき、ここが一番痛くないときとしたら、今はどの辺り?」と聞いたりします。

ただ、これができるのは大体8歳以降です。さらに小さいお子さんや乳幼児では、不機嫌だとか遊ばないというところから、何の症状によってそうなっているのかを探ります。

その時の病状や状態をきちんと見て、画像検査や身体条件・診察から症状をアセスメントする必要があります。特に、お母さんがその子の症状を見てくださると変化に気づきやすいことがあります。例えばお母さんが「1日の中で何回か眉をしかめる瞬間がある」と話してくれて、看護師も主治医もそうだと言ったら、「眉をしかめる」という症状を一つの指標に薬を始めてみます。その結果、眉をしかめる回数が減ってくれば「おそらくこの薬が効いたのだろう」と考えるのです。

 

―ケアとしてはやはり、薬が中心になるのでしょうか?

薬物療法非薬物療法の二つがあります。痛みや息苦しさには薬を使う一方、粘膜障害のただれなどに対しては口腔ケアを強化することがあります。また、息苦しさに対しては風を送ることで緩和する方法もあります。

お子さんの場合、発達特性が症状に大きな影響を与えていることがあります。規則正しい生活をしなければいけない入院生活の中で、マイペースなお子さんはそこにうまく乗ることができず、寝られないなどの症状が出ることがあるのです。そういったお子さんの特性に合わせて介入を工夫してもらうなど、薬と並行したケアの方法もあります。

 

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